氷雪の願い
山道 ジリィの家へ |
水草のあった湖より移動を始めた一行。
ポムの水袋の中では、赤い水草がゆらりゆらりと揺れている。
とことこと歩くことしばらく。
鬱蒼と茂っていた木がだんだんとまだらになっていき、なおかつ高度も少しずつあがっていっているようだ。
カヴァレスの烏がカァと、周囲を見るため上空にあると、周囲は山、山、山。自分たちがこれほどの距離を歩いてきたのか?と不思議に思うぐらいの山々である。
だんだん。風が冷たくなっていく。
気が付けば、あたりにはちらほらと雪の姿が伺える。
バジルの目にも、氷の精霊フラウの姿がふわりふわりと見えるようになってきた。
■クロス |
うぅ…ますます寒い… まだかな… |
ひゅるる、と吹き込む風に、おもわず襟を合わせるクロス。
しばらく雪道を歩き、ぴとっとジリィの足が止まる。
前足指す方向、丘の中腹あたりに洞穴の姿が見える。
あそこがジリィの家なのだろうか?
■ジリィ To:ALL |
(西方語) あの穴が、ジリィのおうちだぉ。 あの中に、にぃたん、ねぇたんがいるんだぉ。 それと、へんなにぉいのやつもいるんだぉ‥‥‥ おねがいだぉ。たいじしてほしぃぉ‥‥ |
じっ‥‥と穴をみつめて、ジリィが言う。
■バジル To:シーアン |
この辺は随分寒いね。氷のお姉さん達が飛んでるのが見えるよ。 氷のお姉さん……?水の精霊達もジリィくんの事を若様って言ってたけど、もしかして家の前にいる、びゅーって氷を吹きつけてくるおねぇさんって、氷の精霊の事かしら。 |
■シーアン To:バジル |
(俺、精霊とかってよくわかんねーんだよな・・・。) 少なくとも”肉体のある動物”って感じじゃないよなぁ。 |
■クロス To:バジル・シーアン・ジリィ |
聞いてみようか? (東方語) ねえジリィ。きみのねぇたんにぃたんは… |
と、バジルが見ていた辺りを指差す。
■クロス To:ジリィ |
(東方語) あの辺りに飛んでる氷のお姉さん達の仲間なの? 同じような形してる? |
当のジリィはというと、その方向に前足を振ってたりする。
■ジリィ To:クロス |
(東方語) うん。きんじょのおねさんたちだぉ。 おねさんたち、にぃたん、ねぇたんとおなじすがたしてるぉ♪ そかそか♪おうちきて、せつめいすればはやいぉ〜〜 |
バジルの目には、美しい精霊達が心配そうな瞳で冒険者達の方を見ているように。
精霊力のないものたちには、一部で氷雪が舞っているように見える。
■氷の精霊 To:バジル |
(精霊語) 若様。 若様がお連れした方‥‥どうか、お願いします‥‥ 私達では、どうしようもないのです‥‥ |
氷の精霊達は、冒険者達に冷気をおくらないよう、少し距離を保っている。
そのせいか、先ほどまでの寒さが‥‥すこし緩和されたようだ。
■ポム |
やっぱりフラウだったんだ… |
その一言がきっかけとなったのか。
冒険者の目の前で、だんだんと舞っていた氷雪が集まり固まり‥‥一人の少女の姿となった。
両手を胸のあたりで組、懇願の眼差しで冒険者を見る。
■ポム To:バジル&ルツァー |
うっわ〜!これってフラウ? |
■シーアン To: |
へぇぇぇぇ・・・。俺もはじめて見るぜ。 |
■アイシャ |
アイシャも〜。 |
■クロス |
ホントに女の子の形してるんだ… |
なんか、違うとこ関心してない?クロス(笑)。
初めて見る精霊の姿に、お目々キラキラ☆なポム。
傍らにいるバジルと依頼人に、思わず確認をとってしまう。
■ルツァー To:ポム |
ええ。これがフラウです。 ウンディーネに似ているのですが、ウンディーネと違い下の方がすっ‥‥と形が消えていくのが特徴でしょうか? |
と、簡単にウンディーネとフラウの相違点を説明する依頼人。
しかし、その隣では、
■シーアン To: |
(ウンディーネも見たことねーもん・・・) |
■クロス |
(ウンディーネも見たことないけど………) |
と、にたよ〜なことを考える野郎がふたり。
■カヴァレス To:ルツァー |
俺ぁ「ウンディーネ」とやらも知らねぇぜぇ? クク,依頼人殿は博学な事ったぜぇ。 |
と、にたよ〜なことを平気で口にする野郎がひとり。
まったく、このパーティーの男共は‥‥‥(笑)
■ルツァー To:カヴァレス |
博学じゃないですよ。精霊使いならば、皆知っていることです。 |
■ルツァー To:バジル |
ね(^^) |
相変わらずこの依頼人はにこにこと笑っている‥‥
■ポム To:バジル&みんな |
