Sword World PBM #35「テン・ハイ」               


「ダービーデイ−ダービーデイ」


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競馬場−入口にて

 そして、レース当日がやってきた。
この日ばかりは、フェンもリアンも緊張しているようである。
それはそうだ。
オランのばんえい競馬で一番賞金の高いオランダービーの一番人気馬なんて滅多にもてるものじゃないんだから。
レース場へ行く途中でテン・ハイを引いて馬房の方へと歩いていくフェンと別れて、一行はブックメーカーが立ち並ぶレース場へとやってきた。
オランのブックメーカーは協定によって同じオッズで売ることになっているので、馬券を買うにはどこでも一緒なだけに、予想の巧さを皆競っているみたいである。
その中でも、オランばんえいダービーニュースという看板を掲げているところに人が多く集まっているようである。
■ 予想屋A To: 群衆の面々
 当たるよ〜当たるよ〜!
ここ3年ダービーを連続的中しているばんえいダービーニュースはうちでしか買えないよ!
一部たったの5ガメルだよ〜。

■ フィリス To:予想屋Aさん、ダグさん
はいはいはーい♪ひとつくださ〜いっ!^^)/
えっと………?

…ダグさん、これってどう読むんですか?^^;

■ 予想屋A To: フィリス
 おお、5ガメルだよ。嬢ちゃん。
今日のテン・ハイは固いからねえ。単勝でしっかり儲けさせて貰いなよ。

 5ガメルを受け取りながら、予想屋はそう答えた。
彼女らがテン・ハイの関係者ということは知っているのか知らないのか分からないが商売上手な予想屋である。

とりあえずオランばんえいダービーニュースを手に入れた一行は、それをみながら検討を開始した。ダグはフィリスに新聞の見方を説明しているようである。
ダグの話は長いので……聞き流した方が良いと思うが。
■ ダグ To: フィリス
 まずはじめにだな、この本紙予想ってとこの印が大切だで。
これは、この予想屋さんが予想しているんだけどだな、
◎−本命、○−対抗、▲−単穴……3番手ってことだな、△−連下−4番手ってことだで。
まあ、大体予想通りの印だでなあ。
でもって、この過去の成績だがな……枠で囲った中の右上の数字が大切だで。
1ってかいてあったらそのレースで一着、2ってかいてあったら2着だで。
この新聞は一着の時は色を塗ってくれているだでわかりやすいと思うだ。
簡単に言えばだ、色が沢山付いているほど強いだな。
同じことが重なっているっていえば重なっているだが、あとは、下に書いてある主要レース結果ってのが大切だで。
特にこの「ハルトマン記念」「ブラードステークス」「ミード湖カップ」ってのは、今までの大きいレースだったで、重要だなあ。
上から順に格の高いレースだで、この結果を参考にするといいだよ。
最後に、一番下のオッズだな。
単勝ってのは、どの馬が勝つかを考えて賭ける馬券だで。
テン・ハイは6番だから、6のところをみるといいだな。
上の枠順と色が一緒だからわかりやすいと思うだ。テン・ハイの色は緑だから覚えとくとわかりやすいだな。
その下は馬番連勝複式……長いからみんな馬連ってよぶだな。
これは一着二着をあてる馬券だで。
どっちが一着でどっちが二着でも大丈夫だ。
例えば、1−2ってのは、これだと25倍だなあ。
強い馬同士の組み合わせほどオッズが低くて、テン・ハイとブッシュランナーの組み合わせだと3倍だでなあ。
ただ、ブッシュランナーとライトニングブルー、デイズイノセントはどれも強い馬だでなあ、馬連で一点買いは危ないだよ。
まあ、大体こんなところだがや。

 予想通り、ダグの説明は異様に長かった。
■カルソニック To:All、答えてくれる人(笑)
 パドックは見れないのかね?

■ ダグ To: カルソニック
 パドックも見るが?

