SW-PBM Scenario #61B 目次

少女


神殿外

 少し時間を戻って、ヴィクトール、ソフィティアは神殿の外で見つかった少女を介抱している。
 少女はまだ気が付かないが、繰り返しうわごとを言っている。
■少女
……うぅ、ファリス様を守って……

■ソフィティア To:少女
しっかりして。もう大丈夫よ。

 ソフィティアはうわごとを繰り返している少女を起そうとした。
すると、少女がうっすらと目を開いた。開いたとたん、ソフィティアの顔を見て……
■少女 To:真っ黒な人
キャアァァァーーーーーーーーァッ!!

 絶叫。さらに、ひどくおびえているようだ。目線が定まらない。
■ヴィクトール To:
わぁぁっ!?・・・な、なに??

 ちょっとよそ見をしていたらしいヴィクター、突然叫び声が聞こえて驚くの図。
 状況を見て取り、叫ぶ少女にサニティで落ち着いてもらおうとする。ヴィクトールの魔法により、少女の瞳にはだんだん理性の光が戻ってくる。
■ヴィクトール To:少女
・・・はぁ〜、びっくりしたぁ。
えっと、落ち着いたかな?オレ達、怖い人じゃないから安心して良いよ。
オレ達は冒険者で、この村を助けに来たんだ。

■少女 To:ALL
……あっ、ご、ごめんなさい。わたし、わたし……

 ソフィティアは脳を突き抜ける絶叫が直撃、頭真っ白で呆けている……
 少女は泣き出した。ヴィクトールの声を聞いて気が緩んだのかもしれない。
■ヴィクトール To:少女
あ、あぅ・・・。
どうしよぅ、オレこーゆーの苦手だよ〜。

 オロオロと助けを求めてリーダーの方を見るも、呆けている様子を見てちょっと絶望感のヴィクター(笑)
 仕方ないのでリッキー君が少女の肩あたりをちょこちょこ登って自前のマントで涙を拭って慰めのポーズ(キザな優男風)をしてみたり。その様子に少女も思わず微笑む。
■少女 To:おサルさん
……くすっ。
ありがと、おサルさん。わたし、もう泣かないよ。

■ヴィクトール To:少女
そ、そうだ!初対面なんだから自己紹介しなきゃいけないよね。
オレはヴィクターって言うんだ。で、黒くなっちゃってるのがリーダーのソフィー姉ちゃんで、そっちのチョロチョロしてるのがオレの相棒のリッキー。
・・・えーっと、君の名前はなんて言うの?

■ケニ To:ヴィクターさん
わたしは、ケニといいます。助けてくれたんですね、本当にありがとう。
あっ、ソフィーさん大丈夫かしら?わたし、びっくりしちゃって…… !
そうだ!みんな、みんなは?!

 ケニは神殿へ走ろうとする。どうやら記憶が少し混乱しているのか、まだ村人が無事だと思っているらしい。
それを遮るように、神殿から出てきたカナルが立ちはだかる。
■カナル To:ケニ、おおる
おっと、無事だったようだな。
で、何か聞けたのか?
神殿の中のことは、俺達がやっておくから、この子は少し休ませてやれよ。

 その声に、やっとアッチの世界からソフィティアが帰ってきたようだ。
■ソフィティア To:カナル&ケニ
ヘ?あ、あぁ、うん、わかったわ。まだ話しは聞けてないの。
ケニちゃんって名前だったかな?

■ケニ To:ソフィーさん
はい。わたし、ケニです。……あの、この方は?

■ソフィティア To:ケニ
私たちの仲間で、魔術師のカナルよ。彼があの神殿扉を開けてくれたの。

■ケニ To:カナル、ALL
わぁ、そうなんですか。カナルさん、ありがとうございます(ぺこり)
どうしてもどうしても扉が開かなくて、みんなどうしてだろうって、すっごく困ってたんです。本当にありがとうございます。

 ケニは行儀よくお辞儀してお礼する。
■ケニ To:ALL
えっと、みんなは?村のみんなはどうしたんですか?わたし、みんなのところに行かなくちゃ。

■ソフィティア To:カナル
そうだ、カナル。中の様子はどうだったの?

