古美術商「ルーブル」

(1998/03/15 更新)

古美術店「ルーブル」の前には看板が出ている。店は開いているようだ。 近くの路上で、パーティの策謀係を自認するカナルとクロスはこれからの作戦について協議を始めた。

■ルーブルの近く
☆From:カナル  To:クロス
(さて、下手に二人を刺激したくもないが、馬鹿正直に正面から行くだけと言うのも芸がないな。
下手に警戒されて逃げられでもしたらまた面倒なことになるし……)

カナルの視線は、セリス、シーアン、マーズ、アフルと順に顔を眺め、一人思案顔のクロスの所でぴたりと止まる。クロスに近づき、小声で、

■ルーブルの近く
☆From:カナル  To:クロス
クロス、どうする? 探してる二人に警戒されてるとしたら、いろいろと手を考えなくてはならない かもしれないな。

■ルーブルの近く
☆From:クロス  To:カナル
そうですねー。みんなでまとまって正面から行って、裏口から逃げられたりしたら、目も当てられませんよねー。これは今後の方針としても、他の出入り口も押さえとくことは考えておくべきですね。
セリスやみんなにも聞いてみましょうか。

セリスの名前が出たところで、クロスはまた少しだけ渋い表情になる。依頼を受けたときから考えていたことを、また思い出してしまった。

■ルーブルの近く
☆From:クロス
(今回の仕事は調査だものね、まず人を疑うことからはじめなくちゃならない… うちのリーダーにはちょっとつらいことになるかな……)

(でもそれなら、そういう場合だからこそ、まわりの人間が、そして自分が支えなくちゃ。多少の汚れ役は自分がやればいい。みんなにそれと気づかれないように。それがシーフとして生きていく道を選んだ自分の役目だから。)

カナルはクロスの表情の変化から何を悟ったのか……。

■ルーブルの近く
☆From:カナル  To:クロス
(まあ、何に付けてもシーフって言うのは貧乏くじを引くもんだな。親父もよくぼやいてたっけ。
まあ、若いうちの苦労は買ってでも味わえって言うが……俺は嫌だな)

そうだな。取り敢えず裏口と……他にも抜け道の類とかがあったら厄介だな。
最も、そんなものがあっても、今はどうしようもないか。余計な選択肢は入れない方がいいな。
それよりも、当面の最大の問題は、セリスに何ていうか、かな。

■ルーブルの近く
☆From:クロス  To:カナル
きちんと説明すれば、分かってくれますよ。なにも悪いことをしようとしてるワケじゃないんですから。僕から説明してみます。

■ルーブルの近く
☆From:カナル  To:クロス
……まあ、そうだな。なら任せる。

(クロスがやりたいのならいいか。面倒なことは任せよう)

クロスは心を決めたように顔を上げると、全員に向き直って彼の提案を話した。

■ルーブルの近く
☆From:クロス  To:みんなとセリス
(カナルから他のみんなへ向き直って、声をかける)
あの、みなさん、一つ提案が有るんですけど…。
このうち何人か、裏口に回っておきたいんですよ。
もし相手に強く警戒されていたら、僕らの立場やらを説明する前に逃げ出されたり、ややこしいことになるかも知れませんから、その予防ということで。どうでしょう?
(順々にみんなの顔を見ていって、最後はセリスを見る)

■ルーブルの近く
☆From:シーアン  To:クロス
 俺もそれは思ってた。
よし、俺はクロスと一緒に裏に回ろう。(あっさり)

■ルーブルの近く
☆From:マーズ To:ALL
じゃあ、僕は裏に回りますね。

■ルーブル前
☆From:アフル To:ALL
じゃ、俺は表に回るぜ。

■ルーブルのそば
☆From:カナル  To:All
なら、俺は表にまわろう。

(セリスとアフルじゃ主人がアンナを庇っていても気づかないかもしれないしな)

