| ≪ 依頼人とご対面 ≫ |
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依頼人あらわる |
銀の網亭のマスターが使いの者を出してしばらく後。先ほど出て行った使いの者が、DWの座るテーブルの前に、1人の男性と1人の少女を連れてきた。
男性の方は、おやじがいっていた通りの、20代後半ぐらいの長身で立派な身なりをした、長い金髪がまぶしい美形の好青年である。
少女の方は、茶色の毛をポニーテールにした、大きくクリクリした瞳が印象的な活発そうな女の子だ。年の頃は14〜15歳ぐらいに見える。使いの者にDWを紹介されると、男性は一礼した後、穏やかな表情で話をはじめた。
■ローゼ To:DW |
みなさんはじめまして。私、ローゼ・グラハムと申します。 今回、あなたがたのような冒険者の方々にお手伝いしてもらいたいことがありまして、この依頼を出させて頂きました。 それで、今回の依頼の件なんですが……。依頼書の通り、私たちがある沈没船の捜索をする際の警護、お手伝いをしてもらいたいのです。 その船には、私の今は亡き親友が乗っていて、その娘がこの……。 |
■ガイア To:ローゼ |
ローゼさん、そこから先はあたしが話す。 |
ローゼの言葉をさえぎるようにして、少女ガイアが話をはじめる。
■ガイア To:DW |
はじめまして、あたしガイアっていうの。よろしく。 その沈没船ってのは、あたしのオヤジが船長だった船なの。 事故でオヤジごと海の底に沈んじゃったんだけど…。 何とかしてオヤジの遺品を引き上げたいの。 でも、その沈没船があるあたりは危険な海の生物がいるらしくて…。 あなたたちのような人の助けが必要なの。 お金はちゃんと払うわ。……引き受けてくれないかしら? |
少女は、ハキハキとした声で一気にいい終えると、DW一同をゆっくり見回して反応を見るのだった。
■スレイ To:ガイア、ローゼ |
はじめまして。わたしはスレイといいます。 依頼を引き受ける前に少し質問をしてもよろしいですか? |
■ローゼ To:DW |
ええ、もちろんいいですよ。 |
■ジャン=バッティスタ |
(むっ、いつもならカナルのセリフなのに……) |
■カナル |
(先を越された!? まあ、スレイがやってくれるなら、楽で良いな) |
■リムリィ |
(スレイさん……なんか依頼人が男の人だって聞いて元気なくなってたかと思ったら、女の子がいると急に元気になった………) |
■リグ |
(スレイ兄ちゃん、すけへ……) |
■スレイ To:ガイア、ローゼ |
では失礼して。 事故で船が沈んだと言われましたが、沈没の原因はその危険な海の生物にあったのですか? |
■ローゼ To:DW |
さきほど危険な生物といったのは、シャークやオクトパスのことなのですが……。 それらが船を沈めたという話はあまり聞きませんね。 まあ、ジャイアントオクトパスなどでしたら別ですが、あの海域にこの怪物がでたという話は聞いたことがありません。 詳しい原因は謎なんですが……。 |
いったん話を切り、少し考えるような仕草をしたのち、彼はこう続けた。
■ジャン=バッティスタ |
(タコブツに刺身…… ティトがいたらさぞかし喜ぶんだろうな) |
■スレイ |
(むむぅ、大物じゃありませんでしたか……。 しかしオクトパスって空を飛ぶんじゃありませんでしたっけ……、う〜ん?) |
何故か残念がるスレイ。
■ローゼ To:DW |
……もしかしたら、私はマーマンたちのしわざではないかと考えています。 |
■ガイア To:ローゼ |
ローゼさん! またそんな…。 |
突然ガイアが非難めいた声をあげる。
■スレイ To:ローゼ、ガイア |
……ま、マーマンっ?! |
何故か嬉しそうに聞くスレイ。
■ジャン=バッティスタ |
(マーマンか…… そいつは食えそうにないな) |
■リムリィ |
(マーマンって何だっけ……) |
■ローゼ To:DW |
あくまで、原因として考えられる、ということです。 しかも、もしそうだとしても、それはマーマンたちのせいではないのですよ。 実は目的の船が沈んだ頃、ある宗教集団がマーマン狩りを頻繁におこなっていまして、ちょうど船が沈んだ海域……カルナ諸島あたりに住み着いていたマーマンの部族が狙われたようです。 ただ、マーマンの方もだまってはやられていたわけではなく、報復攻撃をして、ちょくちょくその集団の船を沈めていました。 なので、ガイアの父親の船が沈んだのも、もしかしたらその報復攻撃に巻き込まれたのではないかとにらんでいます。 まあでも、最近はマーマン狩りの集団もいなくなったようですし、マーマン出没の話も聞きません。そのへんは大丈夫だと思いますが……。 |