■ カルソニック To:タグ
 ・・時間がなさそうだからやっぱやめるわ(笑) 俺は・・・そうだな。単勝は6番と8番を50ずつ 馬連は・・・・6−8を50、6−2を50・・って所だな。

 意外とガチガチな買い方をするカルソニックであった。
■ パオル To:エデン
(う〜ん・・・、じゃあ単勝と馬連の両方で買うかな)

エデンさん、このお金でテンハイの勝ち馬投票権を買っておいて下さいね。
単勝でテンハイ、馬連で2−6でお願いします。

 小声でそういいながら、パオルはエデンに200ガメルを手渡した。
■ エデン To:パオル
テン・ハイの単勝と2-6ですわね?
承りましたわ。

■ ホルト To:パオル
よぉ、パオル、随分と余裕だなぁ。
いやいや、結構、結構。
ただでさえこの大観衆の中でテン・ハイも少なからず神経質になってるだろうからなぁ。
お前がドーンと構えていりゃあ、テン・ハイもちったぁ落ち着くってもんだ。
ん?興奮してた方が良いんだっけか?いや、ペース配分があるから…
まぁいいや、よろしく頼むぜ、大将!!
わっはっはっはっはっはっは

 後ろからぽんと肩に手を置いて話しかけ、それから無理矢理肩を組んで馬鹿笑いしながらパオルの背中をどんどんと叩くホルトであった。
 その間もホルトの眼は周囲に向けられていて、それとなくパオルが直接人混みに触れない様に気を配っている。
でも、このメンバーで一番強いのパオルのような気が……(笑)
■ ダグ To: パオル
 パオルさん、そろそろレースの準備の時間だで。
馬券を買うなら、誰かに頼んで準備にいくといいだが。
おい、アップル!おまえパオルさんを案内しねえが。

 アップルはその言葉を聞いてぽっと顔を赤らめた。わかりやすい娘である。
■ アップル To: パオル
 ……パオルさん、じゃあ案内しますね……。

■ ホルト To:パオル、アップル
はっはっは、んじゃしっかりやんな、色男!
アップルさんも頑張ってな。
何せこいつぁ、はっきり口に出して言わないとわからない鈍感野郎だかんな。

 ホルトはパオルの背中からアップルに片目を瞑ってみせた後、どんっとパオルをアップルの方へつんのめる程強く突き飛ばした。
■ パオル To: ALL、アップル
あっはっはっは!
でも僕は鈍感野郎じゃありませんて。
こう見えても(?)人畜無害でシャイな少年、さらにダチんこのヴァーンは朴念仁とも付け足してくれたんですよ?
鈍感なんて、全然ボクの柄じゃない(?)ですってば。
はっはっはっはっはっは

ともかく案内をお願いしますアップルさん。
トロトロしてて出場できませんでしたでは、話になりませんからね。

 意味が分かっているのか分かっていないのか、かなり大ボケな事を言うパオル。ホルトの指摘は正鵠を射ているようだ。
まあ、とりあえずパオルはフェンのところへ、他の皆は馬券購入所へパドック経由でいったみたいである。
競馬場−馬券購入所にて

 パドックを見た感じでは、全ての馬の出来がよく見えて全然判断がつかなかった一行である。
当たり前だ。
彼らはダービーダンディズなのだから。
早々にパドックを切り上げて、馬券購入所へやってきた。
■ ダグ To: ALL
 ここが馬券購入所だで。
みんな、俺がまず買うからそれと同じように買うといいだな。ちなみに単位は5ガメル単位だから気をつけなきゃいかんだな。

 そういうと、ダグは前の購入所の穴に手を突っ込んで、こう話し始めた。
■ ダグ To: 窓口
 単勝6を100ガメル。
それに馬連で、6−8を50ガメル、2−6、1−6を20ガメル4−6を10ガメル頼むだ。

■ 窓口 To: ダグ
 あいよ。

 その言葉を聞きながら、ダグは馬券を受け取った。
馬券といっても羊皮紙で出来ているのでなく、木の板に焼き印が押してあるものだ。
これは、レース終了後外れても回収するらしい。
■ エデン To:窓口
単勝6を200ガメル、馬番連勝複式の2-6を200ガメルお願い致しますわ。

■ 窓口 To: エデン
 これでいいかい?

