招かれざる者達
スラム 倉庫の中 |
一切の明かりの侵入を拒んでいた倉庫の中はかなり暗く、扉から差し込む明かりだけでは、奥の方までははっきりと見えなかった。
まず目に入ったのは、倉庫の中にうち捨てられた机やベッドと言った家具。そして、そこに座る6人の子供達。
そして……倉庫の中心部には、一人の男性が縛られて転がっていた。
芋虫のように、上半身を縄でグルグル巻きにされた男は、扉が開けられたことに気付くと、精一杯顔を向け、叫んだ。
■ 男 To:おおる |
おおい、誰だかしらんが助けてくれ! こいつら、ただのガキじゃねえ! |
男の声に反応したのか、数人の子供が、パーティーたちの方を見た。
■ パオル To:ALL |
キョロ((・_・ )( ・_・))キョロ ……………………………………………………。(−− ハテ? どーも場所を間違えたみたいですね。隣の倉庫じゃないんですか? |
■ シェル To:おおる |
……あれ? 縛られてるのは大人の方? どうなってんの? |
予想外の展開に付いていけず、目が点になった。
■ ヴァーン To:芋虫男 |
…………………………………………へっ?! おい、てめぇ…………なぁ〜んで転がってんだぁ? (こいつは一体どういうこった……?) |
そう言いながら、男の顔と子供たちの顔をすばやく確認する。
しかし暗いために、人数はともかく顔までははっきりと判別できない。
■ フェリオ To:芋虫男&待機班 |
こりゃ、どういうこった……。 と、とにかく、助けてやるから質問に答えろ! まず、お前がリュースか? 次に何で捕まってる? それから子供達はこれで全員か? 最後にこの子供達はどう「ただのガキじゃねえ」んだ?
おい、ジョージ! 様子がおかしい……縛られてんのは子供じゃなく男の方だぞ。 |
スラム 倉庫の前 |
■ アルト To:ジョージ |
……何だか中の様子が変だね。 男が縛られてるって、何か罠があるってことかい? …………どうする?リーダー。 |
周囲を見回して警戒しながら、ジョージの意見を求める。
■ ジョージ To:アルト |
とりあえず、言われたとおり周囲の不審人物を捜索しましょう。 向こうの方を御願いします。 |
アルトへ指示を出し、自分はその反対方向へ向かった。
不審人物の捜索と周囲の警戒を行ったが、変わった様子はない。
■ アルト To:ジョージ&ディラン |
了解。 …………と、ディラン。あんたはここでこのまま見張っててもらえるかい? |
■ ディラン To:アルト |
分かったが……一体全体どうしたっていうんだ? |
■ アルト To:ディラン |
さぁ……? 私にもさっぱりだよ。 子供が縛られてないなら、さっさと助け出せば良さそうなもんだけどね? まぁ、とにかく今はここを見張っとくのが私たちの役目、ディランもしっかり警戒頼むよ? |
ジョージに指示された方向を調べに行ったが、やはりこちらも収穫はない。
■ ディラン To:アルト |
?? とにかく、警戒を怠らなければ良いんだな。 |
スラム 倉庫の中 |
■ リュース To:フェリオ |
何で俺の名前を知ってるんだ!? いや、今はそんなことどうでも良い! とにかく助けてくれぇ〜! |
その時、奧から一人の少女がフェリオ達に近づいてきた。
暗がりから徐々に現れた顔は……アニエス。
■ アニエス To:おおる |
お兄ちゃん達も、あたし達と遊んでくれるの? |
そう言って、にっこりと微笑む。
バートンの絵よりも可愛い言うセリフにも納得出来るほど、可憐な少女だった。
■ フェリオ To:リュース&アニエス |
だ・か・ら、助けてやるから状況を教えろって言ってんだろが! もっかい聞くが、ただのガキじゃねえってどういう意味だよ?
