銀の網亭 酒場「幸せの木」 |
吟遊詩人のサーガに己が姿を重ね合わせ、期待と不安を胸に抱きつつ扉を開けるもの。
ここらで一旗揚げようと、一振りの剣と己の力だけを頼みに旅立ってきたもの。
そして、一仕事を終えて、新たな儲け話を探しに来るもの。
ここ、オランの冒険者の店、『銀の網亭』には、冒険者と呼ばれる者達の姿が絶えることがなかった。
人が集まれば、話が弾む。
話が弾めば、飲み、食い、歌い、そして宴会になる。
とすれば、当然店には様々な食い物や飲み物が十分すぎるほど用意されている……はずであった。
■ 女将 To:おやじ |
だめね、これは。 どう考えても足りないわ。 |
■ おやじ To:女将 |
しかし、これはここの名物料理だぞ? はい、ありませんじゃ、すまんだろ。 |
どうやら、銀の網亭の名物料理、きのこのシチューの材料であるところの、きのこが足りないらしい。
■ 女将 To:おやじ |
そうよね。 代わりの物、って訳にもいかないし……。 そうだ、こうなったら、一つ客にお願いしてさ。 |
■ おやじ To:女将 |
おいおい、ここは仕事の斡旋所だぞ? かといって、金を使って頼めるほど、うちには余裕はないしな……。 駄目で元々、一つ切り出してみるか。 |
■ 女将 To:おやじ |
そうよ、誰か、きっと引き受けてくれるところがあるわよ。 |
■ おやじ To:女将 |
しかし、頼む仕事がただのきのこ取りとはな……。 |
■ 女将 To:おやじ |
「ゴブリン退治かと思ったら、オーガの巣」って言うじゃない。 ただのきのこ取りだからって、何があるか分からないわよ。 |
■ おやじ To:女将 |
お前、その喩え通りになったら、洒落じゃすまないぞ……。 |