 パオルとエデンは大勝負に出た。成功すれば、580ガメルの儲けだが、テン・ハイが勝っても、損をする可能性もある。
これぞ大勝負である。
■ カルソニック To:窓口
 単勝6と8を50ガメルずつ、馬連6−8を50、6−2を50貰えないか?

■ 窓口 To: カルソニック
 はいな。これでいいかい?

 カルソニックはきっちり一番人気の6−8を押さえている。
結構堅実な性格のようだ。
■ ホルト To:窓口
(賭事はやらん主義だが…まぁたまにはよかろう。)
まず、単勝で6を100。
それと馬連で、1−6を30、2−6を20、3−6を10、4−6を5、6−8を35。以上だ。

■ 窓口 To: カルソニック
 ほい。これでいいかい?

 ホルトもカルソニックと同じく結構堅実な馬券を好むようだ。
しかし、カルソニックと違って、気が多く、全体的に半端な決断が目立つ辺りは買い手の性格が如実に表れていると言えるだろう。
しかし、一番堅実なのはフィリスとアスタルテだろう。
彼女たちは、馬券は購入せず、テン・ハイを応援することに集中することにしたみたいである。
その頃、パオルは馬房へと向かっていた。
競馬場−馬房にて

 フェンとテン・ハイのいるところへ、パオルとアップルはやってきた。
テン・ハイは落ち着きの中にも気合いがみなぎっているみたいである。
■ フェン To: パオル
 おお、来たか。
これからそりの重量をきっちりと決めるための試験があるからな。
その前に鞭を渡しておこう。
今までの練習では使ってなかったが、この鞭を直線残り20m程度から思い切り入れてやれ。
それまでは他の馬を前に行かせても良いぐらいだから焦るなよ。
練習通りやれば絶対勝てるからな。

 フェンもかなり気合いが入っているのか、口調が熱を帯びている。
■ パオル To: フェン
わっかりましたぁー!('◇')ゞ

 元気よく返すパオル、本当に分かってるのだろうか? 
■ フェン To: パオル
 じゃあ、検量に行こうか。

■ アップル To: パオル
 パオルさん……頑張ってください。

 そういうとフェンとパオルは検量室へと向かった。
そして検量後、フェンに引かれたテン・ハイのパドックでの展示後、本場馬入場である。
パオルが、テン・ハイにまたがって本場馬へと入場するのだ。
ばんえい競馬でも本場馬入場は、騎乗して行うのである。
■ フェン To: パオル
 じゃあ、俺はそりのところで待っているからゆっくり走ってテン・ハイを落ち着かせてやってくれ。
頼んだぞ!

 そして、本場馬入場である。各馬、気合いがみなぎっているようである。
パオルはとりあえず、テン・ハイの気合いをなだめながらそりのところへやってきた。
もちろんそこにフェンが待っている。
■ フェン To: パオル
 よし、いい感じだぞ。
今見た感じだと、2番と8番は最高の出来だな。
1番もいい出来だが、その2頭に比べると少し落ちるだろう。
他は敵にならないはずだ。
レースは8番がとばすぞ。あの馬は坂さえなければ最強だからな。
しかし、坂の後の脚は今一つだ。
それよりも、2番を警戒しろ。
2番が仕掛けたのを見て一呼吸おいてから仕掛けるんだ。
先に仕掛けることだけはするなよ。
先に仕掛けたら絶対に差し返されるからな。

 フェンの見立ては予想と同じみたいである。
■ パオル To: フェン
大丈夫、かならず勝って見せますよ♪
リアン君とフェンさんの為にも、あとみんなの馬券の為にも優勝をします!
(ココで優勝しなきゃ、今まで皆が頑張ってきた事が無意味になるもんね。)

■ フェン To: パオル
 じゃあ、後は頼んだぞ。ゴールの向こうで待っているから!

■ パオル To: フェン、テンハイ
は〜い!(^^)/一番でゴールに飛び込みますよ。

よーしテンハイ、リアン君の為にも最後は優勝して終わろうね♪(^^

 そう言い残して、フェンはゴール地点へと歩いていった。
まもなく、運命のレースが始まる。
結果はまだ誰も知らない。

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