■ルーブル前
☆From:セリス  To:All
それでは入りましょう。 裏口の人達、気をつけて下さいね。 それと、無茶をしたら駄目ですよ。

クロスの提案は全員に抵抗無く受け入れられた。
先ほど「セリスと一緒がいい」と笑っていたシーアンも、自ら裏口を志願してセリスと別行動を選んだ。自分の今やるべき役目は心得ている、という表情である。
表からはセリス・アフル・カナルが紹介状を持って主人のラーベナルトと面会し、念のためにクロス・シーアン・マーズが裏口を固めるという作戦だ。ただし裏を固めるのは、戦闘を有利にするためではなく(全員が装備を持っていないので)、捜索する2人の手がかりの逃走を防ぐためである。

■ルーブル前
☆From:クロス  To:セリス・カナル・アフル
大丈夫、まかせといて下さい。じゃあ表はお願いしますね。
…僕たちも行きましょうか、シーアン、マーズ!

裏口確保チーム
表口交渉チーム


裏口確保チーム

クロス・シーアン・マーズはルーブルの裏に回った。裏は路地に面していて人通りはほとんどないようだ。ルーブルの裏口の木戸は閉まっていた。

シーアンは周囲を警戒している。クロスは、姿を隠して裏口を見張れる場所はないかとあたりを見回している。マーズだけはまったくいつもと変わらずにのんびりとこう言った。

■ルーブル裏口
☆From:マーズ  To:シーアン、クロス
あれ?扉は閉まってますねぇ。ということは、まだここにいるとすれば逃げてないですねぇ。
ここで待ちましょうか?

■ルーブル裏口
☆From:シーアン  To:マーズ
 おい、扉の前で突っ立てたら、めちゃくちゃ怪しいぞ(^^;
扉が閉まってるからと言って、逃げるときに閉めただけかもしれないじゃないか (^^;
ま、大人しく待とうぜ。

■ルーブル裏口
☆From:クロス  To:マーズ&シーアン
いえ、まだ表組は店に入っていったばかりですから、マーズの言うとおり、もう逃げちゃったって事はないと思いますけど……扉の目の前に突っ立ってたらいけないと言うのは、その通りですよ。

■ルーブル裏口
☆From:シーアン  To:クロス&マーズ
(以下、小声)
 いや、俺の言いたかったのは、俺達が来るずーっと前に来て、 既に裏口からこっそり出ていった可能性はある。と言いたかったんだ(^^;。
裏口見張っていても、今誰かがルーブルの中にいて、 なおかつ裏口から出ていこうとしている時にしか役立たないって事なんだよな。
(逃げないでルーブルの中に隠れつづけるってのもありだし)

その時、何に感じたか3人はふと話を止めた。
(レンジャー・危険感知(第六感)目標値9:マーズは平目で8、クロスは平目で7、シーアンは2Dで5で達成値8。判定失敗)

しかし、特に何も変わった事には気がつかなかった。遠くを腹を減らした野良犬が通っただけ。
クロスはあたりを見回した。

■ルーブル裏口
☆From:クロス  To:マーズ&シーアン
(きょろきょろ)
あ、あそこにしましょう。あの陰からなら怪しまれずに見張っていられますよ。
(と、裏口を見張れる場所へマーズとシーアンを誘導するよー。でもって、普通を装って歩きながら、マーズに何気ない感じに)
あと、マーズ、見張っている間は、なるべく小声で話すようにしましょうよ。怪しまれちゃいますから……
(ちょっと冷や汗にじんでるかもしれない。ははは)

■ルーブル裏口
☆From:シーアン  To:クロス&マーズ
(クロスが物陰に誘導する)
おお、良い場所見つけたじゃん!
(以上、全部小声<余計に変(^^;?)

