16a 沈黙の箱舟
過去から持ち帰った黒い石版を使い、遺跡の暴走を止めることに成功した一行。
遺跡の全機能を停止させ、周囲は廃墟のような静寂に包まれた。
魔力の暴走は、急激な魔力の消費を促し、すでに枯渇寸前に達していた。
遺跡が浮力を維持できなくなるまで、もって半日。
石版を駆使して状況を知ったギュネイはそう語った。
一行は遺跡の上の待機メンバーと合流、さらにオウルらの迎えの船とも合流し、船上の人となった。
ほどなく、遺跡はあちらこちらで崩壊の音が轟くのが聞こえてくる。
かつて水上都市ブレアと呼ばれたその遺跡は、まるで船首を大きく上げた箱舟のように、その巨体を沈め始めた。
■シャイアン To:ALL |
あぅ、沈没してしまうのでござるか・・・もったいないでござるなあ |
■カラレナ To:シャイアン |
本当ですね。もうちょっと、ゆっくり歩いてみたかったです…… |
沈みゆく遺跡を見つめながら、ぽつりとつぶやく。
■シャイアン To:カラレナ |
ふむ。拙者、この遺跡ではすごい数の骸骨に囲まれた印象しか残ってないでござるよ(TT |
■カラレナ To:シャイアン |
あはは、私は…… ……なんでもないです(^^; |
すぷらったシーンの記憶を消すように、ぶんぶんと頭を振る。
■アビィ To:ALL |
魔力が尽きたというならば、この周辺の村々が骸骨に襲われる可能性はなくなるかもしれぬ。 いずれにせよ、調査はつづけられるのだろうか。 遺跡の姿は、研究所の模型とヘキサ殿の絵の中にとどめられているのだな。 |
■ヘキサ To:アビィ |
……それだけじゃないよ。 古きものは、それを忘れない限り、人の胸の中に生き続けるんだ。 |
沈み逝く箱舟の最期を見据える。
少しでも長く、その姿を瞳に焼き付けるために。
■リールォン To:ALL |
そうですね、ヘキサさんの言うとおり、「忘れない」という行為は存在していたものに対する最大の敬意かもしれません。 そして、それが自分自身にとっても大切なきっかけを与えてくれる贈り物になります。 |
■アビィ To:ヘキサ&リールォン |
「忘れぬ」ことが大切とおっしゃるか…それが苦痛であれ、希望で有れ……。 「記憶」が「贈り物」なれば、それを前向きにとらえていく方が賢いのであろうな。 |
微かに苦みの残る口調で、半ば自分に言い聞かせるように応じたアビィは、話題を変えるかのようにシャイアンに向き直った。
■アビィ To:シャイアン |
シャイアン殿には申し訳なかった、結局「船」が探検できずじまいになってしまって……。 |
■シャイアン To:アビィ |
いやいや、拙者はまだあきらめていないでござるよ〜! 遺跡が沈んでいる場所は分かっているのでござる。 であれば、いつか潜って探検するでござるよ♪ |
■カラレナ To:シャイアン |
でも、いつか歌にしてくださいね。 シャイアンが見た「船」を、まだ見ていない……もう見られない人たちにも思い浮かべられるような、素敵な歌を(^^ |
ちょっとかがんで、シャイアンに笑いかける。
■シャイアン To:カラレナ |
さ、さようでござるな〜♪ 「ハコ舟に〜♪登ってみれば〜♪骸骨の山〜♪」 ではキマリが悪いでござるからな〜(^^; |
照れ隠しに、リュートをじゃらんと鳴らして「ハイ〜ク」を披露するシャイアン
■リールォン To:シャイアン |
詩人の鏡ですね(笑) |
くすりと微笑むリールォン。
■カラレナ To:リールォン>シャイアン |
ふふっ(^^ そうだ、シャイアンさんは、これからどこに行くんですか? 旅の続きですか?? |
■シャイアン To:カラレナ |
拙者もオランに戻ってまた冒険をするでござるかな。 里帰りして孫の顔も見られたでござるからな〜♪ そろそろ都会の冒険が恋しくなってきたでござる(^^ |
■カラレナ To:シャイアン |
そっか〜、じゃあ、また銀の網亭で会えるかもしれないですね(^^ 都会の冒険かぁ…… オランに戻ったら、こんな風景ともしばらくお別れですね。 |
そう言ってもう一度湖を眺める。
■シグナス To:シャイアン、ALL |
……ま、これも一世一代の見物なんじゃねえの? もーちっと調査予算上げれば、水中探索も出来るだろうし。 結局仕事として如何なのかは、依頼主次第なんだがなぁ……。 死人は救えれたし、俺は文句はねえ。ねえけど……。 ところで俺は何時までコレ(骨鎧)着てるんだろうな。 段々愛着湧き掛けて来てるぞ。 |
