商業区(広場) |
おやじに依頼人の風貌を聞いた一行は、そのまま真っ直ぐ商業地区に向かった。
商業地区は毎度のように活気に満ちている。行き交う通行人を掻き分けつつ、ひたすら目的地の広場に向かう。
行き先の広場はちょうど市場になっており、先ほどよりさらに密度の高い人だかりがあった。その間を縫って依頼人を捜すことしばらく………ようやく依頼人らしき人物が地面にシートを敷いて、出店をしてるのが見つかった。
■ エルステッド(独り言) |
あれ……か? |
■ギャスパー To:エルステッド |
それっぽいな…。レイラックさん、だったっけ? |
エルステッドの呟きに答えつつ、うろ覚えの名前を確認する。
■ エルステッド To:ギャスパー |
ああ。レイラックという名では男性か女性かは判らなかったのだが……どうやら男性の依頼人のようだな。 |
心なしか、ほっとした声である。
■ エルステッド To:依頼人らしき男 |
すまない。銀の網亭に依頼書を貼り出した方だろうか? |
■依頼人(レイラック) To:エルステッド |
その通りだが………。 ということは、依頼引受人かね? |
■ エルステッド To:レイラック |
名も名乗らず失礼を。私の名はエルステッド。見ての通り精霊の声を聞く者だ。 貴殿の依頼書を銀の網亭にて拝見し、詳しい話を聞かせてもらうためにここにきたのだが、依頼内容について詳しく聞かせてはいただけないだろうか?もちろん私は一人ではなく、"仲間"は彼らと彼女らだ。 |
■レイラック TO:エルステッド |
ふむ、ひぃふぅみぃ………6人パーティーか。よろしく頼むよ。 |
■アルフレッド To:レイラック |
はじめまして、アルフレッド・シュタイナーと申します。 見ての通り、賢者の学院にて魔術を学ぶ者です、このパーティのリーダーを任されております。 |
丁寧によそ行きの挨拶をする。
■レイラック To:エルステッド |
ほほぅ、それはそれは……… では、早速だが依頼の話をさせてもらおうかな。 |
レイラックは一旦言葉を切ると、背後にあった簡易テントの中から一抱えほどある大振りな壺を一つ持ってきた。
全体的に極彩色で美しい模様が描かれた派手な壺で、遠くから見てもすぐに目立つようなものである。
■レイラック To:アルフレッド |
これと同じ物があと二つあるのだ。 よろしくお願いしていいかね? |
■アルフレッド To:レイラック |
ほほ〜、見事な装飾ですね。 これを何方かの元に、”傷つけない様に”運ぶのが今回の依頼なのでしょうか? |
■レイラック To:アルフレッド |
うむ、その通りだ。 行き先は依頼書にも書いておいたとおもうが、オランを西に8日ほど行ったミドという村だ。村の入り口にドムという人がいるから、その人のところに届けてもらいたい。 この通り美術品としての価値はそれなりにあるから、傷が付くと困る。大切に運んでもらいたい。 |
■ エルステッド To:レイラック |
依頼を受ける前に2〜3確認しておきたい事があるのだがよろしいか? まず"必要経費は別途支給"とあるが、どの程度までを支給していただけるのだろうか? |
レイラックは少し考えた後に返答した。
■レイラック To:エルステッド |
当方が考えてる物としては往復分の旅費、食費、及びに運搬にかかる道具の費用だが………。 他に何か必要なものはあるかね? |
そこにアルフレッドが思いついたように質問をする。
■アルフレッド To:レイラック |
ところで、多少かさばるとは言えわざわざ冒険者に依頼されると言う事は、この壷はなにか特別な物なのでしょうか? 例えば、特別な魔法がかかっているとか? |
■レイラック To:アルフレッド |
いえ、そういう物でない。これは私が本来運ばないといけない物なのだ。 というのも、この壺を欲しがっていた人に頼まれて私が買った物なのでね。 しかし、今取引の山場を迎えていてオランでもう少し頑張れば良い取引が出来そうな状況なのだ………。 それを待ってると引き渡しの期日に間に合いそうもない。だから、君たちに頼もうと思った次第なのだ。 私の信用がかかってる依頼だ。だから、宅配に2000ガメル。必要経費別払い。 妥当な話だろう?その代わり運搬には細心の注意を払ってもらうがね。 |
■ リシィア To:レイラック |
商売をする上で、信用は最も大切なものですからね。 |
■ギャスパー To:レイラック |
期日がある仕事なのか…。いつまでに届ければいいんだい? それともう1つ。 この大きさの壷を3つ、しかも傷を付けないようにしっかりと梱包をしたらかなりかさばるぜ。背中に背負って運ぶっていうのはちょっと無理があるけど、馬車は用意してもらえるんだろうな? |
