SW-PBM #070
人形屋敷の奥方

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■カテリーナの寝室 
シーアン達が貯蔵庫へ調べに行く為に部屋を出ていき、寝室にはポムとフェイが残った。
もちろんフェイは妙な事ができないように縛られ、全く身動きが取れない状態である。
さらに猿轡をされているので喋る事もできない。
ただただ見張りの為に、部屋に残ったポムを睨み付けているだけである。
ポムは辺りを警戒しつつ
■ポム To:フェイ
そんなコワイ顔してると、コワイ顔のままになっちゃうぜ
……。フェイは悪い事していたって解ってたんだよな
人を何人も監禁したり殺したんだ
その人達には、家族や友人、恋人、仲間がいる
何時かこうなる事だって解ってたんじゃないか?

喋る事ができないフェイはポムのその言葉に対し、顔を背ける事で自分の意志を主張する。
■ポム To:フェイ
あたしは確かにフェイの事は何も知らない
どんなふうに生きて生きたのか解らない
だから言えるのかも知れないけど
今のフェイは、あたし達に捕まったのを除いても、きっと幸せじゃないと思うよ

返事はなくとも(当然)ポムは続けて喋る(笑。
■ポム To:フェイ
きっと幸せじゃない
これからずっと、周りに取り残されて行くのは寂しいだろうし
受け入てもらえないのは辛って思う

かつて出会ったシェリーやグランディ(シナリオ#02)、アガサ(シナリオ#09)を思い出しつつ言葉を続ける。
■ポム To:フェイ
冒険しているといろんなヤツに出会うんだ
死体は物だって言いきった、アンデットを研究する医者がいたっけ
姿は誰か確認するだけのもんだって言ってた
あたしには理解できなかったなぁ
なんか……ちょっと似てる?かな(^^;
フェイは理解できる?

床に転がされたまま、顔を背けているフェイの肩が震えている。
泣いているのか?
いや、全然違うようだ。何がおかしいのか、どうやら笑っているようだ。
猿轡をされているので声はもれないが、彼女は笑っていた。
■ポム To:フェイ
なんだ、なんだ
なんか面白い事が解るのか?

やはり気になるのか、どうしたのか聞きたそうだ。
そしてフェイの猿轡を外すかちょっと迷っている様子。
一方、フェイはただ笑うだけだ。
手足を縛られている上に、猿轡をされているので他に何かできる訳でもないが・・・。
■ポム To:フェイ
うにに〜。

暫く考えていたが、フェイの猿轡を解いた。
■フェイ To:ポム
ふぅ・・・・・、これで少しは楽になったわ。
でも礼は言わないわよ。

こんな状況であっても、フェイは強気のようだ。
■ポム To:フェイ
フェイは何処から来たんだ?
オランにずっと住んでたのか?

■フェイ To:ポム
いいえ、違うわ。西方から移ってきたのよ。
確かに昔はオランに住んではいたけどね。

■ポム To:フェイ
ええっと……オランで産まれて、西に行って、オランに帰ってきたって事?あたしは西から来たんだ

■フェイ To:ポム
ふぅ〜ん。西の何処だい?
タラント?ベルダイン?それとも他の所?

■ポム To:フェイ
物心ついた時から旅をしてたんだ
だから何処って言う故郷がない
別れる時、産まれた場所を聞いておけばよかったかなぁ。フェイ?
でも、町より森にいたよ

■フェイ To:ポム
どうだろうね・・・。
思い出のある場所なら、地名を憶えてなくても、その場所を忘れないものと思うけどね。
時が経てば、ふと帰りたくなるんものじゃないの?

■ポム To:フェイ
そうかな?……そうだよな(^^)
帰りたい場所が故郷なんだ♪
ありがとうフェイ♪

フェイの言葉にすっきりしたようだ。
■フェイ To:ポム
な、何を言ってるのよ・・・。
さっきまで貴方達は私に狙われていた事を忘れたの?

ありがとう」という言葉に免疫が無かったのか、顔を少し赤らめている。
■ポム To:フェイ
懐かしい人とかにもう会った?

■フェイ To:ポム
そうね。そういう人はもういなかったわ。

■ポム To:フェイ
いなかったんだ。
何処へいっちゃったんだろ?
なんか寂しいね。

■フェイ To:ポム
人は年をとれば、いずれは死ぬものでしょ?
もし仮に生きていても、記憶に残っているとも限らないしね。
それは仕方のない事よ。

■ポム To:フェイ
うに。
(死んじゃったんだ)
仕方ないけど、やっぱり寂しいや
あたしはあたしを知ってる友達に会いたいもん
ひょっとして……忘れられていた人がいたの?

