「幕を引け、喜劇は終わった」(ラブーレ)
劇場 舞台 |
公演日初日を翌日に控え、ハイテンションな舞台稽古もようやく終わりに近づいたころ。
客席に陣取り、細かい演出のチェックに余念の無いライストンのところへ、一通の書状が届けられた。
面倒くさそうに目を通したライストンは、一読するとすぐにエレックと、そして冒険者たちを呼んだ。
■ ライストン To:エレック、おおる |
困ったことになったよ。 これを見てくれ。 |
そう言って差し出したのは、先ほどの書状。
■ ジーク To:ライストン |
これは・・・・・ |
差出人は、フェバーク家。
ざっと中身を読むと、初主演公演の祝賀として、今晩の夕食会への招待状であった
■ ライストン To:エレック |
これは、ある意味、おまえにとって大きなチャンスだ。 なんせ、相手はかなり有力な貴族だからな。 しかし、今は公演前の大事な時期だ。 それに例の件もあるので、あまり外に出したくないのも事実だ。 断ってもいいんだが、どうする? |
■ エレック To:ライストン、おおる |
……そうですね……。 君たちはどう思う? |
■ ジーク To:エレック |
そうですね、大事な時期ですし、一人でいくことには反対です。 ですが、有力な貴族とのコネというのも後々利することもあるでしょう。 なんとか我々もついていけるなら、行った方がいいとは思うのですが。 |
■ ライストン To:ジーク |
多少失礼にあたるかもしれんが、やはりいっしょに行ってもらった方がいいだろう。 一言断りを入れてけば、さすがに追い返したりはすまいよ。 |
■ イルミナ To:ライストン&ALL |
では、ライストンさんから話を通して頂いて、私達も同行させていただきましょう。 その際、武装の許可も頂けるようお願いできますか? |
■ ライストン To:イルミナ |
ああ、途中の護衛を考えれば、当然だな。 この招待状の礼状に一言添えておこう。 |
■ ジーク To:ライストン > エレック |
ええ、よろしくお願いします(^^ ということでよろしいですよね? |
■ エレック To:ジーク |
ああ。 よろしく頼むよ。 |
フェバーク家 玄関ホール |
迎えの馬車にのり、一行はフェバーク家へと向かった。
御者は、完全に武装した冒険者たちをいぶかしんだが、ライストンがとりなし事なきを得た。王城近くの非常に大きな館に着くと、一向は中へと通された。
ホールで一行を出迎えたのは、無表情な、しかし目つきの鋭い一人の老執事であった。
■ 執事 To:エレック |
よくいらっしゃいました。 本日は、急なお願いにもかかわらず快くお引き受けくださり、わが主もエレック様の来訪を喜んでおります。 エレック様と……お連れの方ですか? |
慇懃に出迎えの言葉を述べる執事に、エレックは無言でライストンの書状を差し出した。
■ エレック To:執事 |
本日は、このような席にお招き頂く機会を頂き、身に余る光栄でございます。 彼らは私の友人で、今現在は私の身を護ってくれております。 最近、何かと物騒ですので。 |
執事は、無言で頭を下げた。
■ ジーク To:執事 |
よろしくお願いいたします。 |
つられてジークも頭を下げる。
■ イルミナ To:クレフ |
さすがに、凄いお屋敷ね(^^; けれども、お迎えがちょっと寂しいと思わない? 招待しておいて...貴族ってそういうものなのかしらね(−−; |
■ クレフ To:イルミナ |
そーですねぇ〜 まぁ、所詮私たちとは身分が違うから…(^-^;) |
そういいながら、さりげなくあたりを見渡し怪しげなところはないかチェック。
なにやらそのイルミナの冒険者としての勘は、自分たちを囲む不穏な空気を感じ取った。
■ クレフ To:イルミナ |
…って、どうしたんです?(汗 |
■ イルミナ |
ん〜何かいやな予感が...って、あっ... |
冒険者とエレックを囲むように、何人もの男達が現れた。
■ クレフ (To:執事) |
………殺気…? |
■ 執事 To:おおる |
さて、申し訳有りませんがエレック様。 今晩は、生きたあなた様への席はご用意しておりません。 晩餐の席についていただくために、少々手荒なことをいたしますがご容赦下さい。 あなたのお友達の方も、ご一緒にお送りして差し上げますよ。 |
■ ジーク To:ALL |
しまった、罠でしたか?! ・・・・・などというと思いますか? |
啖呵をきりつつ、愛剣オーガストウインドを抜き放つ。
■ イルミナ To:ジーク&執事 |
ちょ、ちょっとまって、ジークさん 私たち...いえエレックさんはフェバーク家の相続権を放棄する意志があります! どうか、事を荒立てず、話し合いの場を用意してください。 私達がここへきたことは劇団の方も知っていることです。 無事戻らなければ、フェバーク家が真っ先に疑われることは避けられないはずです どうか、話し合いを... |
■ 執事 To:イルミナ |
来る途中に事故に遭うなど、そう珍しいことでもあるまい? それに、相続権を放棄するか……つまり、全てを知っていると言うことだな。 ならば話は早い。 放棄して貰うことは嬉しいが、セイル様の血をひく男児である限り、もしどこかで秘密がばれ、それを悪用する輩が居るとも限らんのでな。 フェバーク家にとっては、後顧の憂いを絶つことが最良なのだよ。 |