■ エルステッド To:ギャスパー&レイラック |
馬車で運んだ方が安全、かつ運搬も早いだろうし。 壺を依頼者に的確で運ぶという事となれば、馬車は必要だと思う。 |
暗に"必要経費に入ってるよな?"と確認したいらしい。
■レイラック To:諸々 |
本日を含めて10日以内に運んで欲しい。多少せっぱ詰まってはいるが、普通に行けば、間に合うはずだ。 梱包は私がやろう。 一人で全部運ぶならともかく、それほど重量がある物ではないので、馬車でなくとも何とかなるだろうが、そちらの方が確実だと思われるならそうしても構わない。 ただし、それに関してはこちらで用意は出来ないので、その分の費用は領収書を切っておいてもらってくれ。 戻ってきたときにその分を支払おう。 |
■ギャスパー To:レイラック |
どうせ経費分は前払いで貰うんだろう?そのとき一緒に清算ってことでいいんじゃねぇか? |
■レイラック To:ギャスパー |
前払いは証約手付けのつもりで払うのだが。 先に支払った分をどうするかは君たちの勝手だが。 |
豆知識:証約手付けというのは前払い金(手付け金)の解釈の一つで、ただ単に契約が成立した証拠という趣旨で支払われる物です。
■ギャスパー To:レイラック |
え、そういうことなのかい? あの依頼書からじゃあ、経費は全部そっち持ちとしか読めなかったぜ。 |
仲間の方に顔を向け、軽く肩をすくめる。
■ エルステッド To:レイラック |
?? 失礼。もう一度確認させていただこう。 依頼書には「往復分の必要経費別途支給 」とはっきりと明記されてあった。 また、先程私が必要経費としては何が対象となっているのか?と質問したところ、貴殿は「往復分の旅費、食費、及びに運搬にかかる道具の費用」とはっきりと答えてくださった。 往復分の旅費についてはまだ不確定なところがあろうが、往復の日数が明かになっているのならば食費はおおよそ概算できるであろう。 また、運搬にかかる道具もオランで調達するのならば、これも出発前に明かになるであろう。 その、あらかじめわかっている「必要経費」を、その契約手付けと共にいただけないのであろうか? |
■レイラック TO:エルステッド |
あぁ、こちらで払うよ。 しかし、小刻みに支払うというのは私のやり方ではないのでね。 最後にまとめて支払うたいだけなのだが。 どうしても分割払いを望むというなら、それでも構わないが。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
分割払いを望むというか、下手すると経費を立て替えることもままならないと思うぞ。 何せ、行き帰りの食費も危ういからな。 |
アレク的にはとても重要な事実だった(笑)
■ エルステッド To:レイラック |
"分割"……確かにそのように取られるな。 ご面倒でも、そのようにしていただくと大変にありがたい。 |
■レイラック To:エルステッド、アレクサンドロス |
………まぁ、よかろう。 では、借り終わったらこちらまで来てくれ。ただし、いくら経費こちら持ちとはいえ、あまり高い物は禁止だ。 常識の範囲内に収めてくれ。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
ああ大丈夫、贅沢はしないさ。 信じてくれて良いぞ。 |
■ エルステッド To:レイラック |
梱包をして下さるのはありがたい。 だが"信頼"を旨としていらっしゃるのならば、是非ともその梱包の時に立ち会わせていただきたい。 風の噂で、届け物の時に依頼主に違った物を預けられ、届け先とグルになり大変な迷惑を被ったという話を聞いたことがあるのでな。 お互い、"もしや?"という感情が入ってしまった場合、"仕事"がスムーズに行かない場合もあろう? その所は是非ともお願いしたいのだが、よろしいだろうか? |
■レイラック To:エルステッド |
うむ、それは構わぬよ。 万が一間違いがないようにしっかり見て置いてくれ給え。 |
■ギャスパー To:レイラック&エルステッド |
ちょっと、二人とも待った! 梱包ウンヌンは、仕事を受けると決まってからの話だろう。 まずは仕事に関してきちんと確認して、受けるかどうかを決めちまおうぜ。 エルステッド、初めての仕事で気が焦るのは分かるけど、あまり先走らねぇようにな。 |
そうギャスパーに言われ、はっとするエルステッド。
■ エルステッド To:ギャスパー |
あ……すまない。つい…… …… "運搬"の"仕事"は初めてなのでな。話の進め方を誤ったようだな。 |
少し、言葉を選んでいるようだ。
■ エルステッド To:仲間 |
依頼の取引について、話を続けてくれ。 |
と、すこし静かになる。
