【第34繭洞:居住地区】 |
■子どもの声 To:父親? |
それで?とうさん! それからどうなったの?! |
■父親 To:子ども |
うーん、あれは…次の日、なんだろうな。 ヤマの混乱が、すこしだけ落ち着いた頃。 知らせが届いたんだ。 |
■子ども To:父親 |
シラセ…? |
■父親 To:子ども |
伝言…そうだなぁ、門番たちが教えてくれたんだ。 消えてなくなったはずの「第16地区」と「第46居住区」とが見つかったってな。 |
■子ども To:父親 |
でも、それっておそらにとんでいっちゃったんでしょう? |
■父親 To:子ども |
そうなんだ。 ところが、夜中、谷の門番たちが、大きな音を聞いたんだ。 続けてふたつ。 みんなで大慌てで探したら、山の向こうの大きな窪地に、大きなおおきな、もっと大きな岩の塊がみつかった。 中に居たはずのひとたちも、全員そのまま、おおきなあくびをしながら起きてきたんだとさ。 |
■子ども To:父親 |
つうろでねちゃっていたこどもも? |
■父親 To:子ども |
あ、ああ……あの子ね。 ははっ、ちゃんと起きたよ、大丈夫だ。 |
■子ども To:父親 |
よかったーっ! じゃあ、だれもしななかったんだね! |
■父親 To:子ども |
そうだよ、よかったな。 だけど、トカゲの大臣と、彼のお付きの家来とは、二度と戻ってこなかった。 |
■子ども To:父親 |
え? やっぱりしんじゃったの…? |
■父親 To:子ども |
違うよ。 出ていったんだ。 おそらくそれが、彼なりのけじめだっだんだろう。 |
■子ども To:父親 |
ねえねえ、ケジメってなあに? |
■父親 To:子ども |
あ、うーんと、そうだな。 きまりを守るってところかな。 |
■子ども To:父親 |
きまりをまもって……でていったの? わるいやつ……だったから? |
■父親 To:子ども |
どうなんだろうな。 本当に悪い奴だったら、きまりを守ると思うかい? |
■子ども To:父親 |
うーん、よくわかんないっ! もっと、「ぼうけんしゃ」のはなしをしてよ。 わるいいやつをばったばったとやっつけるはなしー!!。 |
■父親 To:子ども |
はははっ、そうだな。 では、こんな話はどうだい。 ドワーフ族の剣の使い手、ファイヤードレイクの物語だ。 銀の鎧に伝説のつるぎ、盾をふたつ軽々と振り回し、石壁すらも打ち崩す。 彼が旅に出たのは、そう、さっき話したね。 空から街が降ってきてから20年後のことさ。 まずは「剣聖」を探そうと……。 |
空に舞い上がる街。
いったい誰が、なんの為に、この地にそれを作ったのか。
そしてあの日、街を降らせたのは、誰の、どんな思いであったのか。
それを知るため、親友は旅に出た。
彼からの便りに思いを馳せつつ、父親は語る。
かつて、ドワーフ達は、まだ見ぬ星に憧れた。
この子らは、本物の星を見上げ、どのような夢を持つのだろう。
ヤマを離れた者達に、どんな道を示すのだろう。
心の内を見つめるように、窓の向こうで星々が、今宵も静かに瞬き始めていた。
Sein heisst Werden, Leben heisst Lernen.
Das Ende