「行く河の流れは絶えずして、
しかももとの水にあらず……」(鴨長明)
劇場 舞台袖 |
最後のフレーズが場内に響きわたり、ゆっくりと……そして静かに消えていった。
一瞬の間。
そして、割れんばかりの拍手と歓声が、エレックの上に降り注いだ。
深々と礼をする『エレック』の姿を、冒険者達は舞台袖で見ていた。
■ ジーク To:ALL |
素晴らしかったですね・・・・・ |
■ クレフ To:ジーク |
まったくです。同じ芸術家の端くれとしては、ちょっと嫉妬しちゃいますねぇ(嘆息 |
■ ジーク To:クレフ |
私もですよ(^^; |
■ リュセラ To:仲間 |
あの拍手と歓声は彼女の演技と歌声に対するものだと信じていいのかな? |
■ クレフ To:リュセラ |
少なくとも、私は思ってますよ。 あれは、彼女…いや、“エレック”の実力だ、ってね。 |
■ ジーク To:リュセラ&クレフ |
そうですね。 名声だけでは人を感動させることはできませんからね。 これは彼女の実力ですよ。 |
■ アップル(ひとりごと) |
本人が、心からそう思える日が・・来るといいな・・ |
■ アシスト To:アップル |
きっと来るよ、アップル姉ちゃん。 この公演の成功は、あの人が自分で勝ち取ったものだから……ね。 |
■ ジーク To:アシスト&アップル |
そうですよ。 エレックさんとの約束果たされましたし。 次は彼女自身の夢を果たす番ですしね。 |
客席には、今日もセイルが、そしてセイルの妻やケネスの姿もあるはずだった。
再び深々と一礼をすると、エレックは舞台袖へ戻ってきた。
■ ジーク To:エレック |
お疲れさまでした。 そして公演の成功、おめでとうございます(^^ |
■ リュセラ To:エレック |
お疲れ。今日の舞台、今までで一番良かったよ。 |
■ エレック To:ジーク、リュセラ |
そう言ってくれると嬉しいよ。 |
■ クレフ To:エレック |
まったくです。私もいちおう吟遊詩人などをしてますが、 とてもじゃないけどあなたの前では唄えませんよ、恥ずかしい(^_^;) |
■ エレック To:クレフ |
そんなことはないさ。 全ての人に対して、最高の歌を歌うのが私達の仕事だ。 しかし誰だって、誰かの最高の歌い手なんだ。 君にも、誰よりも感動させる歌を歌を捧げることが出来る相手がいるだろう? その誰かの前では、もしかしたら私の歌の方が霞んでしまうかもしれないよ。 ……私にも、そう言う相手が現れる日が来るのかな? |
そう言ってエレックは笑った。
それは、彼らがエレックに会ってから初めてみる笑顔であった。
■ アップル To:エレック |
そうですね。これからは、ご自分のために・・・ですね^_^ |
■ エレック To:アップル |
そうだね。 (ありがとう、その言葉で少し勇気が持てたよ……) |
■ リュセラ To:ALL |
公演も終幕したし、今日で長かった護衛の仕事も終り……。 後は団長の所で報酬貰うだけね。 |
■ アシスト(独り言) |
そっかぁ……今日でお別れなんだね。 |
そこへ、舞台上での挨拶を終え、ライストンがやってきた。
■ ライストン To:エレック、おおる |
これまでで、最高の演技だったぞ! それに、君たちにもお礼を! 本当にありがとう。今日の公演も、全ては君たちのおかげだ。 |
■ アップル To:ライストン、おおる |
公演の成功の一番の理由は、ライストンさんやエレックさんをはじめとした、劇団の方々の努力ですね^_^ それにしても・・・結局、公演前に捕まえたあの女がポイントだったのでしょうね。あの女が失敗したことで、とりあえずはあきらめてくれたのかもしれません。・・それにしても、何が狙いだったんでしょうね・・? |
最後の一言は、ライストンにも聞こえるような独り言。
この一連の依頼で、すこし舌の枚数が増えたらしい。
■ ライストン To:アップル |
