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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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賢者の学院・図書館



  賢者の学院・図書館

イェンスと別れたシグナスは、膨大な蔵書量を誇る学院の図書館へ向かった。
ざっと見回す限り、利用者の数はちらほらと言ったところだ。
まだ授業中の学生が多いせいだろう。
司書が座っているはずの受付には、なぜか人影がない。
自習用の机には、午後のけだるい時間帯とあって、熱心にノートを作成している学生の横で、気持ち良さそうに文献につっぷして眠りこけている学生もいた。

そして、そんなのどかな風景にカツカツと近づく足音がひとつ。
パシッ、っと丸めた羊皮紙が居眠り学生の頭にヒットした。
■司書(ドロシー) To:眠りこけている学生
ここはあなたの寝室では在りません。唾液で貴重な文献が汚れます。
とっととお帰りなさい。

静かな図書館に、低く抑えているが異常に良く通る絶対零度の声が響く。
学生はそそくさと身支度を整えると、青ざめた表情で小走りに出て行ってしまった。
シグナスには、彼女が司書のドロシーだとわかる。
■ドロシー To:出て行った学生
…………フ。

満足そうな口元だけの笑みを浮かべ、カツカツと受付に戻って来るドロシー。
そしてシグナスの姿を認めると、氷のような表情に戻って立ち止まる。
■ドロシー To:シグナス
あなたは確か、シグナス・ラグス。
わかっていると思いますが、図書館の中で私語は慎むように。

思いっきり私語常習犯を見るような目線で。
■シグナス To:ドロシー
……俺の曖昧な記憶が確かなら……初めまして、ですよね?
ああ、改めて名乗るほどでもないけれど、シグナス・ラグスで間違いありません。
多分絶対こう、訂正しなきゃ致命的方向で見知られている気もするけれど、ともあれ。

勿論、俺だって時と場合を弁える分別はありますよ。なので、公語で司書である先生にお伺いしたい事が在るのですが、宜しいですか?

■ドロシー To:シグナス
司書のドロシーです。初めまして。
あなたの噂は様々な角度から聞き及んでいます。
何でも図書館であろうが受付であろうが、常に周囲の女学生の気配を敏感に察知し私語をもって語りかけ、交際を迫るとか迫らないとか。
分別が在ることは結構ですが、願わくばその分別が常に発揮されることを期待します。
特に静寂さを尊ぶべき図書館内においては。

丸めた羊皮紙を手のひらにぱし、ぱしと打ち付けながら、ほとんど抑揚の無い口調で淡々と語るドロシー。
■シグナス To:ドロシー
9割方は誤解と言わせて貰いますよ。これでも、友人は男女に関係無く大切にしてるつもりですし。
とは言え流石に、図書館とは言え全く私語を挟まない、と言う経験は少ない方なので、その点は謝りますよ。
と言うか随分エッジの利いた角度の噂までありやがりますか。

■ドロシー To:シグナス
火の無いところに煙は……と言います。素直に謝る姿勢は大変よろしい。
では学問のためならば遠慮は要りません、質問は手短にどうぞ。

■シグナス To:ドロシー
古代王国時代の地名でイーエン、と言う地方が西の方にあったらしいんですが、昔の地図か文献を探してるんですよ。

■ドロシー To:シグナス
それらの地図は大変貴重なものです。一部は一般に開放されていますが、一部は閲覧自体に許可が必要なものさえあります。
現在、いつもにも増して貴重な文献は厳しく閲覧を制限しなくてはならない事態におかれているのです……何故だか知っていますか?
……シグナス・ラグス、最近、図書館のある系統の本が行方不明になっている ……という噂を聞いたことは?

