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SW-PBM Scenario#158
銀のしおり

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夢の守り手

★西の館・地下MAP(別枠表示)


  西の館・地下1階・奥

リュント、アール、アリス、そして猫耳を装着したジンは、空中を浮遊するウィスプの明かりを頼りに奥へと進んだ。
リュントの「精霊使いの目」は、はっきりと暗闇に佇む巨人の姿を捉えている。
牢から20メートル以上移動したとき、唐突に光源の中にその姿は現れた。
「百手巨人」──ジンが語ったその言葉が一行の脳裏に蘇ったが、目の前にいる身長4メートルを超える巨人には、12本あるはずの腕が……一本もなかった。
■リュント To:ALL
あそこに例の巨人が見えるぞ。
正しい回答をしないと怒らせそうだな〜

巨人の後ろから、わずかに青白い光が漏れている。
複雑な上位古代語がびっしりと刻まれた銀色の立方体が、いくつも組み合わせられてひとつの大きな立方体を形作っており、その中央に、巨大な魔晶石らしき菱形の石が宙に浮いた状態で回っているのだ。
■ヘカトンケイレス(ゼムリャ) To:ALL
(ジャイアント語)
FEGI MK LM "DREAM QX MISS". SMIO DE ZEMRYA.
VNI JFU E U HUOMMP...
(よく来たな、“夢の迷い人”たちよ。我が名はゼムリャ。
 我が主人の名と目的を述べよ)

澄んだ優しい瞳を一行に向けながら、重厚な言葉で語りかけてくる。
よく見ると──巨人の上半身にも、漆黒の細い鎖が何重にも巻き付けられていた。
そして、12本あったはずの腕は、付け根から鋭利な刃物で寸断されているように見えた。
傷口はすでに表皮で包まれており、出血などはしていない。
■ジン To:ALL
どうやらアストーカシャの言っていた「百手のゼムリャ」で間違いないようだな。
百手というにはひどい状態だが・・・
「我が主人の名と目的を述べよ」と言っている。

■リュント To:ゼムリャ&猫耳を着けている人
(共通語)
お前の主人は「深緑の魔女 ユズリーフ=アストーカシャ」
俺らはその友人としてここへやってきた。
って通訳してくれない?

ジンはリュントの言葉をそのままジャイアント語に翻訳した。
■ゼムリャ To:ALL
(ジャイアント語)
アストーカシャ様が真の名を与えたのなら、俺にとっても友人。
用件を聞こう。

■ジン To:ゼムリャ
(ジャイアント語)
アストーカシャが開発した「知力が高い者を支配下に置く」魔法のアイテムが、悪漢に奪われた。
おそらく、雪山のスノードラゴンを支配して、この一帯に破壊の限りを尽くすつもりだろう。
我々はそれを阻止するため、アイテムの原動力である「巨大魔晶石」を無力化しに来たのだ。

ジンは指人形を駆使してゼムリャに語りかける。。
自身の表情は至ってまじめだ。
その言葉をかみしめるように聞いていたゼムリャの顔も、至って大真面目だった。
■ゼムリャ To:ジン
(ジャイアント語)
……そうか。よかった、お前たちはまともなようだ。
俺の、この腕の傷を見てくれ。これはアバランにやられたのだ。
「逆らえばお前の主人を、徹底的に傷つけてやる」と言われてな……。
奴の精霊魔法の前に、俺の怪力は無力だった。

奥歯をきつく噛みしめながら、跪く。それでもジンたちにとって、彼の顔は見上げるほど高い位置にあった。
■ゼムリャ To:ジン&ALL
(ジャイアント語)
ここに浮いている巨大魔晶石を破壊すれば、魔法装置は止まる。
集められている動物たちも、すぐに森に帰るだろう。そういうプログラムになっている。お互い正気に戻った瞬間に、食い合うのを防ぐためだ。
そして──

ゼムリャは、自分の上半身を縛り上げている漆黒の鎖を視線で示す。
■ゼムリャ To:ジン&ALL
(ジャイアント語)
この【鎖】も、おそらく魔法装置の魔力を元にしているものだと思う。
幸い、アバランはまだ【鎖】を上手く使いこなせてはいない様子だった。
俺や、牢に入れられてしまったかわいそうなシーサテュロスを使って、実験を重ねようとしていたようだ。
だから、俺たちが支配を受けるのも、時間の問題だろう。

……お前の言う通り、奴の目的はスノードラゴンをも手中に収め、封印されたこの土地を「自分の王国」として蘇らせることだ。
俺は、アストーカシャ様の“夢”を守るために生まれた守護者。
それだけは、絶対に避けねばならぬ……。

■アール To:ゼムリャ
(通訳後)時間がないが、もうひとつ聞きたい。
アバランがここに来た時点ですでに「ああ」だったか?
我々が知っているアバランはもっと…善良な…普通の人間だった。
それについてなにか思い当たらないか?

