ローンドファルが銀の網亭を辞してからも、6人の宴会は続いたようだ。
カナルにおごったのを皮切りにシーアンにまでたかられそうになっているクロス、それを目敏く見つけて料理の追加注文をするアフル、お腹がいっぱいになって満足げに目を細めるマーズ。
それぞれ思い思いに今回の仕事を振り返っている。
彼らがこの初仕事の代償として得たものは何だったのだろうか。彼らの話を聞いてみよう。
■銀の網亭 |
☆From:アフル |
母さん達が言ってた初めての冒険(ちなみにゴブリン退治(笑))とは少し違ったけど、無事依頼も果たせたし、冒険者として、まずまずのスタートを切れたんじゃないかなぁ。 これからも頑張って、母さん達を超えるような冒険者になるぞ。 |
裏表のないアフル。依頼主の年寄りを怒らせたりもしたけれど、それが彼の良いところなのだ、きっと。
■銀の網亭 |
☆From:カナル |
全く、最初の仕事からひどい目にあったもんだ。留置所に寝泊まりしたり、馬鹿な貴族相手に気を遣わされたり、あんなに大人数の敵と戦闘する羽目になったり。 まあ、これで貴族に幾ばくかのコネが出来たと考えれば、結果オーライということにしておくか。 |
アフルと反対に裏表のありすぎるカナル。でもギャンブルにはいつだって真剣勝負だ。辻賭けでは負けたが自分の命をチップにした賭けには勝った。これで1勝1敗か?
■銀の網亭 |
☆From:マーズ |
いやぁ、初めての冒険でしたから、結構緊張しましたねぇ。でも、皆でホットドッグ食べたり、酒場でパフェを食べたり、エールごちそうになったり、いろいろと楽しかったですよぉ。皆さんもとっても良い方でしたしねぇ。 でも、さすがに最後はどうなるかと思いましたよぉ。あんなに一杯敵さんが出てきましたし。 ・・・・あれ?どうなったんでしたっけ? なんか、殴られたところまでは覚えてるんですけどぉ・・・・・。 まぁ、何にしても皆さん無事だったのでよしとしましょうかぁ。 |
「食欲魔人」の二つ名は伊達じゃない。さてさて、「もう一人のマーズ」にはどんな渾名がつくことだろうか。
■銀の網亭 |
☆From:クロス |
いやー、僕もパーティーで依頼を受けて仕事をするのって、実は初めてだったんですよー。
経験があるのって、シーアンだけだったみたいですけど、なんとかみんな生き残れて、ホッとしてるんです。 周りの何でも使って自分だけ助かろうとか、うまく立ち回ろうとか思うなら僕はそういう技を専門にいくつも身につけてますけど、僕は信頼できる仲間とも一緒に明日へ向かっていきたい……って、
うわ、なんか僕、メチャクチャ恥ずかしいこと口走ってません? |
クロスはエールを1杯飲んで赤くなっている。普段は心の中でつぶやくだけの言葉が口を衝いて出たのもアルコールのせいだろうか。
■銀の網亭 |
☆From:シーアン To: |
俺はみんなと違って、依頼を受けるのは今回が始めてじゃないからなぁ。 まぁ、あんなもんだろ。死人も出ず、たいした怪我人も出ず、上手くやれたと思うぜ。・・・1つ気になるのはとうとう人を殺してしまったってことだな。・・・命を尊ぶよう―――と約束したのになぁ・・・。おっと、これ以上は内緒だ |
シーアンの約束は誰にしたものだろうか?街でひっかけた女の子か、それとも故郷に残した誰かか…
セリスはそんな男達を見ながら、エールのコップを持って幸せそうに微笑んでいる。
夜は賑やかに更けてゆく。
後日、冒険者たちは街のうわさでシャレゼール家のオルダスがラーダ神殿に出家したと聞いた。
アンナの口からオルダス自身が暗殺計画の首謀者であることが明かされたのを受けて、兄弟の父である当主エルクスは息子オルダスの処刑を決意したのだが、それにショックを受けた兄エヴァンスが自らの行いを反省し弟の命乞いをしたため、命だけは助かったとのこと。
キルティングとアンナの努力は報われた。そしてそれを助けた冒険者たちの活躍も何日か人々のうわさに上っていた。
マーファ神の言葉が記憶も新たに甦る。
「和を成さんとする者を護ることは我が歓びである」
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