■フェイ To:ポム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

フェイは応えてくれない。
ひょっとしたら会いたい誰かがいたのだろうか?
■ポム To:フェイ
フェイ、ペンダントは何処から持って来たんだ?

■フェイ To:ポム
貰ったのよ。
百年以上前の事だわ・・・。

まるで遥か昔の事を思い出すかのように呟く。
■ポム To:フェイ
(百年!)
それって、友達から貰ったのか?
プレゼント?
うにに〜
その時から……使ってたりしたのか?

■フェイ To:ポム
違うわ。見知らぬ老婆から買ったのよ。
永遠に生きられる』って言われてね・・。

■ポム To:フェイ
何でお婆さんは売ったんだろう?
永遠に生きられるんだろ?素敵な事なら売ったりしないと思うけど
お婆さんは永遠に生きたくなくなったのかなぁ

いきなり「にゃ〜〜〜」とポムの後の方から鳴き声がした。
後を振り返ると、壊れた扉の付近に黒い猫がいた。
そしてまた「にゃ〜」とレオンが鳴く。
お腹が空いたと甘えるような感じの鳴き声である。
■フェイ To:ポム
あらあら、お腹を空かしているようね。
ところで貴方、サーラは知らないかしら?

■ポム To:フェイ
ちょっと意見が違って喧嘩しちゃったんだ
先に屋敷に戻ったって思うけど
見てないのか?

と言いつつ、警戒してレオンを見る
そのレオンは扉の所でちょこんと座って、ゴロゴロゴロと咽を慣らしているだけだった。
■フェイ To:ポム
いいえ、見てないわ。

・・・・・・・・・・そう、そう言う事ね。
私を助けなかった理由がよく分かったわ・・。


何やらフェイは一人だけ理解し、納得している様子だ。
サーラの事だろうか?
■ポム To:フェイ
助けなかった理由?
それって、何の事だ?
フェイ?

何やらポムはちょっと悲しそうな顔になっている。
■フェイ To:ポム
そうね。
サーラが勝手に私から離れたりしなければ、今頃こうして転がっているのは貴方だったはずよ。
全く・・・・、拾って育ててやった恩を忘れ、私に従わないとんでもない使い魔だわ。

■ポム To:フェイ
サーラ……。
友達だって思ってたのがフェイだったら、きっと転がってたのはあたしだったんだ。
屋敷に戻るのを止めたのだってきっと……
また会えるかな、会って謝らなくちゃ

■フェイ To:ポム
・・・・・・・・・こうして生きていれば、会えると思うわ・・。

じーっとフェイを見る。
そして嬉しそうににっこり笑って。
■ポム To:フェイ
うん(^^)
上手く言えないけど、フェイと話せてよかった♪

■フェイ To:ポム
・・・・・・・・・・わ、私はただ貴方がとても暇そうだから、相手してやっただけなのよ。

照れ隠しにそう言葉を返すフェイ。
だが彼女の百年以上の人生を想像すると、それは孤独なものであった可能性もある。
とすればこの様なちょっとした会話でも、彼女にとっては嬉しい事なのかもしれない。
しばらくするとシーアン達が下から戻ってきた。
その姿を見て、レオンはさっとベッドの下に隠れる。
■フェイ To:ALL
どう?
探し物は見つかったかしら?

■シーアン To:フェイ
ああ。傷1つなかった事に感謝かな(笑)
―――って、なんでしゃべれんだよっ?!

■ルタード To:ポム
! ポムどの、猿轡を外したのか!?
まさか、魔法で操られて……?

■ポム To:ルタード&みんな
ちがう!あたしは自分で外したんだ
フェイと話したかったから
勝手にごめん

■シーアン
(コマンドワードを聞くために説得してたのか?)

■ルタード To:ポム
そうか、そういうことならば、まあよいのじゃが。
ところで、カテリーナどのたちの身体は無事見つかったぞ。

■ポム To:みんな
そいつはよかった(^^)
あとは身体を戻さなきゃ♪
…………
(みんな戻して行けばフェイはどうなるんだろう)

そう考え、困った顔になる。
■アイシャ To:ポム
うん。

■ポム To:フェイ
フェイ、お願いがあるんだけど……

■フェイ To:ALL
お願い?
人にものを頼む時に、これはないわよね?