■ ジーク To:執事 |
確かに秘密は秘密であるからこそその利用価値はあります。 ですがその秘密とやらを隠し通そうとするために、この先もずっと貴方自身の手を汚すのですか? いっそのことすべてを公にして今後の憂いを断ったほうが最良なのではありませんか? |
■ 執事 To:ジーク |
これも、全ては20年前の私の甘さが引き起こしたこと。 セイル様の意見を受け容れ、あのメイドを里へ帰したことが原因だ。 あの時のやり残しを今行うだけのこと。それが最良だとは思わんかね? |
■ アシスト To:執事 |
絶対に思わないね。 そんなコトの為だけに人を殺すようなやり方は絶対に最良なんかじゃない。 主人の意も汲めないようなら、アンタは執事失格だよ。 |
■ 執事 To:アシスト |
主人の望むとおりに全てを行うことが執事の務めかね、少年? 間違いを正すこともできぬでは、存在価値も低かろうよ。 |
■ ジーク To:執事 |
20年も経って、なぜ蒸し返すんです? そのまま貴方がほっておけば、このようなことにはならなかったのでは? |
■ 執事 To:ジーク |
私も、今更こんな話が出てくるとは思わなかったよ。 その後、あのメイドがどうなったかさえ知らなかったのだし、もう、半ば忘れかけていたことでもあった。 しかし、パルメテウスの公演を見たときにはたまげたよ。 まさにセイル様がそこに立っていたのだからな。
それから、いろいろとエレックを調べるうちに、確かにこいつがセイル様の血をひく者であると確信した。 |
■ ジーク To:執事 |
ずいぶんといいかげんな理由でひと一人殺そうとするんですね。 |
■ アップル To:エレック&執事&おーる |
エレックさん、お聞きしたいんですけれども・・・・ あなたは、男児しか継承権のないフェバーク家を継ぐ資格をお持ちですか? もしかしたら、私たちを含め、みんな勘違いをしているのかもって思うんですが・・? |
■ エレック To:アップル |
…………私はエレックだよ。 もしエレックにフェバーク家を継ぐ資格があるというのなら、私にもある……そう言うことだ。 |
■ ジーク To:エレック |
・・・・・エレックさん |
■ イルミナ To:エレック>執事 |
.... でも、エレックさんを亡き者にしたところでペンダントが世に残っている限りその憂いはなくならないのではなくて? |
■ 執事 To:イルミナ |
その点は気にはなるな。 しかし知らぬ者にとってはただの宝飾品にすぎない。 それに、エレックほどセイル様に似ている者が持つから驚異なのであって、セイル様と似ても似つかぬ者がいかにわめき立てようが、そうそう信じて貰えるものでも無かろう。 それならば、エレックに死んで貰うことの方が、憂いが無くなろうよ。 |
■ イルミナ To:執事 |
...あなた、執事なのだからわかっているわよね? 例えここでエレックさんを殺害したとしても、まだフェバーク家の憂い...もう一人の後継者となりうる存在が残っているということを... |
■ 執事 To:イルミナ |
……ケネス様が何故憂いなのだ? 何を言っているのかわからんな。 |
イルミナの台詞に、執事は訳が分からないと言う顔をする。
■ イルミナ To:執事 |
ケネスって、正当な後継者のことでしょ? 彼のことではなくて、もう一人のご落胤のことをいっているのよ |
■ 執事 To:イルミナ |
ほう、それは良いこと聞いた。 ならば、その一人も見つけださねばな。 |
■ アシスト To:執事 |
そしてまた処分するってワケ? いい加減にしなよ。 |
そう言ってスタッフを執事に突きつけたが、執事は小うるさそうな視線を送っただけだった。
■ アップル To:エレック&おーる |
エレックさん、先ほど跡継ぎの「資格がある」っておっしゃいましたよね? それは、あくまでエレックさんはエレックさんの影であり続けるってことなんですか? それとも・・、純粋に生物学的に、”資格がある”っておっしゃっているんですか? たぶん、返答次第で・・・血なまぐさいことが、根本から回避できると思います・・・? |
■ エレック To:アップル |
……私は…………私は…… しかし、舞台に立つためには、男であるエレックのままで居るしかないんだ! 舞台に立たなくては、エレックの夢を継ぐことも! |
■ アップル(心の声) |
・・・と、いうことね。。。。。。 |
■ クレフ To:エレック |
エレック…さん… |
■ ジーク To:エレック |
エレックさん、もういいでしょう? 貴方の目標はこんなところで愚かな執事を相手に命を懸けることではないはずです。 歌い続けること、それが貴方と彼との約束だったんじゃないんですか? そのためには貴方の口から、真実を話してもらうしかないのです。 |
■ エレック To:ジーク |
…………約束……。 歌い続けること……。 エレックの夢…………。 私の…………夢? |
エレックは、放心したように宙を見つめながら続けた。