賢者の学院・図書館
イェンスと別れたシグナスは、膨大な蔵書量を誇る学院の図書館へ向かった。 自習用の机には、午後のけだるい時間帯とあって、熱心にノートを作成している学生の横で、気持ち良さそうに文献につっぷして眠りこけている学生もいた。
静かな図書館に、低く抑えているが異常に良く通る絶対零度の声が響く。
満足そうな口元だけの笑みを浮かべ、カツカツと受付に戻って来るドロシー。
思いっきり私語常習犯を見るような目線で。
丸めた羊皮紙を手のひらにぱし、ぱしと打ち付けながら、ほとんど抑揚の無い口調で淡々と語るドロシー。
まるで試すような視線を投げかけつつ、シグナスにずいとにじり寄って、小声で問いかけるドロシー。
至極冷静な口調でそう言うが、肩がわずかに震えている。
こほん、と気を取り直すかのように咳払い。
こみ上げる腹筋の痙攣と戦うかのように、頬を赤く染めて俯いたまま聞いていたドロシー。
何か満足げな目元だけの笑みを浮かべながら。
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