あれでは、まるでアストーカシャのいう「奴ら」のようだ。

■ゼムリャ To:アール
(ジャイアント語)
そうだ。お前の言う通り、アバランはまるで「奴ら」……思い通りの王国を作ろうとする身勝手な野望そのものだ。
残念ながら、ここにやってきた時点で、奴の瞳は狂気に満ちていた。
善良な人間だったとは……初耳だ。
もし、それが本当ならば、俺のこの怒りと哀しみははどこに向ければ良いのだ……。
アストーカシャ様を惑わせ、誘惑し、心を奪って行った奴のことを……。

まるで自問自答するかのように、複雑な感情を瞳の奥で揺らしながらつぶやく。
■リュント To:ゼムリャ
(通訳後)
アバランと対峙した時、何かアイテムのような物を使っていなかったか?
どうやってお前を攻撃してきたか教えてくれないか?

■ゼムリャ To:リュント
(ジャイアント語)
奴は氷の精霊力を好んで使うようだ。この地下室にも、わざわざ氷を持ち込んでいた。
俺の「百手」を切り刻んでからは、氷は撤去したようだが。
……そう、一瞬にして生み出された氷の刃で、俺の腕は痛みを感じる間もなく空(くう)に吹き飛んでいたのだ。
何か道具を使っている気配はなかったが、常に銀の長槍と大剣、そして腰の背中側に青銅色の短剣を差していた。

■リュント To:ゼムリャ
(通訳後)
逆を言えば、魔法は氷の魔法しか使わなかったと?
武器は飾りじゃなく、使用していたよな?

■ゼムリャ To:リュント
(ジャイアント語)
少なくとも、俺の前では氷の精霊魔法しか使わなかった。
武器を抜くまでもないということだったのかもしれぬ。

自嘲気味に重々しく語るゼムリャ。
■アール To:ゼムリャ
(通訳後)それで、そのない腕であの魔晶石をなんとかできるのか?
なにかキーワードで止められるのならいいが。
気を悪くしないでくれ。
できることは手伝うって意味だ。

■ゼムリャ To:アール
(ジャイアント語)
俺には、お前の気遣う気持ちが伝わってくる。だから気を悪くしたりなどしない。
残念ながら、魔法装置を止めるには、巨大魔晶石を物理的な力をもって文字通り破壊するしか無い。
「百手」があれば比較的容易なことだったが、今となっては……微力を束にして剛力とするしか無いかもしれぬ。

■リュント To:ゼムリャ
(通訳後)
それは俺らでも力を合わせればどうにかなるって事か?
それなら話は早いぞ。
みんなでどんどん叩きゃいいだけになる。
壊すに当たって注意事項とかはないか?

■ゼムリャ To:リュント&ALL
(ジャイアント語)
特に無いと思う。アストーカシャ様に破壊を相談されたときも、単純に殴って壊せば良いとだけ言われていた。

■リュント To:後方部隊
こっちへ集合してくれ!
みんなで力を合わせないと魔法装置を止められないみたいだ!!

■アール To:ミュゥル→リナリア
リナリア、こっちの様子は把握してもらえたかな?
すぐに集まってくれ。

■ミュゥル To:アール
うにゃ〜

ミュゥルがぐっと背を伸ばして一声鳴く。伝わったようだ。
■ミァ To:リュントたち
……ぃ……ほい、今ダッシュで向かってまスヨー…!

■アール To:ジン
ジンさん、合流する前に手数を増やしておかないか?
頼りになる“相棒”を、さ。

鎧像を指して。
■ジン To:アール
うむ。こうゆう力仕事にはうってつけの相棒だな。
さっそく召喚しよう。

■アール To:ジン
しかし、石を叩き壊すとなると、ハルバードを貸すと手数が減っちまうな。
“相棒”には自慢のコブシがあるから大丈夫だろうけど。

しばらくして、後方で輝いていた「ライト」の光が一行の元へ近づいてくる。
パフィオとジュアンナを連れたミァたちだ。
合流した冒険者たちは、急いでお互いの状況を報告し合う。
■ミァ To:ゼムリャ
Σ ……んに〜〜〜…随分な姿に、でスー(>x<。。

■ゼムリャ To:ミァ
(ジャイアント語)
そんな顔をしなくとも良い、小さきものよ。
俺の心は未だ折れてはいないのだから。

ものすごい高低差のある巨大な顔が、険しくも優しい表情でミァに語りかける。
■ミァ To:ゼムリャ
(ノx<。)ごしごし………良い言葉なのでスーーゥ。
ミー、その言葉、しかと聞き届けましター!