まるで試すような視線を投げかけつつ、シグナスにずいとにじり寄って、小声で問いかけるドロシー。
■シグナス To:ドロシー
とりあえず、フルネームじゃなくても呼び易い様に呼んで下さい。シグナスでもシグりんでもシィグウッィイとでも。

■ドロシー To:シグナス
……っ!
では、ラグりんと呼ぶことにします。

至極冷静な口調でそう言うが、肩がわずかに震えている。
どうやらこみ上げる笑いを堪えているらしい。
■シグナス To:ドロシー
そっちで来ますか。いや全く構いませんけれど。ともあれ、噂くらいは耳にした事が。何でもモンスターの図鑑が無くなったとか。
何にしても……読みたいだけならそうはならないでしょうね。街中にモンスターなんで滅多に居ませんし、利用法が限られる。
人為的な盗難だったら、10中7、8は目的地まで持って行くでしょうし、……そうでなくても犯人を抑えるなら、学院の外になるんじゃないでしょうかね。
それで、俺に如何しろと?困ってる人の頼み事位、損得で聞くほど野暮じゃないですよ。

■ドロシー To:シグナス
…………。
まだ窃盗と決まった訳でもありません。整理分類状の不備の可能性も残されています。
いずれにせよいずこかで当該文献を見かけたら確保し、報告。
それだけでも随分助かりますが、ひとつだけ問題が在ります。

こほん、と気を取り直すかのように咳払い。
そして再びシグナスを吟味するかのような視線を投げつける。
■ドロシー To:シグナス
私はラグりんのことを様々な角度からの噂でしか知りません。
よって、信用に足る人物かどうか容易には決めかねるのです。

ラグりん。何か私を納得させることのできるエピソードはありませんか?

■シグナス To:ドロシー
寧ろその多角的な情報源が何かとても気になりますけどねッ?

そうですね……ああそうだ、以前俺の友人に女性関係で悩んで居る奴が居まして。
ぶっちゃけモテないからと相談を受けて。何故その手の問題を俺に相談しようと思ったのか、未だに理解に苦しみますが……。
俺から見ても、友人としては敬意に値する人格だとは思うのですが、どうも女性からは頼り甲斐が乏しく見えるようで。
俺としては、第一印象以上を外見で判断する付き合いでは、そもそも良い人間関係は続かないと思っていたので、こう言ってあげたんですよ。
「男の顔じゃない」と。……ええ、無論言い間違えただけですが。
しかし、意外な事に彼は……そう、彼自身も何か意外な事に気付き、しかもそれが希望に繋がる答えだったようで、お礼を言って帰って行ったのです。

……後日、化粧を施し雅な服装を整えた彼は、中性的な魅力とでも言うのでしょうか、自分の新たな一面を磨き上げて居ましたよ。
最近では、女性だけでなく男にもモテる時があって困っている、と言う相談を受けています。今も尚、俺は俺の言葉の責任を取り続けています。

■ドロシー To:シグナス
………………(ぷるぷる)

こみ上げる腹筋の痙攣と戦うかのように、頬を赤く染めて俯いたまま聞いていたドロシー。
やがて凛とした表情でキッと顔を上げ(しかし目元があきらかに緩んでいる)、シグナスを真っ直ぐ見つめて言った。
■ドロシー To:シグナス
よ……良いでしょう。ラグりんが誠実かつ責任感の強い人間であると言うことは、客観的かつ具体性をもって説明されました。
そして何より、ユーモアはこの世の真実を的確に表現する悲劇。
ラグりんの人生は、笑いと悲劇にまみれていると想像します。
大変興味深い……。

何か満足げな目元だけの笑みを浮かべながら。
■シグナス To:ドロシー
人生難関辛苦あれど、それでもユーモアを持つ余裕を忘れず、前向きに立ち向かう事が俺の矜持。
ご理解頂けて幸……え、アレ、悲劇?塗れてないよ?全然塗れてなんて無いでございますのよぜ!?

■ドロシー To:シグナス
……フッ。
ではラグりんを信用し、のちほど私的な調査についても協力は惜しまないと約束しましょう。貴重な地図の類いについても閲覧を許可します。
先に、無くなった文献についての説明をしても宜しいですか?

■シグナス To:ドロシー
あ、ありがとうございます。
ああ、構いません。俺の方も、現状仕事中なので出来る事は限られますが、協力させてください。

■ドロシー To:シグナス
もちろん、できる範囲で結構です。
では、行方不明になった本のタイトルを伝えます。こちらへ。



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GM:ともまり