Sword World PBM #29 |
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街道側の森 |
街道を少し外れた森の中───
■ユーリ |
エシル………死んだかな……… |
歩を止め、振り返る。
■ユーリ |
………別に、代わりなんていくらでもいるよ……… |
そうつぶやき、再びオランの方へ足を向けようとする。が、何故か足は動かなかった。
■ユーリ |
………いくらでもいるさ……… |
もう一度つぶやくと、足は動いた。元の進行方向に向き直る。
と───
■男 To:ユーリ |
おい坊や。こんなところを一人で散歩かい? |
■ユーリ |
……… |
取り囲まれている。3人?…いや4人だ。集中力を欠いていたらしい、普段ならこんな小物の気配、近づかれるまでもなく気づくのに………。
■盗賊 To:ユーリ |
へへへ、一人旅は危ないぜぇ。とりあえず、授業料代わりに有り金置いて行きな。それで命は助けてやらぁ。 |
■ユーリ To:盗賊 |
………い。 |
■盗賊 To:ユーリ |
あぁ〜? |
馬鹿にしきったように、剣をちらつかせながら近づ………
■ユーリ To:盗賊 |
うるさい。 |
ごとん
………間抜けな音を立てて、盗賊の腕は地面に転がった。
■ユーリ To:盗賊 |
───って言ったの。耳悪いんじゃない? |
抜きはなった大剣を片手に苛立ったように言う。だが、盗賊は腕を切り落とされた苦痛に絶叫するだけで、聞いてはいないようだ。
残りの3人が殺気立った。
■ユーリ |
逃げろとか言わないからね。むしゃくしゃするから全員殺す。 |
苛々と右足の踵を地面で打ちながら、盗賊達を見回す………
■ユーリ |
神様に祈る時間くらいあげるよ。 |
山奥の療養所 |
その女は、機嫌良さそうに花壇の側に座り、花の手入れをしている。
まだ若い。20をいくばくも超えていないだろう。だが、若さに見合った生気は、彼女からは感じられなかった。白い…というよりも蒼白な肌、やせ細った手足、少なくとも健康そうには見えない。
それもそのはずで、彼女は数年前に病を患い、高名な神官にすら魔法で癒すこともできないと匙を投げられ、この療養所で静かに死を待つ身なのだ。
■?? To:女 |
おや、ここにいたのかね。外には出んようにと言ってあったじゃろうが。 |
老いた白衣の薬師が女の方に近づいてきた。
■女 To:老いた薬師 |
ごめんなさい。今日は、少し気分がいいの、天気だってこんなにいいし……… |
■老いた薬師 To:女 |
やれやれ…無理はしてくれるな。おまえさんのダンナは、わしを信頼して預けていったのだからな。 |
■女 To:老いた薬師 |
………えぇ。 |
女は頬を赤らめて頷いた。
■老いた薬師 To:女 |
エルダーボックスが手に入れば、おまえさんの病を癒すことができるのじゃ。それまでにもしものことがあっては、な。 ………それにしても……… |
視線を女の方から草原の方に移す───
■老いた薬師 To:女 |
………遅いのぉ、ヴィオは。 |
■女 To:老いた薬師 |
大丈夫です。だって、必ず帰って来るって、約束したんですもの。 あの人が私との約束を破ったこと、ないんです。 |
■老いた薬師 To:女 |
………そう…じゃな……… |
銀の網亭 |
依頼を終えて、数日後。
突然、扉が開いた。そこには、足を震わせ、剣を杖代わりにやっとといった様子のアーギーが立っている。
■アーギー To:おやじ |
(苦しそうな顔をしながら) ・・・・・・すみません。 ・・・・・・・その席まで・・・・・ちょっと、肩貸してもらえますか・・・・・? |
■おやじ To:アーギー |
おいおい………大丈夫か? |
そう言って、おやじはアーギーに肩を貸すと、引きずるようにカウンターまで連れた。
■アーギー To:おやじ |
(席に着き、下を向いてしばらく黙った後、おやじの方を向いて) ・・・・あ、おやじさん、スクリューを・・・・。 ・・・・・・・・・・・・一杯だけで、結構です・・・。 |