■リムリィ To:ローゼ |
えと……沈没船ってことは、水に沈んでるんですよね? どうやって船まで行くんですか? |
■ローゼ To:リムリィ |
沈没船の位置はわかっていますので、その真上まで船で移動したのちにロープを垂らして、直接潜って行きます。 水の中での行動について心配があるかもしれませんが、私の仲間の精霊使いに水中でも呼吸ができる魔法をかけさせますので、問題はないと思います。 私たちが沈没船へ行って中を捜索した後、船に戻るまでを警護してもらいたいので…。 |
■スレイ To:ローゼ、おおる |
ほぅ、水中呼吸が可能なのですか。 わたしはまだ海に潜ったことがないんですよね〜。ちょっと楽しみです。 でもそこまでウンディーネと仲良くなれるとはすごい人ですね(^^) |
■ローゼ To:スレイ |
私も、彼はかなりの実力者だと思っています。依頼を受けてくださることになれば、紹介させていただきます。 |
■イスカ To:バティ |
(ぼそっと)これでスキュラとも……。 |
■ジャン=バッティスタ To:イスカ |
(ぼそっと)今度は、お友達になれそうだな。 |
■リグ To:カナル |
海に落ちても鎧を脱ぐ心配がなくなってよかった。まだカナル兄ちゃんにお金返してないもんね。 |
■カナル To:リグ |
安心して良いぞ。 鎧が海の藻屑と消えても、借金まで泡のようにはじけて消えることはないからな。 |
■リグ To:カナル |
……も、もちろんだよぉ。 |
■スレイ To:ローゼ、ガイア |
……(^^;
では、もう少し質問してもよろしいでしょうか? |
■ローゼ To:スレイ |
………。 まず、船の沈んだ時期なのですが、約半年前頃になります。 それと、ガイアの父親の仕事なのですが……。 |
なぜかローゼの口調がややトーンを落ち、そこにガイアが口をはさむ。
■ガイア To:ローゼ、DW |
別に話してもいいわよ、ローゼさん。 というか、依頼を受けてもらう前に話しとかないといけないと思う。 えっと、実は私の父親は、海賊の頭だったの。 |
■カナル |
(なんとまぁ、海賊ねぇ……これは、やはり厄介事か。 まあ、いつものことだな) |
■スレイ To:ガイア、ローゼ |
……か、海賊さんっ?! |
とっても嬉しそうに聞くスレイ。
■ガイア To:DW |
まあ、海賊は海賊でも、悪徳な商売をしている船のみを狙う義賊だったの。 「ファイナルウインド」って海賊団知らない? そこそこ有名だったと思うんだけど…。 その海賊団の頭、ハイネルが私の父親。 っていっても、あんまり会ったことなかったんだけどね…。 |
■ジャン=バッティスタ To:ガイア |
知らん! 自慢ぢゃないが聞いたこともない!! |
■ガイア To:ジャン=バッティスタ |
そっ、そうですか……。 |
バックに「がっかり……」という擬音文字が見えるぐらい、目に見えてがっかりと肩を落とすガイア。
■カナル |
確かに、自慢できることじゃないな。 |
■スレイ To:おおる |
あ、聞いたことがあります! なんでも貧しい人々には人気があったらしいですよ。奪った財宝などはかなりばらまいていたらしいですからね〜。 あと戦闘力も高かったと耳にしています。 |
■ガイア To:スレイ |
そ、そうですかっ! |
一転今度はバックに放射状の効果線が入るぐらい、喜び(?)の表情を浮かべる。
■スレイ To:ガイア |
は、はいっ……(^^; |
■ジャン=バッティスタ To:スレイ |
ふむ、なるほど。 俺様は貧しくないからな |
■スレイ To:バティ |
……まるでわたしが貧しいみたいですねぇ(^^; |
■ローゼ To:DW |
……ちなみに、私はその海賊団の副船長をしておりました。
実は、半年前の事故の時も一緒に乗り込んでいたのですが…。 |
■カナル To:ローゼ |
なるほど……しかし、いきなり船が沈むと言うことは、普段でも起こりうることなのでしょうか? 私は海のことは詳しくないもので、教えていただきたいのですが。 |
■ローゼ To:カナル |
普段ではまず考えられないことです。 船は私たち船乗りの家であり、恋人であり、生活のすべてですから、全員で常に船全体のチェックをしています。 いきなり沈むというのは……考えにくいですね。暗礁に乗り上げたのかとも思いましたが、あの周辺にはなかったようですし……。 ですから私は、もしかしたら人間から被害を受けて逆上しているマーマンのしわざではないと思っているわけです。 |
