SW-PBM Scenario #61B 目次

窪地のガス


鍾乳洞(窪地)

 地形は徐々に下りになった。ずいぶん地下深く潜ってきたようだ。周囲を警戒するそれぞれのアンテナにも今のところ異常は感じられない。ダークエルフの集団ははさらに前に進んでいるようだ。
 道は広くなったり狭くなったりしている。その先は細いトンネルになった。さらにしばらく下ると、トンネルがいきなり途切れ、大きな窪地に出た。松明の光で見ると、深さ 3 メートル、幅 20 メートル程度の細長いお椀形の地形だとわかる。天井も丸くなっているので、全体は卵を倒したような形だ。その長径の両端にトンネルがついている。このまま先に進むには、窪地を通って反対側にあるトンネルへ入らなくてはならないようだ。
■ケニ To:ALL
あっ、あれ……。何でしょう?

■アスタルテ To:ケニ
ん、なんかあったの?

 お椀型の一番底の部分に、動物が 2 頭倒れている。かすかにピクリと動いたようだが、起き上がって来る気配はない。
■アトール To:ケニ
下にいるのは狼だろ、たぶん。
ただ、この場所はあからさまに危険な感じがするな(^^;
ケニはこの鍾乳洞の通り道詳しいんだろ?
ここに何か仕掛けてあるのか?

■ケニ To:アトールさん
いいえ、わたしたちはなんにも……。ここは天然の要塞だから、人間が手を加えるまでもない、ファリス様の御心のままにしておくんだって、司祭様はそうおっしゃっていました。
ごめんなさい。実は、わたしも最短ルートを通るのは初めてなんです。何で狼があんなところに……?死んでいるんでしょうか?

■カナル To:ケニ
生きてはいるみたいだが……。
悪い空気でも溜まっていたかな?

■ケニ To:カナルさん
ふぅん、そういうこともあるんですか?わたし、ものごころついた頃から司祭様のお手伝いばっかりしてたので……
ルカスなら、きっとこういうの詳しいんだろうな……

■ヴィクトール To:ケニ
?・・・るかす?ルカスって誰?おとーさんの名前?

■ケニ To:ヴィクターさん
えっ、あっ、いえ、えっと…… 父はバルクっていいます。
ルカスは村の子で、まだちっちゃい頃から大人の男の人達について山に入っていたんで、こういうことはきっとよく知ってるんです。で、でもでもまだホント子供なんですよ……
ヴィクターさんみたいに優しくないし。

 ケニ、つぶやきをよりによってヴィクトールに聞かれてちょっとアセアセ。勢いで聞かれてもいないことまで言ってしまって赤面。暗くてよく分からないのが幸いか。
■ヴィクトール To:ケニ
へぇ〜、そうなんだ。じゃあそのルカスもこの鍾乳洞に来てるのかな?
いいなあ、オレ生まれたときからずっとオランで育ったから山のこととかあんまり知らなくてさ、そういうのってよく分からないんだ。
でもオレ別に優しくなんかないよ〜。

 思わぬ褒め言葉(?)にヴィクトールも照れてたり。
■ケニ To:ヴィクターさん
そんなことないです。ヴィクターさんはすごくて優しいです。(力説)
えっと、ルカスもきっと鍾乳洞に来てると思います。さっきのところにいなかったし……

■ヴィクトール To:ケニ
そ、そうかなぁ〜。
うん、それじゃあオレ達もなるべく速く奥に行って合流しなきゃね。
きっとみんな困ってるだろうしね。

 力説されると妙に押し切られてしまうヴィクターであった。
■ケニ To: ヴィクターさん
はいっ(にっこり)

 ケニはとてもうれしそうだ。
■アフル To:ケニ
ここを迂回して進むとしたら、結構遠回りになる?

■ケニ To:アフルさん
はい、すこし遠回りになります。えっと……、だいたい 1 時間くらいかな?