っと、君は……。 |
■ シェル To:アニエス |
アニエスちゃん!? ……よかった、無事だったんだね。 でも、捕まってないのになんで逃げなかったの? |
■ アニエス To:シェル |
捕まる? 逃げる? よく分からないなぁ。お兄ちゃん、何を言ってるの? |
スラム 倉庫の前 |
■ ジョージ To:中の人 |
周囲半径50mくらいには怪しい人物は見あたりません! |
スラム 倉庫の中 |
■ フェリオ To:待機組 |
こっちはアニエスを見つけた……が様子がおかしい。 よくわかんねえけど……なんかヤバそうだ……。 |
■ リュース To:フェリオ |
スラムをうろついてたら、このガキに声掛けられて、気が付いたらここにいたんだ。 俺にも何がなんだか……。 |
■ シェル To:リュース |
え!? じゃあ、この子達にそういう風にされたの? |
■ アニエス To:フェリオ |
そんなこと、どうでも良いじゃない。 お兄ちゃん、名前は? 教えてくれないと、悪戯しちゃうよ(笑) |
そう言ってアニエスが何事か呟くと、急にフェリオは、自分の鎧が重くなったように感じた。
■ フェリオ |
(うっ!? ……何だ……これは……) |
■ パオル To:アニエス |
ふむ……君がアニエスさんだね。 ボクらは君の両親に頼まれて、君を探していたんだよ。 君の両親もとても心配しているから、今すぐお家に帰ろう? |
……ケイトに何か頼まれてたはずだが……。
リュースは無視らしい……。
■ フェリオ To:パオル&アニエス |
ちょい待て、パオル……なんかおかしいぜ? 急に鎧が重く感じるようになった……リュースの言うようにこの娘は普通じゃねえ……魔法か何かを使ってくる。 ……俺の名前はフェリオだよ、可愛いお嬢さん。 ところで……これが君の言った悪戯かい? だとしたら随分と面白い事が出来るんだな。 よかったらどうしてこんなすごい事が出来るのか教えてくれないか? |
■ シェル To:フェリオ&パオル |
う〜ん、よくわかんないけど、なんか不自然な気がする。 ……ちょっとしらべてみるよ。 |
子供達の精霊力を調べると、なんとアニエス以外の子供からは、生命の精霊が感じられなかった。
負の生命力も感じられず、どうやら魔法生物の様な感じである。
アニエス(とリュース)からは普通の生命の精霊力が感じられた。
■ シェル To: パオル&ヴァーン&フェリオ |
みんな! アニエスちゃんは問題ないよ。 でも、他の子供達は……生きてもいないし、アンデットでもない……魔法生物なんだよ! |
■ ヴァーン To:パオル&フェリオ&シェル |
(ちぃ、なんだかいや〜な感じだぜ……首筋がちりちりしやがる……それに暗すぎるな……) おい! ジョージ! どうも暗くていけねぇや、窓あけるぜ! |
窓の前に移動し、開けようと試みた
しかし、鍵が掛かってるわけでもないが、何故か窓は開かない。どうやら、魔法の力で鍵が掛けられているらしい。
#ついでに言うと、扉にもロックがかかっていた。蹴破られれば意味はないのだが。
■ ヴァーン |
ちっくしょー! なんだよ、開かねぇじゃねぇかよぉー! |
スラム 倉庫の前 |
■ ジョージ To:アルト |
窓の方には私がついておきます。 アルトさんとディラン君は中から要請があったときに、いつでも突入できるようにしておいてください。 |
未だ中の様子が理解できていないジョージは、取り敢えずヴァーンが窓を開けてくれるものと信じ、その前で待機。
■ アルト To:ジョージ |
おっけー、こっちはいつでも準備万端だよ。 |
そうは言われてみても、窓は一向に開かれない……。
スラム 倉庫の中 |
フェリオのセリフに、嬉しそうに笑うと、
■ アニエス To:フェリオ |
遊んでくれるの!? じゃあねえ、とっておきを見せてあげる! |
そう言うと、再び何か呪文を詠唱しはじめた。
フェリオには、何処かで聞き覚えのある旋律。自分の使う神聖魔術とは同一にして対の呪文。暗黒魔法であることに気付いた。
■ フェリオ To:アニエス |
その詠唱は…………暗黒魔法!! くぅっ……何だってそんなもんを……。 目を覚ませ、アニエス!一体、どうしてこんな事が……。 |
必死に抵抗を試みたが、それ以上に強大な魔力がフェリオを襲った。
不快な感覚に襲われ、突然体内に生じた毒素によって苦しげな息を吐くフェリオ。
■ アニエス To:フェリオ |
もし、お兄ちゃんが強ければ、助かるかもね。 面白い賭けだよね。 |
■ フェリオ To:アニエス |
くっそ! やってくれるじゃねえか! 君は……いや、お前……一体何者だ? |
フェリオの目に、蒼く光るアニエスのネックレスが映った。
■ フェリオ |
(なんだ? あのネックレスは? ……光ってる?) |
■ パオル To:アニエス、フェリオ |