フラウて事は、臭くって見えないヤツって精霊を操れるって事だよな バジルやルツァーさんみたいに精霊魔法を使える魔法使いかな? 姿が消える魔法って以前の冒険で見たような気がするんだけどそれと違うのかな… うに〜考えるとこんがらがってくるぞ(^^; あたしに今見てる見たいに精霊とか見る事が出来たら先にこっそり覗いてくるんだけどなぁ… |
■クロス To:ポム |
やっぱり見えないと危ないから、一人で行くのは止した方がいいよ。 …なんなんだろう…臭いモンスターっていえばアンデッドなんかだけど… ちょっと一概に言い切れないような感じだし。 動物もみんな独特の匂いがあるけど、精霊を操れて透明なやつなんていうとちょっとねぇ… |
傍らで依頼人はジリィと氷の精霊に対して通訳を行っている。
その発言をきき、氷の精霊は、
■氷の精霊 To:ポム |
(精霊語) 相手は‥‥ニンゲンではなかったです。もちろん、邪悪なエルフとかではありませんでした。 遠くのほうから‥‥たゆたゆとただよってきて‥‥若様の家に‥‥‥ お願いです。若様がお家に‥‥帰られれるよう、あいつを倒して下さいませんか? |
■ポム To:氷の精霊 |
ふわふわ漂って来って! そりゃ空気みたいに軽そうなヤツだなぁ 倒すって普通の武器とかでどうこう出来なさそうだぜ |
と、困った顔で自分の武器を見る。
自分の武器はやくにたつのだろうか?と‥‥
■ポム To:氷の精霊 |
あれ…?たゆたゆ漂ってきたって言うけど見えないのに分かるのか? |
そう。素朴な疑問。
何故その存在に気がついたんだろう?
■氷の精霊 To:ポム |
(精霊語) ええ‥‥たゆたっている姿は確かに見えないんですけど、とにかく強烈に臭うんです‥‥ 若様なんて、お鼻がよろしいから、遠くからでももぉお鼻がパンクしちゃうので判らなかったみたいですけど、私達なら‥‥ それと‥‥若様御付きのフラウに悪影響を及ぼした時、ちょっとだけ垣間見たのですが、一瞬だけ緑色の物体になったような‥‥‥ |
氷の精霊は、一生懸命思い出しながら喋っている。
■クロス To:氷の精霊 |
緑色の物体? どれくらいの大きさだった? |
■氷の精霊 To:クロス |
(精霊語) ええっと‥‥‥すいません。一瞬しか見えませんでしたし‥‥それと、隙間からだったので‥‥ごめんなさい‥‥ |
と、だいぶすまなそうにしています。
■クロス To:氷の精霊 |
いや、いいよ。ありがとう。 |
■アイシャ To:氷の精霊 |
たゆたゆしてる臭いのって精霊さん達を操ってるんだよねぇ。 自分が攻撃したり暴れたりはして来なかった〜? |
■氷の精霊 To:アイシャ |
(精霊語) 初めは‥‥ひっそり近づいてきていたようです。周囲の者に悟られないよう、何も破壊せず、何にも手をださず。 でも、まっすぐ若様のお家に近づいてきたので、若様お付きの精霊達が退治しにいって‥‥そのまま‥‥。 若様に、ちょっとお家から避難していただいている間に‥‥ その後はずっと若様のお家に籠もりっきりです。 |
■シーアン To:ジュリー |
(東方語) なぁ、洞窟の中がどんな風になってんのか、ここ(地面)に描けるか? にいちゃん、ねぇちゃんがいる場所と、変な匂いの奴がいる場所も教えてくれよな。 |
と、ジリィの傍らにしゃがみ、ちょっと開けている地面をつん、つんと突っつく。
■ジリィ To:シーアン |
(東方語) あぃ、わかたぉ〜♪ |
そう言われ、おしりふりふり見取り図を書き出すジリィ。
カリカリカリカリ地面をひっかき、できあがったものがこの図である→■(別窓が開きます)
■ジリィ To:ALL |
(東方語) えとえと、ここが(1を指す)はぃるとこで、ここが(2を指す)ごはんたべたり、あそんだりするとこ、ここが(3を指す)おねねするとこで、ここが(4を指す)たいせつなとこだぉ。 にぃたん、ねぇたんはたぶん‥‥ごはんたべるとこかおねねするとこにいるとおもぅぉ。 やなにぉいのやつは、おねねするとこか、たいせつなとこのちょくぜんにいるとおもぅぉ。 む〜む〜〜〜 このへや(4を指す)にはぃるまえに、どあがあて、そいつはそのどぁくぐれないから、ここにはぜたいいないとおもうぉ。 |
ぺしぺしと地面を叩いてご説明。
■氷の精霊 To:ALL |
(精霊語) 若様の図でだいたい合っています。 お食事をされる部屋は、ひろいところで10m四方で、お休みされるところは‥‥だいたい7m×4mかしら? 一番奥の大切な場所は、私も入ったことはありませんが、お付きの精霊‥‥キオとニアっていうんですけど、彼女の話が本当ならば20m四方だそうです。 |
と、地図を見ながらフラウが補足。
さて、にぃたん、ねぇたんの名前もわかったのだが、どっちがキオでどっちがニアというのだろう?