■ルーブル裏
☆From:マーズ  To:クロス
(よく理解できていないと言った感じで)
はぁ、よくわかりませんけど、これくらいの声ですね。わかりましたぁ。
(と、2人についていって陰に隠れる)

3人は裏通りに面した「ルーブル」とは反対側の建物の陰に身を潜めた。

表口交渉チーム

■ルーブル
☆From:カナル  To:セリス、アフル
そろそろ、シーアン達が裏にまわった頃だな。そろそろ行くか。
こういう状況で一番信頼されそうなセリスに、ラーベナルトとの交渉は任せるわ。

■ルーブル
☆From:アフル  To:セリス、カナル
そうだな、やっぱりプリーストの方が信用されるだろうしな。
(ぼそっと)うちの姉さんみたいなのもいるけど。

ちなみにアフルの姉は、アフルと同じく旅芸人の一座の一員でヴェーナーのプリーストらしい。そういうアフルも、リュートを片時も放さず暇さえあれば爪弾いているような少年だ。噂によると、この姉の影響を強く受けて育ったため、アフルは女性には逆らえないという。

さて、セリス・アフル・カナルが表口から「ルーブル」店内に入ると、カウンターにいた若い男が顔を上げて声をかけてきた。

■ルーブル店内
☆From:店員  To:お客様
やぁ、いらっしゃい。何かお探しですか?
それとも...(3人をかわるがわる見て)買い取り希望の方かな?

■ルーブル店内
☆From:カナル  To:店員
ええ、ちょっと捜し物を。

(それ以上は言わず、セリスに視線を送ると、カナルは店の中を眺める)

■ルーブル店内
☆From:店員  To:カナル
どういった物をお探しですか?壷、絵画、彫刻、などなど。
きっとお気に召すものをご用意させていただきますよ

カナルはざっと店内を見渡した。
(セージ・宝物鑑定技能:2Dは7で達成値は11)

店に展示してある物は、そのほとんどが中の上といった品物だった。特に珍しいものではないが、決してまがいものではない。まっとうな古美術品が並んでいる。大体 500 〜 5000 ガメル、という所だろう。

ひとつだけ、店員のいるカウンターの後ろに古代王国時代の壷だと思われる高価そうな品物がある。客寄せ用か?カナルには魔法の品物ではないように思われたが、完全な古代王国の美術品はそれだけでめずらしい。

■ルーブル
☆From:カナル  To:店員
(店内を見回しながら)

私たちの探しものは、ここ(店内)には無いようですね。奥の方にでもしまってあるの かな?
ご主人はいらっしゃいますか? 直接ご主人にお尋ねしたいんですが。

■ルーブル店内
☆From:セリス  To:店主
ええと、探しているのは物では無くて、人なのですが・・・
私、マーファ神に仕えておりますセリス・キャラウェイと申します。
私達はアンナさんが仕えております主人に依頼されてアンナさんの安全を確保するために
彼女を探しています。こちらが騎士ローンドファル様のご紹介状です。
ご覧の通り私は丸腰、決して争い事で解決しようとは思いません。
もし何か知っているのでしたらアンナさんの安全の為、協力願えませんか?

■ルーブル
☆From:カナル  To:自分
(あらあら、いきなりか。まあ、これがセリスの良いところなのかもしれないがな)

店番の男はセリスから紹介状を受け取ると、店の主人を呼びに奥へ引っ込んだ。入れ替わりにすぐ「ルーブル」の主人のラーベナルトが現れた。彼は店番の男に席を外すように指示すると、男が奥の部屋へ引っ込んだのを確認してからセリス達に向かい直した。

■ルーブル
☆From:ラーベナルト  To:セリス、カナル、アフル
(紹介状を読みつつ)
アンナが仕えている主人というと、シャレゼール伯爵のことか?ローンドファル氏の紹介状は...たしかに御自筆のようだが...

ラーベナルトは3人に落ち着きなく目をやりながら、何事か口の中でぶつぶつ言っている。

■ルーブル
☆From:ラーベナルト  To:セリス、カナル、アフル
アンナ...アンナの事か。まったく困った事に...