フェイの手足を縛っている縄を解けと言う事らしい。
ハッとしてシーアンはルタードと顔を見合わせる。
ルタードは「お任せします」というふうに、黙ってうなずく。
■シーアン To:フェイ
縄を解こう。
・・・対等に話すためにな。
あんたはプライドの高い女だ。こんな事で騙したりはしないと信じてる。

■フェイ To:ALL
・・・・・・・・・・・・・・・。

フェイは押し黙って、シーアン達の様子を見ている。
そしてシーアンは無言で、縄を外してやる。

縄を外されたフェイは立ち上がると。

■フェイ To:ALL
・・・・貴方達、とんでもないお人好しね。相手が何か企んでいたらどうする気?
もし私なら絶対に戒めを解かないわよ。

■シーアン To:フェイ
お人好し・・・かもな。いいぜ、それでも。
(覚悟は出来てるさ)

と肩をすくめてこたえる。
■ポム To:フェイ
信じる事が出来るのは悪い事だって思わないぜ
あたし達はフェイを信じた。
次は…フェイに答えて欲しい

真っ直ぐフェイを見て
■ポム To:フェイ
カテリーナ達を元に戻すのにフェイに協力して欲しい。
コマンドワードを教えて欲しいんだ

■フェイ To:ポム、ALL
もし・・・・、もし嫌だと言ったら?ひょっとしたら嘘を言うかもしれないし、別のコマンドワードを言うかもしれないわよ。最悪、貴方達の思うような効果が得られない場合はどうするの?

■シーアン To:フェイ
信じたから外したんだ。
今更どうのこうの言わないさ。
信じるって言った以上、あんたを丸ごと信じる。

■バジル To:フェイ
ポムが貴方を信じているなら、僕も信じるよ。
僕はポムの友達だから。貴女が、もし、ポムの気持ちに応える気持ちがあるのなら、彼女を裏切らないで欲しい。

■アイシャ To:フェイ
アイシャも信じるの〜。

■フェイ To:ALL
くすっ・・・・・・・・・・いいものね。
私にも・・・・、そんな時代があったような気がする・・・。

■ポム To:バジル&フェイ
二人ともありがとう
(本当に騙そうって人は、多分そんなふうに聞いたりしないんだ。フェイ)
フェイにどうにも出来ないなら、今のあたし達には何も出来ない
それはみんな判ってるって思うんだ。
協力して欲しい。それは変わらない

■フェイ To:ポム、ALL
分かったわ。じゃあ、ペンダントを貸しなさい。
素人の貴方達じゃ無理だわ。
あれには代償が必要なのよ。

■ポム To:フェイ
解った。頼む

代償が気になったが、フェイにペンダントを渡した。

フェイはペンダントを受け取ると、それを左手に持ち、その手を自分の胸の上に置く。
そして右手で人形のエレをそっと掴むと

■フェイ To:ポム、ALL
代償っていうのはね。生命エネルギーを失うって事よ。
だからせっかく得た肉体も、急速に老化していくの。

ヴァリル・ソニス・クィーム!!


フェイがコマンドワードを唱えた次の瞬間、一瞬だがポワッと白い光が彼女と人形のエレを包む。

そしてフェイはバタッっと床に倒れ伏し、人形は急にグッタリとした。

■アイシャ To:フェイ
!?

人形は起き上がると
■フェイ(人形) To:ALL
この通り、ちゃんと肉体は返したわよ。
あとは二人かしら?

どうやら上手く、人形のエレとフェイの精神が入れ替わったようだ。
つまりエレは元に戻ったという事か。
■ポム To:フェイ
うん。あとカテリーナさんとホークさんなんだけど……
フェイは大丈夫?

心配そうだ
■フェイ(人形) To:ALL
そうね。魔法を使い過ぎた疲れが残ってるけど、あと二人位なら大丈夫よ。

■ポム To:フェイ
ならいいんだ

そっとフェイ(人形)を抱っこする。
■シーアン
(二人・・・。カテリーナとホークを戻したら、後はどうなっちまうんだ?)

■アイシャ To:エレ
…エレ?だいじょうぶ?どこか痛い?