■シーアン To:みんな |
入り口は1つか・・・。逃げられる心配はねぇな。 囮を使って、キオとニアってのを誘い出したら、みんなで中に入って・・・ あ、ルツァーさんはここで待っててくれればいいっすから。 で、アイシャが魔法を入り口にかけてキオとニアが戻って来れなくするんだろ? |
■アイシャ To:シーアン |
うん。マーファ様に力を貸してもらうの〜。 |
■ルツァー To:シーアン |
わかりました。 一応安全のため、ここで身を隠していますね。 |
■シーアン To:みんな |
入る前にかけれる魔法はかけておいた方が時間の節約になるよな。 プロテクションに、え・・・と、カウンターマジック? エンチャントなんとかってのも重要なんだろ?カヴァレスだけで大丈夫・・・か? |
■カヴァレス To:シーアン |
ほぉ? 随分と詳しいじゃねぇかよぉ。クク,流石はリーダー殿だぜぇ。 |
■シーアン To:ルツァー |
そうだ、ルツァーさん、プロテクションお願いしてもいいすか? |
■ルツァー To:シーアン |
プロテクションですか?いいですよ。 どなたとどなたに唱えればよいのですか? |
■ポム To:ルツァー |
あたしにも家に入る前にプロテクション頼む♪ レスの人形が歩き出して、みんなに魔法をかける最後でいいからお願いするぜ♪ |
■クロス To:ルツァー |
あ、それじゃ僕も一緒にかけてもらっていいかな? |
■ルツァー To:ポム&クロス |
ええ、いいですよ。 では人形があるきだして‥‥突入するときにかければ良いのですね? |
■シーアン To:ルツァー |
で、ルツァーさんはですね、危ないので洞窟には入らない方がいいと思うんすよ。 ここでこのカラスと待ってて下さい。何かあったらこいつに話し掛けると、カヴァレスがわかりますんで。 |
■ルツァー To:シーアン |
わかりました。 彼の使い魔と一緒にいますね。 |
ふと氷の精霊はポムが手にしている水袋の方を見る。
■氷の精霊 To:ポム |
(精霊語) その水袋‥‥水草が入っているのですね。 お願いです。早く‥‥早く若様がお家に戻られないと‥‥せっかくの灯火が消えてしまうのです‥‥ |
■ポム To:氷の精霊&シーアン |
時間が無いってことかぁ |
つい‥‥とシーアンを仰ぎ見る。
それに対し、小さくうなずくとすら‥‥と己のグレードソードを引き抜く。
■シーアン To:カヴァレス |
カヴァレス、頼むぜ! |
■カヴァレス To:シーアン |
クックック,失敗してもよぉ,恨んでくれるなよぉ? 我ここに封ず,虚偽なる木偶の魂・・・ |
と手に持つ枝に呪文を込める‥‥‥
しかし、最初の呪文ではオークは発動されなかったようだ‥‥。
辺りに、ちょっと静寂が流れる。
■アイシャ To:カヴァレス |
だ、大丈夫なの。次はきっとうまくいくの〜。 |
とアイシャ嬢のフォローしかり。
表情も変えず、再度呪文を唱えるカヴァレス。
今度は正常に発動され、冒険者の目の前にはやせっぽっちなオークの姿が現れた。
皆の前からオークが出発するときに、ぼそぼそっとポムが
■ポム To:氷の精霊 |
今思ったんだけど…万が一臭いのが外に出てきちゃった時 操られちゃうかも知れないからここから暫く離れた方がいいと思うな …それと一つお願いがあるんだけどいいかな? この人形が家の中の2人を誘い出したら 人形が進む先に行ってキオとニアをちょっとの間引きつけてもらえないかな? 挑発でもなんでも方法は任せるから、出来たらあたし達が家に入るまで… うにに〜、アイシャ…髪の長いこの女の子が入るまでお願いしたいんだ。 入るのを見たら一目散に逃げて欲しいな そうしたらずいぶん助かると思うんだけどダメかな? |
■氷の精霊 To:ポム |
(精霊語) わかりました。なんとかがんばってみます。 みなさんも‥‥気を付けてくださいね。 |
ポムの要請に、快く引き受ける氷の精霊。