動物と正しく遊ぶには？

　銀の網亭のおやじに教えられたオランのスラムに近い一角に、『古美術取り扱い　リトナル商会』の看板を掲げた店があった。
　今日は休業なのか、店の扉は閉まっている。

　リムリィの声に応えて、中から女性の返答があった。
　すぐに入り口の扉が開かれ、現れたのは、年の頃は20代後半の綺麗な女性。

　依頼人(ミーシア)には見向きもせずに、店内を物色しているコリューン……。

　見つけだした禿げヅラを被って床を転げ回り始める。

　更に禿げヅラの上からモヒカンのヅラをつけ、ヤモリのように壁にへばりつく。
　……毎度の事ながら、どうやっているのかは不明である。
　そしてその体勢のまま、「しゃぁ〜っ」と奇声を上げてチーゼルを威嚇する。

　対するチーゼルも、店内から謎のピコピコハンマー(?)を探しだし、コリューンの頭を殴った。
　ピコン！　と言う間抜けな音が、店にの中に響く。

　首が、絶妙に微妙な角度に曲がっている。お約束である。

　そう言って傾いているコリューンの頭からヅラを取ると、ザックにかぶせる。

　ケラケラとけたたましい笑い声を上げながら、床を転がりまわる。

　パーティーの様子にも動じた素振りは見せず、ミーシアは一行を奧へと案内した。どうやら店の奧が住居になっているらしかった。
　居間と思しき部屋の扉の前で、ミーシアは一行を振り返った。

　ミーシアの雰囲気に少し気押されているようだ。

　チーゼルが扉を開けると、店の様子とはうって変わり、趣味の良い調度品が置かれた居心地の良さそうな居間であった。
　鎧戸が上げられた窓から入り込む光と風が、心地よく冒険者達を包み込む。
　そんな居間の中。ふと視線を下ろすと、床の上に何か大きな塊があった。
　よく見ると、丸くなって寝そべる大人の男。そして、その横ではまるで猫のように丸めた手で顔をこする女の子が。
　その頭の上では、猫の耳がピクピクしている。
　よく見れば、床で寝そべる男のお尻からも、ふさふさの犬の尻尾が……。

　バートン(と思しき男)を避けるように視線を泳がせる。

　違和感があるようでないようで、でもやっぱり違和感にあふれるこの光景に、思わず笑いをこらえている。
　意外と順応性高いのかもしれない。冒険者には重要な資質である。

　ブーツを脱ぐと、おもむろに寝ている男の鼻先に近づけた。

　揺れるブーツに、少女がじゃれついてきた。

　一緒になって、駆け回ったり、転げ回ったり、　犬男の鼻に噛み付いたり。
　なんだ、こいつらは、コリューンと同じタイプの生き物か。

　そういって中に入り、猫娘の喉を撫でようとトライするチーゼル。

　周囲の喧騒など全く見えていないかの如く話し掛けるカヴァレス。
　どうやら、このままでは話しが進まないと思ったらしい。

　ミーシアはそう言って、アニエスの髪をかき分け猫の耳を露出させた。
　どうやらその耳は、頭にはめられたカチューシャから生えているらしい。
　しかし、作り物とは思えないリアルさで、時々ピクピク震えたりしている。
　アニエスは、ミーシアの手に顔を擦り付けゴロゴロ喉を鳴らしている。

　……本当か？(^^;;

　振り向きざまに、カヴァレスはラウルに話し掛ける。
　いつ、ラウルがリーダーに決まったんだろう？

　部屋に残されたのは、冒険者一行と、怪しい生き物３匹……いや、２匹だ。
　すまん、コリューン。