冷たい夜……
オランの街 スラム |
■ 衛視B To:おおる |
どうした! こ、これは!! |
■ 衛視C To:おおる |
お前達がやったのか? |
■ ジョージ To:衛視ズ |
ちょっと待って下さい……話は後で聞きます……。 (……神よ……大いなるラーダ……今一度、彼の者に生命の力を……) ………………。 |
ジョージは、Cの隣りにしゃがむと、手をかざし呪文を唱える。
外傷は完全に消えたが、失われた命は戻らない。
■ ジョージ To:カツアゲマンC |
…………傷は……ラーダ様の力で完全に治ったはずだ…………。 ……でも……行ってしまった……魂は…………もう……いないんだ……。 ………………。 …………間に合わなかった…………。 ……あまりにも……あっけなさ……すぎる…………。 |
スラムの狭い路地から覗く夜空を見上げて、肩を落とす。
■ パオル To:ジョージ |
だ、駄目なんですか? 彼は……助からないんですか!? 嘘でしょ! ジョージさん、嘘ですよね!! 嘘って言って下さいよ!!! |
■シェル To:カツアゲマンC |
……………………。 (ダメ……生命の精霊力が感じられない……この人はもう……) |
がっくりとうなだれ、黙ったままうつむいてるジョージの肩を、年老いた衛視が軽く叩いた。
優しげな笑みを浮かべた老衛視は、労るように声を掛けた。
■ 衛視A To:ジョージ |
もう、手遅れじゃよ。 ……こいつらは、「紫の煙」の真似してイキがってたやつらじゃな。 中途半端なハッタリをかますからこんな目に遭うんじゃよ。 さて、最近この辺りも物騒でな。詳しい話は、詰め所で聞きたいんじゃが、一緒に来てくれるか? |
■ アルト To:衛視A |
「紫の煙」? …………それで腕にバンダナを…………。 |
暫し考え、アルトは、ちんぴらCの横にかがみ込み、腕からそっとバンダナを外した。
■ ジョージ To:衛視A |
(うなだれたまま) ………………わかりました……今……行きます……。 彼(カツアゲマンC)を御願いします……どこか……綺麗な場所へ……。 もう……誰も彼を…………これ以上傷つけたりはしないように……決して…………。 |
立ち上がり、聖印をきると、声には出さずにラーダ神への聖句を唱えた。
■ パオル |
なまじに剣に頼ったから……取り返しのつかない事を……してしまったんだ。 |
ガックリと肩を落として、その場に垂れ込む。
■ アルト To:パオル |
…………パオル……。 今は無理かもしれないけど……元気、出しなよ。 剣ってのは人を殺すことも出来るけど、生かすことだって出来るもんさ。 頼らなきゃいけないのは剣や力よりも、自分の信念、ってやつだろう? なくしたものは戻ってきやしないけど、パオルならそれを生かすことだって、出来るよ。 |
■ パオル |
……………………………………………………信念ですか……。 …………ボクには……ボクの信念があるのか…………分からないです。 |
■ 衛視A To:ジョージ |
抵抗しないなら、そのままついてきてくれんか? 辻斬り騒ぎや行方不明事件など、最近はこっちもピリピリしていてのう。 |
困ったように、しかし有無を言わさぬ雰囲気で、衛視が促す。
■ ジョージ To:パオル |
君のせいじゃありませんよ……私があの時止めていればこんな事には…………。 全て…………私の責任です。 |
眠っているヴァーンを起こしに行く途中、パオルにそっと呟いた。
■ フェリオ To:カツアゲマンB |
…………ふぅ……!&!&!# …………親愛なる我が神チャ・ザよ……人々に幸運をもたらす神よ……その大いなる御心をもってこの者の傷を癒したまえ……。 |
フェリオの呪文で、ちんぴらBの傷は完全に癒された。しかし……。
同じく呪文を受けてももう目を開けることのないC。フェリオの胸にも、深い影を落とした。
■ フェリオ |
…………生きている人間なら癒せるのにな。 人が死ぬってのも、あっけねえもんだ……。 運が……悪かったな……。 ……チャ・ザよ……彼の者の魂に安らぎを……。 |
■ アルト To:カツアゲマンD |
…………あんたの仲間の形見だよ。 こんな事になって、すまなかったね。 |
そう言ってアルトは、Dの手に先程のバンダナを握らせた。
■ D |
…………おおおぉぉぉぉぉぉ! |
叫び声のような泣き声が、夜のスラムに木霊した。
■ 衛視A To:他の衛視 |
さて、このちんぴら達には縄をかけとけ! |
老衛視の指示で、ちんぴら三人に縄かけられた。
リーダー格の男も観念したのか、うつむき口を開こうとはしなかった。
■ ジョージ To:ヴァーン |
(ヴァーンを揺さぶり起こす) ……ヴァーン君、起きて下さい。 とりあえず……終わりましたよ。 |
■ ヴァーン |
ん……が……はっ! ――と、勢いよく立ちあがってから、頭を抱えてへたり込んで―― ぐぅ〜、あったまがガンガンする……うぅ〜。 |
■ アルト To:ヴァーン |
あー……おはようヴァーン(^^;; 目覚めは……悪そうだねぇ。 魔法の狙いがちょいとずれたみたいでさ、巻き込んで悪かったよ。 これからまた少し移動するらしいけど、歩けるかい? |
■ ヴァーン To:アルト |
いや、まあ、俺の根性がち〜と足りなかっただけだから、いいんだ、気にしないでくれよ。 ――と、立ちあがろうとして、わざとらしくよろけてみせて―― う〜、まだフラフラするみてぇだ、すまねぇけど、肩貸してもらえっかなぁ? |
