16b 沈黙の箱舟
■ギュネイ To:シグナス |
そうですね。いわゆる、剣闘士奴隷用の装飾武具の類ですから、色々なタイプの武器・防具があったと思います。 一応その他にも、一般的な魔法のアイテムを発見していたんですが、こちらは研究するまでもないですし、需要もあるので、早々に研究資金に換えてしまったんですよ。 |
■シグナス To:ギュネイ、ALL |
と言うと、やっぱり……ううん、俺個人としては、活かせる事は無いかなあ……。 寧ろ、武器防具って括りなら皆の方が生かせるんじゃないか? とりあえずギュネイさん、今度見学させてください。 |
■ギュネイ To:シグナス |
ああ。いつでも遊びにきてくれ。 |
■ヘキサ To:ギュネイ |
そういうことなら。ぼくは報酬よりそっちのほうがいいかな。 この冒険の記念になるし。 |
■アビィ To:ギュネイ&ALL |
よろしければ、わたしも造形を拝見させていただきたいのだが。 装飾細工人としての知識の幅を広げるよい機会になりそうだしな。 個人的趣味とはまた別の話ではあるのだが、学ぶことは必要だろう。 |
そう言いながら、アビィは手の内でずっと転がし続けていた粘土の塊を皆に見せた。
鉤爪につかみ上げられる頭蓋骨の造形、それは先ほどまでシグナスが纏っていた鎧の意匠を写し取ったものだった。
■カラレナ To:アビィ |
あ……すごい。さっきの…… |
思わず、頭蓋骨とシグナスを見比べる。そんなカラレナの目線を追ったアビィの瞳に楽しげな光が浮かんで消えた。
■アビィ To:ALL |
今夜にでも、鉛で型取るつもりだ、パーツを組み合わせればちょっとした襟飾りになるだろう。 ……いや、そんな目で御覧になられるな。 「記憶」にとどめるには、わたしにはこのやり方が一番なのだ。 もちろんまともな造形も写しているぞ、こちらはまだ試作段階だが……。 |
素早くかくしから、銅の針金を撚り上げた部品を取り出してみせる。
奇妙な比率の楕円の枠に、様々な文字によって表された数字が編み込まれているそれは、「時魔神の鏡」のフレームを元にデザインされたペンダントのようだ。
わ〜、すてきです。
いいなぁ……。
うらやましそうにペンダントを見つめる。
■アビィ To:カラレナ |
いや……まあ、どちらも個性的な装飾ではあるがな。 なんというか、写してみるとどこか感覚の歪みが伝わってくるのだ。 今の時代に住まうヒトが創り出す造形とは、異なる感性がかかわっているような…。 |
■カラレナ To:アビィ |
ゆがみ…ですか? |
■アビィ To:カラレナ |
まあ、それが「魔神の鏡」といわれる所以だったのかもしれぬが…な。 |
以前対峙した、魔族の宿った宝石を思い浮かべ、微かに首を振ってその邪な印象を追い払うアビィである。
■アビィ To:カラレナ |
御希望なら、正統的なデザインの装飾品をお作りしよう。 無事オランに帰り着いてからの話になるが……。 ある程度しっかりした品になると、工房で作らねばならぬのでな、直ぐにというわけにはいかないが。 |
■カラレナ To:アビィ |
あ、えと…… 正統派じゃなくていいんです。 私たちが命をかけてくぐって、そして、戻ってこれた扉の…… 鏡のそのままの形を、身につけておきたくて。 そうすれば、ペンダントを見るたびに、今、こうして生きていられることに……命があることに感謝できるかなぁって。 あっ、でも、精霊たちが怖がらないように、銀製が嬉しいんですけどね(^^; |
微笑みながら、アビィの手の中にある、歪んだ楕円の形をじっと見つめている。
■アビィ To:カラレナ |
銀か……それなりに値が張る品になるがよろしいか? それにその素材はオランに戻らなくては手に入らぬだろう。 加工する場所や道具も手配せねばならない、相当の時間がかかると思われる。 待ち時間によっては、もしかするともう一つ冒険が片づくくらいの時間がな。 それでよろしいなら、お受けいたそう。 |
■カラレナ To:アビィ |
はい! いつまででも待ってます。 アビィさん、ありがとう! |
ぱっと顔を輝かせて、思わずアビィの手をとって上下に振る(笑)
■ヘキサ |
………… |
交渉ごとがひと段落したところで、ヘキサはマナイのほうを向いた。
心なしか緊張した雰囲気で、マナイに向かって手を差し出す。
■ヘキサ To:マナイ |
改めて、はじめまして……名乗るのは、初めてかな?ぼくの名前はヘキサです。 |
■マナイ To:ヘキサ |
・・・ああ、やはりおまえがヘキサか。 おぼえているぞ。命の・・・恩人だからな。 |
その言葉を聞き、嬉しそうに顔をほころばせるヘキサ。
マナイの手を両手で包み、ぶんぶんと上下に振った。
そして少し迷いを含んだ口調で、
■ヘキサ To:マナイ |
あのときの約束を…… そのマント…… |
マントを受け取ろうと手を伸ばすヘキサ。だがその手は空を泳ぐ。
しばしの逡巡の後、ヘキサは手を引き戻し、意を決して言った。
■ヘキサ To:マナイ |
ううん、やっぱり返さなくていいや。 |
■マナイ To:ヘキサ |
いいのか?借りたものは返さなければいけないとギュネイが言っていたぞ。 |
■ヘキサ To:マナイ |
うん、大事なものだから。だから……あなたに持っていてもらいたいんだ。 |
■マナイ To:ヘキサ |
そうか・・・よかった。ちょっと気に入っていたのだ。 でも、必要になったらいつでも取りにくるといい。 それまではまた私が大事に預かっていよう。 |
■ヘキサ To:マナイ |
うん。そう遠くない未来(あした)に、また会いに行くよ。 だからそれまで、もうすこしだけ待っていて。必ず、受け取りに行くから。 そのときは…… |
「そのときはきっと、ぼくがあなたを必要とするときだよ」その言葉を、今は胸に秘めて。