SW-PBeM Scenario #21
子供達は夜の住人
後日談……

あの人は今

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オラン郊外  エレミアへの街道

 静かに雲が流れる。
 手綱を軽く握り、荷馬の歩むに任せる穀物を積んだ荷馬車。
 背中に楽器を背負い、鼻歌を歌いながら歩む吟遊詩人。
 そんな旅人の中に、ジョージの姿があった。

「仮面ラーダの活躍によりオランの危機は去った。
そして、仮面ラーダも信頼する仲間達にオランの未来を託し、
新たな戦いの地、エレミアへと去っていくのであった。

究極神官 仮面ラーダ      おわり

 一人エピローグの余韻に浸っていた。
 或いはそれは、淋しさを紛らわす彼なりの方法だったのかも知れない。

「エレミアに到着した仮面ラーダを待っていたのは安息の日々ではなかった。
迫り来る悪意の砂漠からの刺客! その凶刃が仮面ラーダを狙う!

次週新番組 絶対神官 仮面ラーダRX
「変身! オレが噂の仮面ラーダRX!」にラーダブラスト!!

  :
(本当に狙われたら、たまったものではないですね……。)

 不思議そうに、自分を見つめる顔に気付き、恥ずかしげに顔を伏せると歩調をあげるジョージ。
 エレミアは、まだ遠い……。


ネイハイス邸  執務室

 オブライン・ネイハイスは、男の報告をじっと耳を傾け聞いていた。
 オランの裏世界でも名の知れた老盗賊は、過去を忍ばせる鋭い目つきで、その男を見つめていた。
 全てを語り終えた男が、手にしたグラスから一口火酒をあおった。
 男の名は、ディラン・ザイレルという……。

「なるほど。またお前に世話になったな。
それにしてもバートンの奴め、やはり全ては奴が元凶だ!」

 オブラインは、手にしたグラスを割らんばかりの勢いでテーブルに置いた。

「親父さん、そういきりなさるな。
アニエスお嬢ちゃんも無事だったんだから、良しとしやしょう。
ミーシア嬢さんのあの幸せそうな顔が見られただけで十分ですよ」

「……すまんな。わしの跡継ぎは、ミーシアを娶らせてお前に、と思っていたのに」

「なに、構いません。
俺としても、今の自由な立場は嫌いじゃありませんからね。それに、お嬢さんはその決められた道が嫌だったんでしょうよ。
……すべては、お嬢さんが決めたことです」

「ディラン……」

 時は戻らない。
 それは分かっていたことである。
 とはいえ、それだからと言って胸をよぎる痛みが無くなるわけではない……。
 ……しかし、ディランの脳裏に一人の女の顔が浮かんだ。

(俺が本気になった? ……まさか、な)

「ん? 何か言ったか?」

「いや、何でもありませんよ。
それよりも、今回の件、親父さんの依頼通り、ミーシア嬢さんにばれないようにしたつもりですが……。」

「まあ、勘のいいあいつのことだ。
薄々感づいてはいるかもしれんな。
まあ、それでも仕方がなかろうて。しかし、こんな事はもうこれっきりにして欲しいものだな」

「それと、ガノンにも。
今回は、あいつの流儀に反するようなことをしてしまいましたからね。
親父さんの方から、一言詫びをいれてやってください」

「ああ。わかった。
それと、その盗賊君、ヴァーンとか言ったか? そいつにもいずれは何か礼をせんとな」

 静かに、夜は更ける。
 ここにもまた、子を思う親が一人。
 そして、優しき盗賊も……。


オランの街  詰め所

「ほら、ルヴァク、行くぞ!」
「待ってくれよ、旦那!」

 事件の報を受け、詰め所を飛び出したストレイドに続いて、ガタイのいい男が後を追った。
 現場では、傷を負った男が一人の老衛視に話をしているところだった。

「コミナさん、どうです?」

 コミナと呼ばれた老衛視は、顔を上げると、

「ガウヴィ! ストレイドの坊やに詳しい話をしてやれ。ファバック! 聞き込みは済んだのか!」

 コミナに呼ばれ、二人の男が近寄ってきた。

「あ、兄貴! 久しぶりです!」
「兄貴! お元気そうで」

 二人は、ルヴァクを認めると破顔して挨拶した。

「ほらほら、話は後だ。仕事仕事。ほら、元『紅い煙』の頑張り見せてくれよ」
「旦那ぁ、その呼び方はやめて下さいよ」

 ストレイドに笑いながら促され、三人はてきぱきと自分の仕事を始めた。


オランの街  路地

 この辺りの名物である、リファの大声が響きわたる。
 相手は、やはりいつもの通りベントとルーファス。

「またアニエスにちょっかいかけて! そんなに遊びたいなら、一緒に遊んであげようか?」
「うるせえ、ブス! 誰も、お前達となんか遊んでやらねぜ!」
「なんですって!」

 平和な午後が、こうして過ぎて行く……。


リトナル商会  居間

「おかあさん、あたし冒険者になる」

 突拍子もない台詞に、食卓での会話がいきなり止まった。

駄目です!
偉いぞ!

 相反する両親の答え。
 どちらがどちらの物かは言うまでもないだろう。

「なんで? あたしを助けてくれたお姉ちゃんみたいに、今度はあたしがみんなを助けてあげるの!」

 ミーシアの苦労は、ますます増えるばかりである。

(でも、こんなに楽しそうなアニエスが戻ってきてくれたんだから。
こんな苦労が出来るって事もまた、幸せなのかしらね)

「よし、それならば、今から特訓だな!」

 無言で夫の脇腹に肘鉄を叩き込みながら、やはりこんな苦労はしたくないと思うミーシアであった。

終幕


おまけ

 ジョージがオランを去って数ヶ月。
 アーギー、パオル、ヴァーン、ドリス、ラクル、シェル、アルト、フェリオ、おやじ、女将さん。彼がオランで関わったすべての者達に、こんな手紙が届けられた。

 まず最初に、何の挨拶もなく立ち去った非礼をお詫びいたします。

 こうして目を閉じると、オランでの皆さんとの冒険の日々が
 昨日のことのように蘇ります。

 私の方は無事エレミアに着き、
 現在、神殿でアトラクションの仕事をやっております。
 オランに比べると小規模なものですが、
 エレミアにお立ち寄りの際は是非お越し下さい。

 皆様のお仕事の方はいかがでしょうか?
 冒険者は危険な仕事も多いので充分おからだには気を付けて下さい。

 それでは………
 彼方の地より、
 皆様のご繁栄と安全……そして、再び会えることを祈って……。

   P.S. 冒険者の仕事もまだ続けております。
    それと、カーン砂漠には近づかない方がいいです。
    シャレになりません。



 几帳面な字で書かれた手紙に同封されていたものは、絶対神官・仮面ラーダRXアトラクションのチラシ。
 落ち込むこともあるけれど、ジョージは元気なようです。
 

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