■ガイア To:ローゼ |
………。 マーマンがそんなことするはず…ない……。 |
■スレイ |
……… (何か確証でもあるのでしょうかね?マーマンに知り合いがいる…とか?) |
ガイアのつぶやきに耳を傾け、考えこむスレイでした。
■カナル To:ローゼ |
ローゼさん以外の、生き残ったクルーは今どちらにおられます? |
■ローゼ To:カナル |
……というのは? |
■カナル To:ローゼ |
そのときの様子など、話して貰えたらとも思ったんですが。 |
■ローゼ To:カナル |
ああ、なるほど……。 生き残った者全員ではないのですが、その中の何人かは今も私の仲間として、私の商船の手伝いをしてくれています。 依頼を受けていただけるなら、彼らとは沈没船へ向かう船でご一緒することになると思いますので、ご自由にお話してもらって結構ですよ。 …ですが、今一緒に働いている仲間以外の消息は残念ながら私にも…。 |
■スレイ To:ローゼ |
えっ、今は海賊業をやめられているのですか? |
■ローゼ To:スレイ |
ええ。あの一件で足を洗うことにしまして…。 現在は船を使用しての輸送業をしております。 |
■スレイ To:ローゼ |
ほうほう、そうですか。 ちょっと残念ですね〜。海賊さんの知り合いが出来ると思ったのですけど(^^; あ、でも元海賊さんでも何も問題ありませんねっ(笑) |
■カナル |
(ふむ。どうやらここまでか。 どうせ疑ってみても、答えは出ないと相場は決まってるしな) |
■ガイア To:DW |
……父には、ほとんど父親らしいことをしてもらったことはなかったけど…。
でも! 亡くしてみて… ……どうか協力してくれないかしら。 |
■イスカ To:ガイア |
(少女の強さにすこし胸をうたれて) 道半ばにして海の底に沈んだ、お父上の無念・・それでも、娘のあなたがこんなにも強く生き、お父上のことを思っているのだから、きっとそれも意味のないことではなかったのでしょう。 私たちがせめてもの手助けになれれば・・。 |
■ガイア To:イスカ |
……! ありがとう! |
■カナル To:ガイア |
依頼を受けることはやぶさかではありませんが……。 遺品を取りに行く護衛と、船に積まれていた財宝を取りに行く護衛では、こちらの心の持ち方もかわってきます……。 ガイアさんの依頼は、前者の方、と考えてよろしいのですね? |
そうガイアに問いかけつつ、ローゼの様子をそれとなく観察するカナル。
しかし、特に変わった雰囲気は見られなかった。
■ジャン=バッティスタ |
(カナルって、こういうところをクドイんだよな…… しかも、こういうセリフを吐くときに限って目つきが怪しいし) |
■ガイア To:カナル |
私は……財宝についてなんて興味はないの。 あくまで父の遺品を取りにいきたい……それだけ。 もし財宝が欲しければ、私を抜かした全員で山分けしてもらってもかまわない。 その場合でも、もちろん報酬はちゃんと別に出すわ。 |
■カナル To:ガイア |
いやはや、それは無欲な(苦笑) 海の上では両手に持ちきれないほどの財宝を望んでも、そのせいで溺れてしまっては意味がありません。 我々も報酬が多いに越したことはありませんが、欲にかられるとろくな事が無いのは、十分経験してますので。 もし、それなりの財宝が有れば、心付けをはずんでくれる、で十分ですよ。 |
■スレイ To:カナル |
……欲にかられて失敗したことがあるんですね、カナル?(笑) |
■カナル To:スレイ |
さて、なんのことやら。 一般論さ。 |
■スレイ To:カナル、ガイア |
ふ〜ん、一般論ですか。説得力があったもので(笑)
あっ、わたしもカナルの考えで良いと思ってますよ。 |
■ガイア To:カナル、DW |
そう…わかった。冒険者って意外…っていったら失礼かしら? ……冒険者も私が思っていたより無欲なのね(^^) とりあえず、依頼を受けてくれるなら、前金で1800ガメル、依頼終了後に残り3000ガメル、これだけは必ず払うわ。 必要なら契約書も書きます。 |
■イスカ To:ガイア |
ありがとう、あなたがたを信頼しないわけでは決してないが、きちんと契約書をしたためておくのが冒険者としての礼儀。 よろしくお願いします。 |
■リグ To:ガイア |
冒険者にはお金が好きな人もいるけど、それよりも冒険が好き!って人も多いんだよ♪ 微力ながら力を貸すからがんばろうね。 |