……………………………………………………。(−−; (やれやれ…………二人ともボクは無視ですか……。もし、もーし! 二人の世界へ入ってるんですかぁ〜。大体……アンコクマホウって何かのお菓子?) あの……二人して何やってんですか? |
緊迫した情勢を理解できていないのが、ここに約一名。
餡子熊包。。。確かにお菓子っぽいかも。
■ フェリオ To:パオル&オール |
この娘はまともじゃねえ、さっきから俺に魔法を使って攻撃してきてるんだよ! それも邪神の信徒にしか使えない暗黒魔法でな。 はっきり言ってこの娘は危険だ、みんな気を付けろ! |
■ シェル To:おおる |
そんな……! アニエスちゃん以外の子供達が魔法生物だけじゃなくて、アニエスちゃんが邪神の使徒!? ……フェリオ、パオルさん! アニエスちゃん以外の子供もボクらに向かってくるかもしれないから、気を付けて! |
■ アニエス To:シェル |
みんなとも遊びたいの? なら……。 |
他の子供達が、ゆっくりと立ち上がり、冒険者の方に向かった。
その間にも、フェリオは徐々に生命力が抜けていくのを覚えた。
■ パオル To:アニエス、フェリオ、シェル |
……………………………………………………はぁ。(−−;; (また無視か…………やれやれ。遊ぶ前に一緒に家に帰ってもらいたいんだけど……。遊びに付き合わされてるフェリオさんも大変だね。 でも、まともじゃないって…………どーゆう事なの? 偽者って事?) 危険って言われても…………彼女は本物じゃないんですか? ボクには何がなんだかサッパリなんですけど…………。 |
フェリオが大変そうなのは理解(?)したようだが、まだよく分かってないらしい。
スラム 倉庫の前 |
■ アルト To:ジョージ |
……何だか、さっきから中が随分賑やかだねぇ? 暗黒魔法がどうとか言ってるけど、一体状況はどうなってんだい……。 ……リーダー、ちょいと様子を覗きに行って来るから、悪いけどここを頼むよ。 |
■ ジョージ To:アルト |
交渉が難航しているのでしょうか? ええ……わかりました。 くれぐれも犯人を刺激しないで下さい。 |
こちらも、まだ状況を理解していない者。どうやら、まだ誘拐だと思っているようだ。
アルトは、ジョージの肩を軽く叩くと、入り口に向かってゆっくり歩き始めた。
と、ちょうどそこへ中からシェルの声が。
スラム 倉庫の中 |
■ シェル To:待機班 |
(しまった!) みんな、中に来て! |
スラム 倉庫の前 |
■ アルト To:ディラン |
シェル?! ……何かあったみたいだね。 ディラン、あんたも一緒に来な! |
■ ディラン To:アルト |
全く強引だな。 そう言うところも嫌いじゃないが……。 |
入り口近くにいたディランの腕を掴むと、そのまま中へと駆け込んだ。
■ ジョージ |
(何かあったのでしょうか? こうしては居られません……準備しなければ……。……と……ここではマズイですね……とりあえずあそこに入りましょう。) |
ジョージは、周囲を見回し誰も居ないことを確認すると、隣の空き倉庫に駆け込んだ。
スラム 倉庫の中 |
子供達は、ゆっくりと冒険者達に向かってきた。その様子を後ろから眺めるアニエス。
外見から、行方不明になった子供達の情報と照らし合わせると、どうやらユリアとボッソ以外はここにいるらしい。
■ アルト To:ALL |
……っつ……これは一体…………? |
■ シェル To:アルト&ディラン |
アルトさん、ディランさん、気を付けて! アニエスちゃんは見つかったけど、つれて帰るどころか、フェリオがアニエスちゃんに魔法で攻撃されてるんだよ! 後ろから来る他の子達も、生命の精霊が働いていない魔法生物みたいなんだ! |
■ フェリオ To:シェル&アルト |
それだけじゃねぇぞ…………この娘が使ってるのは暗黒魔法と俺には訳わかんねぇ魔法だ! さっきから痛みがひかねえし、鎧も重く感じる…………。 アニエスがこんな魔法を使えるなんてどう考えてもおかしいぜ。
アルト! あのアニエスの首にかかってるネックレスは何だかわかるか? |
■ アルト To:フェリオ |
ネックレス? …………なるほど、あれだね。 了解、任せときな。 |
■ アニエス To:おおる |
面白くなってきたね。みんな、お兄ちゃん達と遊んでおいで! |
■ パオル To:アニエス |
ねぇ……それよりさ、一度お家に帰らないかな? 君の両親が待ってるよ? |
……そろそろ状況認識が出来ないと危険だぞ。
■ アニエス To:パオル |
パパとママ? そっか……じゃあ、パパとママも仲間にしてあげようっと。 その前に、お兄ちゃん達もそうしてあげるね。 |
■ ヴァーン |
なんでだよぉ、なんでこの窓開いてくれねぇんだよぉ?! |
……それはもうどうでも良いから……。