 ソフィティアは煤を落とそうと無駄な努力をしながら話し掛ける。が、案の定汚れが広がっただけ……
■カナル To:ソフィティア、ケニ
ああ、アトール達が調べてる。
それよりも、二人とも酷い格好だな。
顔でも洗ってこいよ。

 カナルはソフィティアに目配せ。事情を察知して、ソフィティアも目配せで答える。
■ソフィティア To:ケニ
心配なのはわかるけど、いま中に入っている仲間にも司祭がいるし、怪我してる人は彼らが手当てをしてくれるわ。
ケニちゃんは特に煤だらけだし、先にこっちをなんとかしようよ。

■ケニ To:ソフィーさん
わぁ、司祭さまがいらっしゃるんですか。
じゃあ、井戸にご案内しますね。こっちです……

 神殿の裏に回ろうとして、すっかり焼け落ちた村の様子を目にするケニ。
■ケニ
……?どうして……

■カナル
(これはどうしようもないか。
 どうせいずれはばれることだ。
 しかし、さすがにこの中は見せられないな……)

■ケニ
……そう。わたし、お母さんと朝ご飯の片付けをしてたんだ……。
お父さん達が山に行くのを見送って、戻ってきて、それから、それから……?

 混乱していた記憶がおさまったらしい。何が起きたかを思い出したのだ。
■ケニ To: ALL
それから、ダークエルフが来たんです。
あっという間だったの。気が付いたらあいつらが沢山村に入り込んできて、そこら中に火を放って。お父さんたちを呼び戻すひまもなかった。司祭様のご指示でみんな神殿に逃げ込んで、でも扉を閉めようとしたらあいつが、来て。

 その後は、先ほどアフル、カナル、アトールが見抜いたとおりのことが起きた。
■ケニ To: ALL
紫のマントのやつが、何か言って。他の奴が何かを放りこんだら、火蜥蜴が走り回って、扉が閉められて、どうしても開かなくて、だんだん苦しくなってきて、わ、笑ってたの、そいつ、笑ってたの……

 最後のほうは声にならなかった。しかし、ケニは顔を上げた。覚悟を決めたようだ。胸の聖印を握り締めている。
■ケニ To: ALL
お母さんは、いえ、みんなは……?どうなったんですか?

■カナル To:ケニ
神殿の中で、助かったのは君だけだよ。

■ソフィティア
そう、助かったのはケニちゃんだけなのね……。

■ケニ To: ALL
わたしだけ……

 ケニは取り乱しこそしなかったが、涙を止めることができない。
■ヴィクトール To:ケニ
・・・ゴメンね、オレ達がもっと早く来れていれば、何とか出来たかも知れないんだけど・・・。
でも辛いだろうけど頑張ろうよ。このまま泣いていたって、哀しいけどどうにもならないんだ。
だから、今は頑張ってこれからの考えなきゃダメだよ。神様だってきっとそれを望んでいるはずだよ。

■ソフィティア To:ヴィクトール&ケニ
ヴィクター、さすがに今すぐにそれは無理よ。だれもがあなたみたいに強いわけじゃないんだから。

ケニちゃん、悲しいのは私も良く分かるわ。でも、まだ安全って訳じゃないの。私たちもまだ状況の把握ができてないから色々聞かしてくれないかしら?


■ケニ To:ヴィクターさん、ソフィーさん
神様……そうですよね。わたしにはまだやらなくちゃならないことがあるんだから、泣いてたらファリス様にしかられちゃいます。
ソフィーさん、みなさん、わたしの話を聞いてくれますか?
そして、お力を貸してください。おねがい。

 ケニは涙をぬぐって、ちょっとだけ無理に微笑んでみる。先ほど慰めてくれたリッキーにもちょっと笑いかける。もう大丈夫、と言いたいようだ。
■ケニ To:ソフィーさん
えっと、その前に、今度こそ煤落としましょう。井戸はこっちです、ソフィーさん。

■ソフィティア To:ケニ
そうね、はやく汚れを落としちゃいましょう。煤に涙の筋がついてケニちゃん恐い顔してるしね(^^)

 ケニはその言葉にまたちょっと笑った。
 ソフィティアとケニが井戸で汚れを落としている間、アトールは村の様子を見て歩いた。
 足跡がたくさんある。自分達以外で一番新しい足跡は、おそらく 1 日前位のもので、自分達が来た村の入り口とは逆の方向へ降りて行っている。人数は多分、10 人以上。 建物はとことん焼かれているが、さらに焼いてから中に入って調べたような形跡がある。 村人の遺体が神殿の外にもいくつかあるが、その中には拷問の跡があるものも見られた。 村を襲ったものは何かを探していたらしい。
 村をひとつ滅ぼしてまで彼らが手に入れたがったものとは、一体何だろうか?



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