■ガイア To:イスカ、リグ |
あなたたち、ほんとにいい人ばかりみたいね、…ありがとう。 じゃ、契約書書いておくわね。ローゼさん、お願い。 |
ガイアの呼びかけで、ローゼがふところから羊皮紙とペンを取り出す。そして、ガイアとローゼが契約書に署名し、イスカに手渡した。
■リグ To:ローゼ、ガイア |
ねえねえ、さっき話していたマーマン狩りの宗教集団ってどうゆう人たちなの? もしかしたら知ってる集団かもしれないから教えてくれない。 |
■ローゼ To:リグ |
詳しくは知らないのですが……。 ただ、船長…ガイアの父親のハイネルさんが、その宗教集団のことを気に食わなかったらしく、うちの海賊船で何度か、マーマン狩りをしているその集団の船を追っ払ったことがあります。 |
■スレイ To:おおる |
そんな宗教集団があるんですか……何か許せないものがありますね。 でも、ハイネルさんはいい人だったみたいですね(^^) |
■イスカ To:ローゼ |
宗教……というと、どんな神を崇めているんでしょう?彼らはいったい何のために、マーマンを狩っていたのです? |
■ローゼ To:イスカ |
やはりよくは分からないのですが、邪神に近いのではないでしょうか…。 もしかしたら、マーマンの肉を食べれば寿命がのびるという、大昔に流行った迷信を信じていたのかもしれませんね。 まあ、でもこの件は今回の依頼には関わってこないと思います。 |
■カナル To:おおる |
神の名前は、私も知りませんが、ガイアさんの言うとおり、寿命を延ばす、または不死を願って活動していたようですね。 もっとも、『エターナル』なんぞという大仰な名前からも推察できるように、かなり胡散臭い雰囲気のようですが。 大方は、金が目当てだったんでしょうね。 確か、合い言葉に「リードアチャームドライフ」とか言うのが使われてたとか……。 |
■ローゼ To:カナル |
そ、そうなんですか。なるほど……。 |
ローゼ、知識で負けてちょっとくやしそう?(笑)
■ジャン=バッティスタ To:カナル |
なんで、そんなこと知ってるんだ? お前さん、その『エターナル』とかの一味かい?(笑) |
■カナル To:バティ |
俺が一味ならば、もっとスマートな金儲けをやるさ。 |
■リグ To:カナル&おおる |
さすがカナル兄ちゃん、わたしも昔お母さんからそういった邪教があるって聞いたことある。 |
■スレイ To:おおる |
リードアチャームドライフ…『lead a charmed
life』? 意味的には、魔法で守られた人生をおくる―――つまり”不死を求める”ってな感じの言葉ではないでしょうかね? 結構、本気で不死を願っていたんじゃないですかね…、マーマンを襲っていますし。 |
■リムリィ |
マーマンさん達も………被害者なんですね………。 |
■リグ To:おおる |
他の人を犠牲にしてまで、不死になろうなんて考え許せないよ。 不死になったって、何も幸せなことなんて無いのに。 |
■カナル To:リグ |
幸せの多くは、他人の不幸の上に成り立ってるものだがね。 しかし、不死が幸せかどうかについては、俺も同感だ。 |
■ガイア To:カナル、DW |
そう、私も許せないの。 マーマンは悪者じゃないわ…… ……でも、あなた色々詳しいのねぇ。 |
DWのメンバーをあらためて見回して、想像していた冒険者の姿とかなり違っていたため、ちょっと不安になったらしい。
■スレイ To:ガイア |
大丈夫ですよ、ガイア。 私達はこれでも、かなりの場数を踏んでいるんですよ。 なんなら後で、冒険談を話してあげますよ(^^) |
■リムリィ To:ガイア |
ええ、大丈夫ですよ。守りますから。 |
■ガイア To:スレイ、リムリィ |
……うん、分かったわ、信用する! 船の中で冒険談も聞かせてね♪ |
■リムリィ |
(ほんとに大丈夫かな………) |
■ジャン=バッティスタ |
(美形ばかりって……誰だ? 2人しかいないぞ) |
■イスカ To:ローゼ、ガイア |
ところで、いつ出発するんです? |
■ローゼ To:イスカ |
では、あなた方も色々とご準備があるかもしれませんし、明日の朝、ここに来て頂けませんか? あと、これは前金です。 |
と、ローゼが集合場所をしめした地図と、前金の1800ガメルを手渡す。
集合場所はオランの街の南、港の一角であった。
■ローゼ To:DW |
それではよろしくお願いします。 |
■ガイア To:DW |
また明日ね! |
そして、一礼したあと、依頼人の2人は店を後にした。