■ヒノキ To:ゼムリャ
腕がないのは分かったけどよ、それでアンタは見てるだけか?
体当たりでも何でもして壊すのを手伝えよ。

■ゼムリャ To:ヒノキ
(ジャイアント語)
何度も試したが、無理だった。
ある程度打点を絞らなければ、ダメージが通らないのだ。
身体のバランスも、上手く保てない……。すまない。

■アール To:ヒノキ
おいおい、体当たりとか…あまり無茶させるなよ。

さすがに言いすぎだと思うw
■ヒノキ To:アール
人を気遣ってる余裕があるならこんな事は言わねぇよ。
それに良く言うだろ。
【立ってる者はでも使え】って。

言うのか。ファリス神官。
■ミァ To:ヒノキ
ヒノキっち、ある意味サスガでスー…(=▽=)
でも今回はアールっちの言う通りでスヨー。いたわらなきゃ。

■アール To:ゼムリャ
すまないが、体当たりとまでは無理を言わないが、見ての通りうちの戦力は「小粒揃い」なんでな、できたら肩か背中でも貸してくれないか?

■ゼムリャ To:アール
しかし、俺の巨体が立ちふさがっては、お前たちの行動の妨げになる。
大丈夫、巨大魔晶石の菱形の底の部分になら、小さきものたちの手も届くだろう。

見ると、巨大魔晶石は床から30センチのところで浮いている。
グラランずは、その先端を狙えということだろう。
■ミァ To:ゼムリャ
なるなる、あの辺でスネー(じじー)

■ヒノキ To:ゼムリャ
あと、コイツが壊れたならアンタが護るべき物は無くなるわけだよな。
そしたらアンタ、どうする気だ?
私らが入ってきた階段はもうすぐ扉が閉じちまう。
光の届かない地下で、目的も無いまま無駄に時を過ごす気か?

■ゼムリャ To:ヒノキ
(ジャイアント語)
奴が来る前までは、この部屋も光に満ちていた……。
俺が守るべきものは、アストーカシャ様の心。そして夢……願い。
我が主人の心を差し置いて、俺の未来を、俺の身を案じるつもりは無い。

■ミァ To:ゼムリャ
にしし……あのアストーっちの絵、綺麗でしたヨー。
まあ本人の魂が居ついちゃうくらいなんですから、出来も納得ってなもんですけドー。
しっかしぜむりゃん、ほんとーにアストーっち一筋なんでスネー。

にこにこと笑って見上げる。
■ヒノキ To:ミァ
……これが噂のロ○コンってやつか?

■ミァ To:ゼムリャ
あ、この地下からの出口ってゆーのは、向こうの階段だけでスカー?
どっかに他の抜け道あったりしまスー?

■ゼムリャ To:ミァ
(ジャイアント語)
俺の知る限りでは、無いと思う。
常にあの階段からやってきて、そして去っていった。

■ノール To:ALL
とにかく、頑張って殴ればいいんだよなっ!
え〜っとえっと……弓矢に槍に鞭……(ごそごそ)
おいらの武器、どれも効きそうにないぞっ!?
こうなったら、素手のぐららんパンチで勝負だなっ!

ぐるんぐるんと細い腕を回して準備体操開始。
■アール To:ノール>ALL
素手でパンチかよ…(^^;)
相手をよく見て…って…。
まてよ、こいつを壊すには剣とかの刃物じゃダメだ。
岩と同じだからな。
俺のハルバードとか、ミァのピックみたいな砕くやつか、せめて叩き付けるような武器じゃないと。

■ジン To:ノール、アール、ALL
破壊に必要なのは、質量を伴う衝撃力だ。
そしてその衝撃力を1点に集中できるような形状の武器が望ましい。
衝撃力を直接対象にぶつける手段があれば、それも有効だろう。

■ミァ To:アール
んに、ミーのこの銀色ピックなら、どんなものでもがっつんこ☆に砕いてあげまスヨー。

■ヒノキ To:ノール
ンで、そーいう得物を持たないノールはやっぱり素手パンチか。

■アール To:ALL
あとは、魔法は…古代語以外のエネルギー系や爆発の衝撃なら…なんとかか?
石の魔力のせいで古代語魔法は無効化されてしまうようだ。
最悪は殴るしか…ないみたいだぞ。

■ジン To:アール、
じゃあ、こいつの出番は無さそうだな。

蝙蝠の柄を持つ杖をくるりと回転させる。
館に入ってから、どれほどの時間が経っただろうか?
冷たい石壁の向こう──紫色の不気味な屋根の斜面に、今にも真円を描いた白い月がかかろうとしていることを、まだ冒険者たちは知らなかった。


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