と、依頼人がエルステッドと話しているすきにアルフレッドは壷の鑑定とセンスマジックをしている様だ。
■アルフレッド To:独り言 |
やっぱりただの壷か。 たかだか合計600ガメルの壷に冒険者雇って2000ガメル +α・・・、大赤字じゃないのか?!(ー'`ー;) |
■ アレクサンドロス To:アルフレッド |
(小声で)・・・なあ、リーダー。やたら派手だけどあの壺って本当に良い品なのか? |
壺を眺めつつ、ぼそぼそと。
■アルフレッド To:アレクサンドロス |
(同じく小声)いや大した物じゃない、魔法も掛かってない見たいだし。 一つ 200ガメルくらいだな。 |
■ アレクサンドロス To:アルフレッド |
ああ、やっぱりそうなのか。だとすると妙な話だよな・・・。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
あぁ〜、こんな事聞いたら失礼かもしれないが、ドムって男はこの壺を幾らで買うんだ? |
直球勝負の質問だった。
■レイラック To:アレクサンドロス |
それは商人の鉄則として教えかねる。 聞かれる度に教えていてはどんな商売も成り立たぬよ。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
ふぅん、そーゆーもんなのか? |
大きくうなずくレイラック。
それを聞いてうんうんと頷くエルシア。
■ギャスパー To:(心の声) |
(全くだ…けど、失敗したらいくら借金が増えるんだ?) |
■アルフレッド To:レイラック |
一つ気になる事があるのですが、もし運搬中にこの壷が割れてしまった場合はどうなるのでしょか? 例えば、壷の代金を弁償しないといけないとか・・。 |
■レイラック To:アルフレッド |
その場合は、本来わたしが得るはずだった利益を賠償してもらう。 具体的な額は言えないので、配達が終わったときにドムに聞いて欲しい。 |
■アルフレッド To:レイラック |
すると、配達が済んだ際に壷の代金を我々が受けとって来れば良いのですか? |
■アルフレッド To:レイラック |
あと、馬車や大八車を安く貸してくれる所など御存知有りませんか? |
■レイラック TO:アルフレッド |
まぁ、そういうことだ。 その手の場所は広場のその道をちょっと言ったところにあるから、後で言ってみたまえ。 |
広場 |
■ギャスパー To:レイラック |
んで、荷物を運ぶ先はミドって言ったっけ? 自由人の街道沿いにある村なのかな? それとも途中から脇道に入るのか? |
■レイラック To:ギャスパー |
街道沿いだ。故に人通りも多いから村とはいえ、それなりに規模は大きい。すぐに分かるだろう。 質問は一旦終わったかな? それではとりあえず梱包を始めるかな。 |
というわけで、梱包に立ち会うエルステッドだが、特に怪しい素振りは見受けられなかった。
エルシアもそれに同行する。
■ エルステッド(内心) |
特に怪しい素振りなども無し……。この荷物さえ見張っていれば大丈夫か…? |
皆の所に戻ってきたエルステッドは、梱包自体にはなんら問題がなかった事を皆に告げた。それをエルシアが保証する。
アレクはオラン商業区の賑わいに圧倒されていたりしつつ質問してみる。
■ アレクサンドロス To:レイラック |
ところであんたの代わりに運ぶのは良いとして、受け取る方はオレ達があんたに頼まれたって事はすぐに分かるものなのか? あと聞いておきたいんだが、受取人のドムってのはどんなヤツなんだ?若いのか? |
問われたレイラックは懐から一通の封書を取り出した。
■レイラック To:アレクサンドロス |
うむ、ここにその旨を記した封書がある。それを渡してくれれば、すぐに分かるだろう。 外見だが、けっして若くはない。30代前半くらいだ。先代からミドに住んでるもので今はその遺産でのんびりくらしてるとのことだ。 親交があるわけではないから詳しいことまでは知らない。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
封書?ふぅん、遺産でのんびり・・・か、苦労しなくても食っていけるなんて羨ましい話だよな。 |
■レイラック To:アレクサンドロス |
まぁ、それは運というものだろう。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
運って言われても、オレの村にはそんな運のいいヤツは一人もいなかったぞ(笑) |
そんな会話を聞きながら、
■ エルステッド(内心) |
(30半ばにもいっていないとは。人間とはかくも若いものだな) |
更にどーでも良いことを考えていたりする。