そこまで言って、はっとしたようにまわりをきょろきょろ見回した。 窓やドアから外の様子をひとしきり伺ってからセリスたちを振り返ってこう告げる。

■ルーブル
☆From:ラーベナルト  To:セリス、カナル、アフル
すまんが、ここでは話せない。夜になったら私の自宅まで来てくれないか

■ルーブル店内
☆From:アフル  To:セリス、カナル
それじゃあ、先にキルティングとアンナの実家の方に行って、また夜に出直すか。
(小声で)誰かに聞かれる事を恐れてるみたいだしな。

ラーベナルトは、何かに脅えているような目をしていた。

■ルーブル
☆From:カナル  To:アフル
無駄足は踏みたくないな。
出来れば、ここに二人が居るのかどうかを知りたいが……。

カナルはアフルにだけ聞こえるように小声でささやいた。そしてラーベナルトに向かってこう言った。

■ルーブル
☆From:カナル  To:ラーナベルト
それでは私たちの探しものは、夜には見せてもらえますか?
それとも、他のお店をあたった方が?

■ルーブル
☆From:ラーベナルト  To:カナル
貴方達が本当に伯爵御自身の使いならば、夜にはお探しのモノを御用意いたしましょう。しかし...。

いやすべては夜に、私の自宅でお話ししよう。それまでには貴方達を信用してよいかどうかもわかるだろう。暗くなってから、人目につかぬようにおいでなさい。

そう、他の店をあたるのもよろしいが、釣果があるとは思えませんな。

■ルーブル店内
☆From:アフル  To:カナル
(小声で)アンナはラーベルトの自宅に居るのか?
少なくとも、居場所ぐらいは知ってるみたいだな。
でも、夜には会えるって言ってるから、無理に聞き出す事もないだろ。

アフルが先ほどからずっと、一番近くのカナルだけに聞こえるような小声で話しているのには訳がある。レストランでローンドファルを怒らせたように、ラーベナルトの気分を害するかもしれないとの彼なりの配慮だ。
もっとも、アフルには相手によって態度をコロコロ変えることに対する軽い厭気心もあるのだろう。

カナルも小声でささやき返した。

■ルーブル
☆From:カナル  To:アフル
(アフルに)
そうだな、どうやらアンナについてはこれで大丈夫だろう。後はキルティングか……。

そして、重ねてラーベナルトに念を押した。

■ルーブル
☆From:カナル  To:ラーベナルト
(ラーベナルトに向かい)
なるほど、分かりました。我々は宝石と剣を探しているのですが、どちらも夜に見せていただけるのでしょうか。

カナルはラーベナルトが周囲を警戒しているのに配慮して隠語を使って尋ねた。ラーベナルトは少し考えてからゆっくりとこう答えた。

■ルーブル
☆From:ラーベナルト  To:カナル
そう。もし貴方達が信用に足る人物ならば喜んで宝石(アンナ)と剣(キルティング)をお見せしましょう。私共の世界では信用が第一。申し訳ないが独自に確認させていただきますよ。

カナルはラーベナルトと店員の今までの行動に不審な点がないかどうかを思い返してみた。ラーベナルトや店員が偽者ではないか、と念を入れてのことである。
(冒険者レベル+知力 対 精神抵抗値による判定:カナルは2Dが9で達成値13。ラーベナルトと店員の精神抵抗はどちらも失敗。)
しかし、店員にもラーベナルトにも特に不審な点は見当たらなかった。ラーベナルトは胡散臭げに3人を見ている。セリスが言ったように、彼らが本当に「シャレゼール伯爵」の使いなのか疑わしいと思っているようだ。

カナルが心配していたような事はないようだ。観察を終えてラーベナルトに答えた。

■ルーブル
☆From:カナル  To:ラーベナルト
それは素晴らしい。
もちろん、我々はあなたの信用を得られると思いますよ。

■ルーブル
☆From:セリス  To:店主(&All)
分かりました。ではご指定の時間にお伺いします。
ではアフルさん、カナルさん、行きましょう。

会見の終わりを感じたセリスがラーベナルトに挨拶をし、全員外に出るように促した。
ラーベナルトも肯きかえして店の奥へと引き込んだ。入れ替わりに店員の男が戻ってきてなにやら書き物の続きを始めた。3人はルーブルの外に出た。


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