アイシャはエレに近寄った。
■エレ To:アイシャ
う・・・う〜ん。

意識を取り戻したのか、目をぱちくりさせている。
■エレ To:アイシャ、ALL
あの〜、私はどうしてたのでしょう?
なんだか・・、長い夢を見てたような気がします。
私が人形にされて、私自身に追いかけられる夢を。

どうやら記憶がハッキリしないらしい。
■アイシャ To:エレ
もう心配いらないから安心してね。

■シーアン To:みんな
・・・俺達はカテリーナを元に戻そう。
エレも・・・体が大丈夫なようなら一緒に来るか?
・・・当事者だからな。見届ける権利がある。
もちろん無理にとは言わない。

■エレ To:シーアン、ALL
すみません。気分が優れなくて・・、少し休ませて下さい。
あ、でも夕食の支度がまだ・・・。

エレは立ち上がろうとするが足元がふらつき、またその場に座り込んでしまう。
■アイシャ To:エレ
あ、無理しちゃダメだよぅ。
夕食の支度は良いから休んでてね。

■エレ To:アイシャ、ALL
はい、少しだけ休ませていただきます・・。

■シーアン To:エレ
ん、休んどけよ。
夕食の支度なら俺も手伝うしさ。

(シーアン)安心させるように微笑みかけようとするが、どこかぎこちない。
そして再びシーアンはカテリーナの人形を持って、貯蔵庫へと降りる。
ポムもフェイの人形を持って、シーアンの後に続く
貯蔵庫へ戻ってきたシーアン達は早速、瓶の中からカテリーナとホークの肉体を担ぎ出す。
それから人形のフェイを左手に持ち、その手をカテリーナの肉体の上に置く。
右手はもちろん人形のカテリーナに触れてある。
そして先程と同じコマンドワードを唱えると、二人は白い光に包まれる。
■カテリーナ To:ALL
ん・・・、

あ、あの・・申し訳有りませんが、何か身体を覆う物を貸していただけませんか?
このままでは見苦しいので・・。


確かに二人とも瓶の中に裸で浸されていたので、これでは人前で困るだろう。
慌ててシーアンが自分のマントをカテリーナに手渡す。
ともあれ無事成功のようだ。
続けてホークに対しても、同じ様に行う。
■ホーク To:ALL
・・・・・・どうやら元に戻ったみたいだな、まだ少し身体の具合がしっくりこないが・・・。

ホークの方も無事のようだ。
ちなみに人形のフェイはホークを元に戻した後、その場に倒れたきり起き上がる気配が無い。
■ポム To:フェイ
フェイ?

フェイ(人形)を拾い上げてゆさゆさ揺する。
■ポム To:フェイ
フェイ!フェイってば!

ポムの呼びかけに対して、何の反応も返ってこない。
どうしたのだろう?
■ポム To:みんな
どうしよう、フェイが変だ!
アイシャ、……バジル〜(;;)

センスオーラでは微かに生命と精神の精霊を感じ取れた。
だが今にも消えそうな程の弱い力だ。
冬眠に近い状態なのだろうか?多分、フェイの意識はほとんど無いだろう。
■バジル To:みんな
う、う〜ん……。微かに生命の精霊の力を感じるけど、ほとんど消えかかってる位に弱いみたい。
死んでる訳ではないけど、生きてるか怪しいね。寝ている状態をもっと希薄にした感じ。

■ポム To:みんな
ええっ!
頑張り過ぎたんだ……

両手に持っているフェイ(人形)を覗き見る。
■アイシャ To:バジル
お休みしてるの?

■ポム To:フェイ
フェイ

ポムはそっとフェイ(人形)を抱きしめた。
■アイシャ To:フェイ
フェイ?聞こえる?
みんな自分の体に戻ることができたよ。
フェイのおかげなの…ありがとう。

■フェイ(人形) To:ALL
・・・大丈夫よ。
少し、ほんの・・少しだけ眠ら・せて・もら・・・。

それっきりフェイの人形は沈黙してしまった。
■ポム To:フェイ
……おやすみフェイ

微かに精霊力を感じ取れる様子から、完全に冬眠状態に入ったのであろう。
これが魔法のペンダントの力を使いすぎた為なのかは、誰にも分からない。
いつの日かフェイが意識を取り戻す時が来るかもしれないが、その時はもう他者の肉体を奪おうとは考えたりしないだろう。
彼女の過去に何があったかは定かではない。
だが彼女は百年以上の時を経てやっと、永遠の若さよりも大切なものを見つけた。
確固たる理由は無いが、そんな気がする。

いつもその心に温もりを・・・


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シナリオ編集:倉沢真琴 kushida@terra.dti.ne.jp