■レイラック TO:アレクサンドロス |
まぁ、私もそのような恵まれた者は彼以外にほとんど知らぬよ。 さて、質問はもう終わりかな? もうしばらくしたら次の取引先に行く必要があるので、荷車を買うなり借りるなりするなら早めに終わらせて欲しいのだが………。 |
■アルフレッド To:レイラック |
わかりました、そんなに時間は掛からないと思いますので少々お待ち下さい。 |
言うが早いか、アルフレッドとギャスパー(以下数名?)はその場を離れた。
■ギャスパー To:アルフレッド |
荷車を引くんなら人足も必要だろう。オレも一緒にいくぜ。 |
■アルフレッド To:ギャスパー |
ありがとう、助かるよ。 |
■ アレクサンドロス To:アルフレッド&ギャスパー |
おう、頼んだぞ〜。 |
■ エルシア To:アルフレッド |
行ってらっしゃい |
走っていくアルフレッドを見送るエルシア。
運に恵まれたのか、アルフレッドたちはすぐに荷車を引いて戻ってくる。
■ エルステッド To:アルフレッド&ギャスパー |
アルフレッド殿、ギャスパー殿、ご苦労。 (独り言)あとは食料の調達ぐらいか? |
■レイラック To:アルフレッド、ギャスパー |
ふむ………随分早かったな。 では、荷車の借り賃を払っておこう。延滞料が付いた場合は、そのときにまた請求してくれ。 あと前金を払っておこう。2割の400ガメルで良いかな? |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
あ、あと行き帰りの食費分も貰えると助かるんだが。 歩きだと、最短でも結構かかるんだろ? |
■ エルステッド To:レイラック |
オランからでは片道8日の所にあるとおっしゃっていたが、万が一の事もあろうだろうから、往復18日分頂けるとありがたいのだが……よろしいだろうか? それと"旅費"についてはいかがいたそう? こちらについては、現時点でいくらかかるか不明故、後での精算とした方がよろしいか? |
■レイラック To:エルステッド |
ミドまでは街道沿いに行けば村があるので、野宿をする必要もないはずだ。 故にわざわざ保存食を買う必要もなかろう。往復分の宿代食費で問題なくはないかな? 足が出た分をあとで払えば問題なかろう? |
■ エルステッド To:レイラック |
それもそうだな。では、そのようにお願いする。 |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
前もって宿代だの食事代だのを貰えるんなら、オレもそれで問題ない。 野宿しないで済むなら、それに越したことはないしな。 |
■ リシィア To:エルステッド&アレクサンドロス |
街道沿いとのことですし、往復の日数分で足りるかと思います。 もし足りなくても、いただいた前金でなんとかなるでしょうし。 |
■ エルステッド To:リシィア |
そうだな。なんら問題はなかろう。 |
と。相変わらず女性に対しては顔を見ずに話すらしい。
■ リシィア To:心の声 |
うう……ひょっとしたら、嫌われてるのでしょうか……? |
こっちを見てくれないので、そんなことを思いはじめたらしい。
当のエルステッドといえば、そのように思われているなどとは露とも思っていないようだ。
■ エルステッド To:アルフレッド&ALL |
前金も戴いたし、運搬についても問題は解消した……と。 そういえばリーダー殿。"契約書"とやらは制作しなくて良いのか? 依頼の内容について、何かしら明記する必要はないのか? |
■ リシィア To:ALL |
契約書は、作成した方がいいですよね? 今回の場合、もし失敗して破損等が起こった場合には、賠償の問題もありますし……。 |
■アルフレッド To:ALL |
そうだね、お金の事はちゃんとやっておかないと後で揉めるとややこしいからね。 |
■ アレクサンドロス To:ALL |
ふぅん、色々面倒なんだな? なんか仕事するのに仲間が必要だってのが分かった気がする。 |
■レイラック TO:リシィア、エルステッド |
それはこちらで用意してあるが、確認してくれ給え。このような条件でいいかね? |
と、言いつつレイラックは以下のような事柄が書かれている紙切れを懐から取り出した。
依頼人レイラックは引受人____と以下のような条件で下請け契約を結ぶ。 1.○の月、×の日までに、依頼人に代わって壺三つをミドのドムの元まで運ぶ。 2.報酬を2000ガメルとする。 3.往復の際にかかる食費、宿代等の諸経費は依頼人が受け持つ。 4.期限切れ、壺の破損、その他の事情による失敗に寄る損害賠償は、本来依頼人が受くるべき利益分を引受人が填補する。ム 5.最初に支払った金額より経費が多くかかった場合は、依頼終了時に依頼人が要請に応じて、逐一判断し、妥当な額を支払う。