■ アルト To:ヴァーン |
ん? あぁ、肩くらいならいくらでも貸すよ。……でも、ホントに大丈夫かい? 何なら、リーダーかフェリオにでも診てもらった方が……。 |
■ ヴァーン To:アルト |
へへ、すまねぇなぁ。なあに、すぐ治っちまうと思うから、わざわざあいつらに見てもらうほどのこともねぇんだがな。 |
アルトに見えないように、フェリオに向かってVサインをして、にやっと笑って見せる。
■ フェリオ |
お〜お〜、上手い事やるねぇ……俺も寝てりゃ良かったかな? |
■シェル To:アルト&ヴァーン |
ヴァーンさん、大丈夫? ボクも手伝うよ でも、ヴァーンさんがこんなになるなんて、アルトさんの魔法ってすごいんだね。 |
■ アルト To:シェル |
まぁね。 ……って、本来こんな状態になる魔法じゃないはずなんだけどさ。体質ってやつかねぇ……? んじゃ、悪いけどシェルは向こうから支えてもらえるかい? |
促され、アルトの反対側からヴァーンを支えた。
■ヴァーン To:シェル&アルト |
おおっと、こいつはすまねぇなぁ。ハハ、ハハハ…………。 (ちぃ、野暮なことしやがるぜ(>_<)…………) |
■シェル To:ヴァーン&アルト |
なにいってんの。こういう時の仲間でしょ?(ニコニコ) ねぇ〜、アルトさん(^^) |
ヴァーンの心の声はシェルには届かなかったようだ。
■ アルト To:シェル&ヴァーン |
そうそう。 これくらいならお安い御用だよ(^^) |
■ フェリオ |
……くくっ……くっくっくっ……。 (パオルやジョージと比べてこいつらは平和だねぇ……) |
フェリオも、含み笑いをして、残念そうなヴァーンの顔を眺めながら詰め所へ向かって歩き出した。
スラム 詰め所 |
冒険者達は、取調室のような一室へ通された。
■ ジョージ To:衛視A |
私がこの6名の代表で、ジョージ=マクドヴァルと申します。 全面的にそちらの捜査に協力する次第です。 この事件について何かご質問があれば私がお答えさせていただきます。 |
■ 衛視A To:ジョージ |
わしは、コミナじゃ。よろしく。 まあ、単刀直入に聞けば、何故あんな時間にあんな場所であんな騒ぎを起こすハメになったのか、と言うことじゃ。 奴らは、あの辺りを縄張りにしているから分かっておる。そして、奴らが君たちに、なにをしようとしたかもな。 じゃから、ある意味では、あれが正当防衛であると言うことは認めよう。 しかし……。 |
■ ジョージ To:コミナ |
我々は、スラム近くの骨董品商リトナル商会の主人、バートン=リトナル氏から行方不明の娘さんの捜索を依頼され、本日の昼から、情報を集めておりました。 娘さんと共に最近行方不明になっている子供達がスラム街で目撃されたという情報が得られましたので、日も落ちていましたが何もしないよりは少しでも行動した方が良いだろうと思い、スラム街を捜索していた次第です。 |
■ コミナ To:ジョージ |
ふむ。 しかし、いきなりそう言われてものう。 |
■ ジョージ To:コミナ |
…………そうですね……何か……証明できる物…………。 ……そういえば確か、仲間の1人が捜査中に立ち寄った詰め所で、衛視の方から証明書らしき物を受け取ったような気がします。 それと、その衛視の方に渡してしまったかも知れませんが、依頼人のバートンさんに官憲の方宛に捜査協力していただく旨の紹介状を書いていただきました。 ……まあ、直接リトナル商会の方に問い合わせてもらってもかまいません。 …………そこで、おねがいなのですが、我々は先ほども申しましたとおり、依頼人の娘さんを捜索しなければなりません。 あなた方の捜査を信用していないわけではありませんが、行方不明になっている子供達をできるだけ早く発見して親元へ返して差し上げたいと思います。 できましたら、誠に勝手とは思いますが、先ほどの話の確認が取れ次第なるべく早く釈放していただけないでしょうか? |
■ フェリオ To:ジョージ&コミナ |
ああ…………バートンの手紙なら官憲で見せたやつを持ってるぜ。 え〜〜っと…………ああ、これだこれだ、ほいよ。 |
懐から、バートンの書き付けを取り出すと、コミナに渡した。
■ フェリオ To:シェル |
後、別の詰め所でストレイドって奴に貰った証明書は……。 おい、シェル、お前が持ってたろ? どこやった? |
■シェル To:コミナ |
え〜と(ゴソゴソ)、これだね。はい。 |
同じく、ストレイドから借り受けた許可証をコミナに見せる。
■ コミナ To:おおる |
なるほど、あの若造の知り合いか……。 なら良いじゃろう。 しかし、その格好で夜中にこの辺りをうろつかれると、それだけで余計な厄介事が増えそうなんでのう。 すまんが、今日はここで休んでもらえんか? |
■ ジョージ To:コミナ |
申し訳御座いません。ご厄介になります。 |
■ ヴァーン |
………………。 (まぢかよ、今までとっつかまったことなんてねぇのが自慢だったのによぉ〜………… |
■ コミナ To:パオル |
君の服も、こっちで用意しよう。 そのなりでは、まずいじゃろう。 |
■ パオル To:コミナ |
……スミマセン……。 |
パオルの服や鎧には、まだちんぴらの返り血が飛び散っていた。