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「魔術師の塔」 |
オランよりエレミアに2日ほど行ったところに、周囲を森に囲まれた 塔があった。
いつもは訪れるものもほとんどない、魔術師の塔だが、 その日は違った。
塔の1室で、2人は机を挟んで向かい合い、話をしていた。 1人は50代半ば、もう1人は20代半ばと思われる男性である。 よく見れば、顔や雰囲気が似てる事から、2人が親子である事が見て取れるだろう。
■エイル=D=ムーン To:ロッド=D=ムーン |
―――と、言うわけでだ。お前を呼んだのは他でもない。 盗まれた杖を取り戻して来て欲しいのだ。 |
中年の方の男が、若者に言った。
■ロッド To:エイル=D=ムーン |
事情はわかりました。ですが、その盗賊の行方に心当たりはあるんでしょうか? まさか、この広いアレクラスト大陸を、あてもなく探す訳にはいきませんからね。 |
父に対すると言うよりは、師匠に対するような口の聞き方である。
■エイル=D=ムーン To:ロッド=D=ムーン |
それは心配しなくても良い。 遠見の水晶を使ったところ、杖は”ルーイェン”にある事がわかっている。 盗んだ男の風貌も映し出されたので、特徴を書きとめておいた。 これがあれば、すぐに捕まえられるだろう。 |
エイルは1枚の羊皮紙をロッドに手渡した。
羊皮紙には(上手い)似顔絵の他に、箇条書きで男の身体的な特徴が 書かれている。
ロッドはざっと目を通すと、再び視線をエイルに向けた。
■ロッド=D=ムーン To:エイル=D=ムーン |
・・・・・・そこまでわかっているのなら、話は簡単そうですね。 相手はただの盗賊。私1人でもなんとかなるでしょう。 今からルーイェンに行って来ましょう。 |
ロッドは席を立ち、荷物をまとめると階段を降りようとするが、 ふと何かを思い出したかのように立ち止まり、エイルを振り返った。
■ロッド=D=ムーン To:エイル=D=ムーン |
―――それから・・・何かあった時の盗賊の命は保証出来ませんが、 構わないでしょうね? |
エイルににっと笑って答える。
■エイル=D=ムーン To:ロッド=D=ムーン |
杖さえ戻れば、盗人の命なんぞ構わない。 そうだ!ほとんど無傷の状態なら、高く買い取ってやってもいいぞ。 |
■ロッド=D=ムーン To:エイル=D=ムーン |
それは無理ですね。 ルーイェンから、ここまではどんなに急いでも1週間はかかります。 たとえ死んだときに無傷でも、ここまで運ぶ間に痛んでしまいますよ。 |
冷静に返されて、少しエイルはむくれた。
■エイル=D=ムーン To:ロッド=D=ムーン |
・・・冗談だよ。 そんな事は私だって知っている。 |
■ロッド=D=ムーン To:エイル=D=ムーン |
そうでしたか。 あなたの事ですから、本気かと思いました。 |
冗談とも本気ともつかない会話の後、ロッドは塔を去っていった。
しばらく、エイルは塔の上から息子を見送っていたが、ロッドが森に隠れてしまってから、 とんでもない事に気がついた。
■エイル=D=ムーン |
あっ!大事な事を忘れてた。 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・まぁ、いいか。何も起きないだろ。 |
エイルの言葉の意味は不明だが、これがおよそ1ヶ月前の出来事である。
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