全く、その通りだと良いが。 取り敢えず、君たちへの依頼はここまでだ。 本当に、ありがとう。 |
■ ジーク To:ライストン |
いえいえ、お役に立ててなによりです(^^ |
■ エレック To:ライストン |
団長……お話があります。 |
いつになく真剣な表情のエレック。
■ アップル(心の声) |
気持ちの整理、ついたのかなぁ・・・・? |
■ ライストン To:エレック |
なんだ、あらたまって。 |
ライストンの声は静かだった。
■ エレック To:ライストン |
団長を、ずっと騙していました……。 |
エレックは、今までのことをゆっくりと話し始めた。
自分の出自。自分とエレックの出逢い。そして……。
ライストンは、ただ黙ってその話を聞いていた。
■ エレック To:ライストン |
申し訳ありませんでした。 |
■ ライストン To:エレック |
…………。 |
■ ジーク To:ライストン&エレック |
・・・・・・。 |
ジークは、ライストンとエレックを交互に見つめる。
■ ライストン To:アーネス |
ようやく話してくれたか。 他のメンバーはともかく、この私が気づかないと思っていたのかい? |
驚くアーネスに、ライストンは、
■ ライストン To:アーネス |
エレックから聞いたよ。 彼も、薄々と自分の死期を悟っていたのかもしれないな。 自分が死んでも、きっとその後を継いで、さらに高いところまで登ってくれる人がいる。彼はそう言っていたよ。 あの日、エレックのふりをした君が現れたとき、その言葉の意味を理解した。
今回の公演で、彼は彼の力にふさわしい名声を得た。 |
■ ジーク To:アーネス |
良かったですね(^^ これで貴方の夢も叶えられるではありませんか。 |
■ アーネス To:ライストン |
あ、ありがとうございます…… |
アーネスは、それ以上何も言えず、ただライストンの腕の中で子供のように泣きじゃくった。
■ イルミナ To:クレフ |
でも、本当にほかの人達は彼女のことに気づいてなかったのかしら? 本当はほかの人も知っていて知らぬふりをしていた...あたたかくアーネスさんを見守っていたのではないか...って思うのは、私だけかしらね?(^^; |
■ クレフ To:イルミナ |
そうだったのかもしれませんねぇ… みんな、いい人たちばかりですから(^-^ |
それは、イルミナの優しさかな。
実際に、ライストン以外は騙されていたようである。そんな周囲の雰囲気に、湿った空気をふりはらうように。
■ アップル To:おーる |
(ぱんっと手をうって) さてっと・・・。私たちは、そろそろおいとましましょうか? |
■ ジーク To:アップル&ALL |
そうですね、そうしましょう(^^ |
ライストンとアーネスの方に改めて向き直し、
■ ジーク To:ライストン&アーネス |
さて、我々はそろそろ引き上げることにします。 |
■ ライストン To:ジーク |
おお、そうか。 それでは、これが約束の報酬だ。 |
ライストンに渡された袋には、報酬が入っていた。
■ ジーク To:ライストン |
ありがとうございます。 |
■ アーネス To:ジーク |
今度は、私の公演を見にきてくださいね。 チケットをお贈りしますから。 |
■ ジーク To:アーネス |
ええ、是非(^^ |
■ クレフ To:アーネス |
今度は、他の誰かじゃないあなたを見せてもらいに、ね。(^-^ |
■ アップル To:アーネス |
アーネスさんの主演・・かぁ。 たくさんのお客さんがきてくれて、アーネスさんが楽しそうに歌っているんですよね・・・ なんか、想像しただけでも嬉しくなってきますね^^ |
■ アーネス To:おおる |
ええ。 私の、最高の舞台でお待ちしています。 |
■ アシスト To:アーネス |
それじゃあ、その時にまた会おうね(^-^)/~~~ |
アーネスの笑顔に見送られ、冒険者達は劇場を去った。