「幸福になりたいと思い、努力を重ねること。
これが幸福への一番の近道である」(トルストイ)
劇場 エントランスホール |
『エレック・ストーラー』の急死は、関係者をおおいに嘆かせた。
それから半年。将来を背負って立つはずの看板役者を失ったパルメテウス歌劇団は、周囲の心配をよそに、新たな役者を迎え出発した。
アーネス・ライファンという名のその女性は、着実にその力を認められ、エレックの死によってパルメテウス歌劇団から離れていった客を呼び戻しはじめた。
そして。
今日は、そんな彼女の初の主演公演となった。
演目は、そう……「リュスイが野の風」
奇しくも、エレックが最後に演じ上げたあの作品であった。そして、その日の約束の時間。
ホールから少し離れた待ち合わせ場所で、物思いに耽りながらアップルがたたずんでいた。……いや、ただぼーっとしてるだけかも。
と、そこへ駆け寄る小柄な人影が一つ。
■ アシスト To:アップル |
アップル姉ちゃん、お待たせ〜。 買い物にちょっと時間掛かっちゃった(^^; |
その手には、綺麗に包装された小さな包みが二つ。ふと近くの柱に目をやると、そこにはイルミナが立っていた。
アシストの声に気づいたのか、きょろきょろ辺りを見回す。
と、ようやくアシストの姿を認めたようだ。
■ イルミナ To:アシスト&アップル |
あら?今の声はアシストさんかしら? あっ、あそこだわ。アップルさんもいらっしゃるわね。 アシストさ〜ん。アップルさ〜ん。 |
とてとてという足音を立てながら、駆け足でアップルたちに合流。
■ アップル To:イルミナ&アシスト |
ひさしぶり〜元気だったぁ? |
いつもより、視界がすっきりしているイルミナの周囲をキョロキョロ。
■ アップル To:イルミナ |
あれ・・・?クレフは? いっしょじゃないの?? |
とその時、雑踏の中に困ったような顔をして右往左往している一人の男が目に入った。
良かったね、誘われていなかったわけじゃないようだ。
■ クレフ (To:イルミナ) |
……あれぇ…どこいったんでしょう…はぐれてしまいましたねぇ(;´Д`) |
でも、はぐれてる……。
■ イルミナ To:アップル |
えっっと...さっきまで一緒だったんですけど...(^^; 近くにいるとは思うんですが... |
アップルが、めざとく右往左往しているクレフを見つけ、イルミナに知らせた。
そんな二人を見ながら、ふと考えた事は、
■ アップル(心の声) |
このふたり、いつもこんな感じではない・・・・のよね? |
いや、こんなもんだと思うよ。
■ アップル To:イルミナ&アシスト |
えっと、もう一組のご両人は・・・・ ・・・・現地集合かな?^_^;; 舞台、はじまっちゃいそうだから、先に移動してない? |
■ アシスト To:アップル |
ジーク兄ちゃんならリュセラ姉ちゃんが一緒だろうし、きっと大丈夫だよ。 |
■ ジーク To:ALL |
お待たせしました〜(^^; ちょっと待ち合わせに遅れちゃいましたね(^^; |
そこには、いつの間にかジークとリュセラの姿が。
混雑するホールを抜け、一行は客席へと向かった。
暫く前に自分たちがここで仕事をしていたのか……という、妙に感慨深い、不思議な感覚が胸にこみ上げる。
■ アップル |
わぁ・・・・ お客さん、たくさん入ってる・・・・^_^ |
扉を開けると、客席は既に満員だった。
何とか人数分の席を確保した一行は、今か今かと幕の上がるのを待っていた。
■ アシスト To:ALL |
ねぇねぇ。まだ始まるまで時間あるし、ちょっと控え室まで行ってみない? |
■ ジーク To:アシスト |
そうですね、そうしましょう(^^ |
劇場 楽屋 |
楽屋の方へ向かうと、通路で丁度ニケルに出会えた。
ニケルの案内で、アーネスの楽屋へと向かった。
楽屋の中にいたのは、一人の非常に美しい女性だった。
■ アーネス To:おおる |
皆さん、来て下さったんですね。 |
エレックであったときと、同じだが全く違う声と表情で、アーネスは一行を出迎えた。
■ アップル To:アーネス |
・・・・・・アーネスさん・・なんですよね?(嬉) お元気そうで、なによりです♪ |
■ アーネス To:アップル |
ありがとう。 アップルさんも、みなさんも、変わらずお元気そうね。 |
■ ジーク To:アーネス |
元気過ぎる人もいるんですけどね(^^; |
誰のことだろうね(笑)
■ アップル To:アーネス |
アーネスさん・・”アーネスさん”なんですね♪ほんとうに、うれしくなっちゃいますね♪♪ |
■ アシスト To:アーネス |
えへへ。それからこれはアーネスさんへのプレゼント。 気に入ってくれると良いんだけどなぁ。 |
■ アーネス To:アシスト |
あら、何かしら? |
アシストが、手渡した小包を開くと、中にはアザミを象ったイヤリングと、小箱が一つ。
■ アーネス To:アシスト |
素敵! これを私に? ありがとう! ……折角だから、今日の公演で、付けさせて貰うわね。 |
■ アップル To:おーる |
本番前なので、そろそろ失礼しましょうか? ””アーネスさん””の初主演、今度は楽しませて頂きますね! |
■ ジーク To:ALL |
そうしましょう。 アーネスさん、がんばってください(^^ |
■ アーネス To:おおる |
ええ、絶対に最高の公演にしてみせるわ。 ゆっくり見ていってね。 |
劇場 客席 |
そして。
緞帳の前、舞台袖からライストンが姿を現した。
■ ライストン To:客席の皆様 |
さあ、皆様! 今日は、我がパルメテウス歌劇団が至宝、アーネス・ライファンの初主演公演をご観覧にいらして下さいまして、感謝の気持ちは表しようもございません。 しかし、彼女を見ていただければそれ以上に皆様の心を満足させていただける事もないでしょう。 長らくお待たせいたいました! ごゆっくりご観劇下さいませ。 |
■ ジーク To:ALL |
いよいよですねぇ(^^ |
■ アップル To:ALL |
こんどは、お客さんとして、ね^_^;; |
楽団が、静かに曲を奏で始めた。
新たな歌姫の誕生の予感と確信が、客席を満たしていた。
しかし、彼らは知らない。
彼女の歌姫を生まれる影に、ある冒険の活躍があったことを。
そして、今……ゆっくりと幕が上がる。