■アフル To:ALL
1 時間かぁ…
どうする?このまま行ってみる?

■アトール To:ALL
先を急ぎたいところではあるな。

■ソフィティア To:ケニ
このまま行くと後どれぐらいで目的地に着く計算になってるの?

■ケニ To:ソフィーさん
何もなければ 2 時間くらいです。

■ソフィティア To:ALL
2時間でつくところを1時間の回り道はしたくないわね。

 回り道をしている間に村人が全滅する事をおそれているようだ。
■ソフィティア To:ALL
悪い空気が原因かもしれないなら、息を止めて駆け抜けちゃわない?

■アフル To:ソフィティア&ALL
うーん…
あ、ちょっと待って。

■アフル To:シルフ(精霊語)
ごめん、ちょっと出てきてくれる?

と、アフルは弓に封じていたシルフを呼び出す。
■シルフ To:アフル(精霊語)
ふぁ〜〜あ…
ん?どうしたのよ?

■アフル To:シルフ(精霊語)
あのさ、そっちの窪みの底の空気ってどんなのか見てきてくれないかな?

■シルフ To:アフル(精霊語)
窪み…?
こんな仲間がいない所、居るだけだって嫌なのに、その上あんな気分の悪くなりそうな所に行け、ですって?
……いやよ、って言いたいとこだけど、まあいいわ。
アフルの頼みだし、行って来てあげるわよ。

 シルフは不承不承という素振りで窪みの底の方に向かうが、すぐに戻ってくる。
■アフル To:シルフ(精霊語)
どうだった?

■シルフ To:アフル(精霊語)
重いわね。

■アフル To:シルフ(精霊語)
重い?

■シルフ To:アフル(精霊語)
ええ、重いし、動いてないわ。
自然に流れてない風はよくないわよ。
アフル達は絶対吸わない方が良いわね。
で、こんなもので良い?あたし、早く戻りたいんだけど。

■アフル To:シルフ(精霊語)
え、あ、うん、それだけわかれば十分だよ、ありがと。

■シルフ To:アフル(精霊語)
えへへ…、じゃあね、また何かあったら手伝ってあげても良いわよ。

 シルフはアフルの弓に戻った。
■アフル To:ALL
うん、シルフに見てきてもらったんだけど、やっぱり底に悪い空気がたまってるみたい。
絶対吸わない方がいいって。
どうする?息を止めたまま走り抜けられない事はないと思うけど…?

■カナル To:おおる
(一時間は惜しいな……)
その前に、少し離れてそこの窪地に松明を投げ込んでみてくれ。
何かやばいものでもあるなら、何か分かるかも知れないからな。

■ケニ To:カナルさん
あ、はい。じゃあわたしが……

■カナル To:ケニ
! ちょっと待て!

 ケニは、いきなり手に持った松明を窪地に投げ込んだ。
 松明は、転がりながら狼の鼻先まで落ちていった。ぐったりしていた狼が、炎に驚いて唸りながら後退する。しかしその動きは非常に緩慢なものだった。
 松明で窪地の底が明るくなった。狼たちには、とくに外傷はないようだ。しかし、やはり様子が少し変である。
■カナル To:おおる
……どうやら、松明をつけたまま突っ切って行っても大丈夫そうだな。

 急に怒鳴られたのでびっくりのケニ。オロオロしている。
■ケニ To:カナルさん
ごっ、ごめんなさい。わたし何か悪いことを……

■アスタルテ To:ケニ&ALL
だめだよ、カナルは少し離れてからって言ったじゃない。
まあ、何もなかったから結果オーライだけど、今度は気をつけようね。

とりあえず、窪地の悪い空気は引火性のガスってわけじゃないようだけど・・・


■カナル To:ケニ
アスタの言うとおりだ。
まぁ、何もなかったからいいがね。

 アスタルテは、背負い袋からもう1本のたいまつを取り出し、火をつけてケニに渡した。
■アスタルテ To:ケニ
はい、新しい灯り持っといてね。

■ケニ To:アスタさん、カナルさん、ALL
はい。すみませんでした……。ホントにごめんなさい。以後気をつけます。

 ケニは心から反省しているようだ。アスタルテから松明を受け取って、しゅんとしている。
 しゃがみ込んでぐったり狼や床をじっと見ていたヴィクター、不意に立ち上がって。
■ヴィクトール To:ALL
ん?ここを走って通り抜けるの?