■アルフレッド To:レイラック |
申し訳ありませんが、壷を破損した際に幾等保証する事になるのか明記して頂けませんか? 勿論、我々以外の他人にその金額が漏れる事は有りませんので。 なにぶん、貧乏人が多いので保証額がわかっていないと気になって仕事に集中できませんので・・・。 |
■レイラック To:アルフレッド |
ふむ、言いたいこともよく分かる。 しかし、先ほども言ったが、仕入れ値を君たちがほぼ把握してる以上、売値を言うわけにはいかんのだ。 どうしてもというなら、填補する上限を決めるというのはどうかな? |
■ エルステッド To:レイラック |
仕入れ値……?聞いたか………?? まぁいい。 補填する上限を予め決めていただけるとありがたい。 "不明"な今よりも、だいぶ楽になる。 |
レイラックはしばらく考えてから返答した。
■レイラック To:エルステッド |
壺の大体の額は見当がついているのだろう? 上限は………そうだな……… 完全に失敗した場合において、5000ガメルあたりでどうかな。 |
■ エルステッド To:レイラック |
"完全に失敗"とは、壺が3つども駄目になってしまった場合でよろしいか? 見たところ、3つの壺はセットものではないようだが…… 細かいようですまないが、1つないし2つが壊れた時の金額も提示していただけるとありがたい。 |
■レイラック To:エルステッド |
もしくは、期限内に運べなかったときだ。 一個壊れたときは約1/3の1700ガメルだ。二個で2/3の3400ガメル。どうかな? |
■アルフレッド To:心の声 |
うわっ、たかだか1個200ガメルの壷になんつう額を・・・。 この依頼結構ヤバイのかも・・・。(´▽`;) |
■ エルステッド To:レイラック |
ふむ……。 |
■ エルステッド To:仲間 |
"上限"も判ったし。これで大丈夫か? |
一人、壷の価値なぞわからぬエルフ。ぼったくり(?)な話であることに気がついてないようだ。
そんなエルステッドをよそに、壷のだいたいの価値を教えてもらっているアレクサンドロスは、
■ アレクサンドロス To:レイラック |
もうちょい安くはならないもんなのか? 見たところ、そんなに高い品物でもないようだし。 そもそも5000なんて大金、オレ達に払えるかどうか分からないぞ? |
■レイラック To:アレクサンドロス |
なに、ちゃんと運んでくれさえすれば問題ないのだ。 高い額を設定したのも注意を促すためとも言えよう。壺くらい、割らずに運べる自信が無いわけでもあるまい? |
■ アレクサンドロス To:レイラック |
まあ、それもそーか。 分かった、冒険者としては今回が初めての仕事なんだが、壺を運ぶだけなら自信はあるさ。 |
素直に丸め込まれるアレクだった(笑)
■ギャスパー To:仲間 & アルフレッド |
うーん、なんて言うか、冒険者への依頼って言うより、商人同士の契約って感じの条件だな‥。なんか堅っ苦しいし、いざってときの責任額が大きすぎる気がするけど、最後の判断は大将に任せるぞ。 |
■アルフレッド To:ギャスパー |
俺達冒険者も依頼を受ける時は商人と同じプロとして受けるんだから、堅苦しくてもおかしくは無いよ。 |
■アルフレッド To:ギャスパー&レイラック |
保証額の大きさが気になるけど用は成功させればいいんだし、ここまで来といて受けないって訳にも行かないからね。 この壷は、我々が責任を持って届けさせて頂きます。 |
■レイラック To:アルフレッド |
よし、決まりだな。 それでは前払い金の400ガメル。さらに行き帰り分の宿代と食費の一日40ガメルを16日6人分で3840ガメルだ。さらに借り賃160ガメルで計4400ガメルだ。 すぐに用意しよう。 |
言うと、レイラックは後にあったテントに入っていった。
しばらくして、大きめの金貨袋を手に提げて出てきた。
■レイラック To:アルフレッド |
さぁ、確認してくれ給え。間違いはないな? さて、わたしはこれから取引があるので、失礼させてもらう。また二週間後にここで会おうか。 |
■ エルシア To:アルフレッド |
あ、じゃあ私が確認しようか |
というと、エルシアはアルフレッドに渡された金貨袋を横から取り、一つ一つガメルの数を確認し始めた。間違いなく4400ガメルあるようである。その後、レイラックは傍らにあったシートを丸めててきぱきと荷物を全部詰め込み、テントを畳むとつないであった馬に乗せ、レイラックは港の方に去っていった。
一行も一旦銀の網亭で準備をすることにした。