■おやじ To:アーギー |
おいおいおい……… |
何か言おうとして、おやじはため息をついて言うのをやめた。それから、酒を持ってくる。
■おやじ To:アーギー |
………ほい。 |
■アーギー To:おやじ |
ありがとう。 (薄く笑顔を見せた後、出されたスクリュードライバーを例のごとく一気に飲み干す) ・・・・・・・・ふう。 ・・・・・・・・・・・これが、最後の一杯ですかね・・・・・・・・・・・・・。 |
アーギーはグラスを見つめてしばらく間を置く。ここは待つべきシーンなのだろうと判断したのか、おやじは口を挟まない。
■アーギー To:おやじ |
・・・・・・・これからオレ、故郷の街に帰ります。今日は、それを報告しに来たんです・・・・・・・。 |
■おやじ To:アーギー |
そうか………。理由は、聞かない方がいいか? |
■アーギー To:おやじ |
ハハッ、そんな隠すような理由なんて無いですよ・・・・。 まず今見た通り、足がこの通りのありさまだから休みたいってこと。そしてもう一つは・・・ ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・オレを待ってる大切な人達が、いるから・・・・といったところ、ですかね・・・・・・。 |
■おやじ To:アーギー |
ま…止めはしないさ。 |
すこし考え───
■おやじ To:アーギー |
………そうだな、次に来る時はスクリュー以外の酒も覚えてきてくれると嬉しいな。うちは、酒の種類だけは豊富なんでね。 |
■アーギー To:おやじ |
・・・・・・・・どうかな。 重病人には、酒は厳禁と言う話があるからね・・・・・・・(クスッ) |
そう言ってしばし自分の足を見つめるアーギー。ここでもおやじは、黙っておくべき場面なのだろうと、何も言わずに待つ。
■アーギー To:おやじ |
ん・・・足もちょっとは治まったかな・・・・・。 さてと・・・・・・・。 ・・・・・区切りの一杯も飲んだことだし・・・もう、行きますね。 |
■アーギー(心の声) |
(自分の足に語るように) ・・・・・・あいつらのところに戻るまでは・・・・・・もってくれよ・・・・・・。 |
立ち上がり、ふらふらと扉の前まで行く。
■アーギー To:おやじ |
・・・・・・・。 おやじさん・・・・・・。 もしよければでいいですが・・・・・・。 今回メンバーだった人達がこの後来たら、一言こう伝えといてくれませんか・・・? 「仲間にできなくて、本当にすまなかった」って・・・・。 それだけ・・・・・。 |
おやじは「仲間に『できなくて』」の意味が分からず内心首を傾げたが、素直に頷いた。頷く場面だと思ったからだ。
アーギーは軽く一礼し、扉を開けて出ていく………。
■アーギー |
(店から出てすぐのところで立ち止まり、上を向いて) ・・・・・・さてと。 ・・・・・・・・・・・・・(^^) ・・・・・・帰るか! |
■おやじ |
………まぁ……… |
アーギーの背中を見送りながら、おやじはぽつりとつぶやく。
■おやじ |
………冒険者ってのも楽な仕事じゃない………こうやって、みんなやめていくんだ。 |
辺境のマーファ神殿 |
■女司祭 To:マリエル |
マリエル………。 |
辺境の村の小さな神殿。このあたりでは、マーファは農業の神として祀られている。マリエルはこの村で生まれ、この村で育った。
そして帰ってきた。
■女司祭 To:マリエル |
話、聞いたわ。 |
■マリエル To:女司祭 |
………ごめんなさい……… |
5年前、母親代わりになってくれていたこの女司祭の反対を押し切って、冒険者になったのはマリエルの方だ。だが、帰ってきてしまった。
■女司祭 To:マリエル |
どうして謝るの? |
■マリエル To:女司祭 |
………ごめんなさい……… |
■女司祭 To:マリエル |
もう、いいから…。 |
抱きしめられ、子供をなだめるように頭をなでられる。その腕の中で、マリエルはただ子供のように泣いた。