 こいつ大丈夫かなぁ〜と言う目で傍らのリッキーを見つめるヴィクター。
人間は意志で呼吸を止められるが、動物にそれをさせるのは大変だ。
■カナル To:ヴィクター
ミネルヴァは、上を飛ばそうかと思うが。
……リッキーは、対岸まで投げ飛ばすか?

■アフル To:カナル、ヴィクター
そんな事しなくても、鼻を口を手でふさいで、そのまま走り抜けたらいいんじゃない?

■ケニ To:ヴィクターさん、リッキー
わたしがだっこして行きましょうか?

■ソフィティア To:リッキー
ロープで引きずっていくって手もあるんだけどリッキーはどうしたい?

 腰をかがめてリッキーの目を見て話す。表情はにっこりで。
 言葉が理解できているのか、はたまたにっこり笑顔に妙な恐怖を感じたのか、ふるふるふるっと首を横に振りつつケニに飛びつくリッキーだった。
■ソフィティア To:リッキー
よ〜し、良い子だからしっかりケニちゃんに掴まってるのよ。

■ヴィクトール To:ケニ
・・・あはは、投げられたり引きずられたりするよりはそっちが良いみたい。
それじゃあ、ここを抜けるまでリッキーのことお願いしても良いかな?

■ケニ To: ヴィクターさん、リッキー
はいっ、喜んで!
リッキー、わたしと一緒に行こうね。こうしてれば、ヘンな空気すわなくて済むんだから、じっとしててね?

 ケニは、リッキーの顔を自分の胸にぎゅっと押し当てて、子供に諭すように言い聞かせた。
 一同はそれぞれ息を止めて窪地を反対側のトンネルへ走り抜けた。
 さすがに経験豊かな冒険者達は慌てず騒がず余裕で通過できた。ミネルヴァも天井すれすれを飛び、無事にカナルの肩に戻った。天井近くの空気には異常はないようだ。窪地の底の狼も、恨めしそうにこちらを眺めるだけで襲っては来なかった。
 しかし、未熟なケニは慌ててしまったか狼におびえたか、息を止めていることができず、途中で吸いこんでしまった!
■ケニ
げほっ、げほっ!

■アトール To:ケニ
大丈夫か?

 少しむせたが、運良く影響はなかったようだ。気を取りなおすと、こちら側にやってきた。リッキーは無事のようだ。
■ケニ To: アトールさん、ALL
はっ、はい。平気です。リッキーも大丈夫みたい。何だか、ちょっとジーンと痺れるような感じがありました。でも、もう大丈夫です。
みなさんも…… 大丈夫みたいですね。ファリス様、ありがとうございます。

 ケニはすかさずファリス神に感謝の祈りを捧げている。
■カナル To:おおる、ケニ
多少無理したが、これで少しは時間が稼げたな。

申し訳ないが、奧はどうなってるのか、案内してくれないかな。


■ケニ To:カナルさん、ALL
はい。このトンネルを先に進んで岩の陰を右に折れます。そこがちょっと分かりにくいんです。地下水とかもあります。あと、最後に崖を渡ることになります。

■ソフィティア To:ALL
それじゃぁ、先をいそぎましょう。

■アフル To:ソフィティア
うん、これでダークエルフ達を追い抜けてられてると良いんだけど。

■ケニ To:ALL
そうですね。

 一行は先を急いだ。



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