■シャイアン To:シグナス |
うむ。ぜんぜん違和感が無いのが不思議でござる。 |
■ヘキサ To:シグナス |
ぜひとも背骨剣と一緒に絵にしたいところ…… |
■カラレナ To:シグナス |
愛着って……(^^; も、もしかしてシグナスさん、呪われたりしてないですよね? 鎧と離れがたくなる呪いとか…… |
おそるおそる。
■シグナス To:カラレナ |
いや、なんか皆の驚く顔が微妙に楽しくて。 |
■カラレナ To:シグナス |
……もうっ(^^; |
その会話を耳にして、顔を背けて小さく笑いを漏らしたアビィ。
すぐに真面目くさった表情を貼り付け、振り返った彼女はいつもの堅苦しい口調に戻って会話を引き取る。
■アビィ To:シグナス>ALL |
それを纏って街を歩かれるおつもりなら、その勇気は尊敬させていただくが。 とりあえず、その鎧も水上都市ブレアに残された貴重な資料ではあるな。 魔晶石ともども、扱いをギュネイ師に相談する必要があるだろう。 残念ながら、今回は依頼を受けて動いたわけではないからな。 招待されてやってきたのは事実だが、今回の救出作戦は我々が勝手に行動しただけだと言われてしまえばそれまでかもしれぬ。 |
■カラレナ To:アビィ&ALL |
そ、そうですよね、でも…… 私は、報酬なんて……考えてませんでした。 それじゃ、冒険者として甘いですか……? |
ちょっと、不安げ。
■ヘキサ To:カラレナ |
んー、そんなに深く考えなくていいと思うけど。 ぼくも報酬とか考えてたわけじゃないし(笑) |
■リールォン To:ALL |
僕も報酬についてはお任せします。 僕自身は見返りを考えていませんでしたケド、冒険者としてはやっぱり報酬は大切なものだとも思いますし。 |
■アビィ To:カラレナ |
冒険以外に生活の糧を得る手段をお持ちなら結構だが……。 仮にそうであっても、冒険を生きるための手段にしている者は大勢いる。 そういった者達の為にも、冒険者が慈善者として認知されることになってしまうわけにもいかないだろう。 払うすべのない者から取り立てろとまでは言えないが、もらえるところからはしっかりもらっておいたほうがよい。 |
■カラレナ To:アビィ>ひとりごと |
そっか……そうですよね。 すごく、良くわかりました。 私、まだまだです。 |
自分に言い聞かせるようにつぶやくと、ひとつ息を吐いた。
■ヘキサ To:カラレナ |
そうそ、こういう交渉事も冒険者の仕事ってね。 |
■カラレナ To:ヘキサ |
はい(^^ また、いろいろ教えてくださいね。 |
■シグナス To:アビィ、ALL |
コレで生活するってのは、オススメはできねぇなあ。 いや、物は良いんだ。着てて解る。ただ、良過ぎても困る。 とりあえず、その辺ちょいと話して置く方が良いだろ。 ま、冒険者なんてがっついてナンボだぜ。多分。 |
■アビィ To:シグナス |
その鎧の価値を時価で負担できるところがはたして見つかるかだな。 どこに話を持っていくかにもよるが……わたしの宝飾品を時々引き受けてくれるさる人物の好みでないことだけは確かだ。 とりあえず、資料としての価値を含めギュネイ師に伺ってみるか? |
■ヘキサ To:シグナス&アビィ > ギュネイ |
うん。ヘタに好事家の人探すよりも、専門家に預けたほうが安全だと思うし。 そもそも、わかってないだけでホントに呪いがかかってるかもしれないからね(笑) ギュネイさん、少しいいですか? |
■ギュネイ To:ヘキサ、ALL |
うむ。しかしこの遺跡で見つかった武具は、その禍々しさとは裏腹に呪われた品が一切出てこなかったからな。 まあ大丈夫だとは思うが、一応念のために調べておこう。 |
■シグナス To:ギュネイ、ALL |
すんません。一応、上手く終ったんでようやっと話出来るんですけど。 正直俺等も生活在るんで、命張ってタダで終るって訳には行かないんですよ。 出来れば、俺等が遺跡内で拾った鎧と魔晶石、買い取って貰うって形にできませんか? 元々、拾った物については聞いてませんし、かと言ってあの時代から直接持って来て、 それも結構強力な魔力の鎧なんて、貴重過ぎて持って帰るのも気が引ける。 貴方に引き渡して、差額を報酬で受け取る。ってのが、俺等としてはベストな形って思うんですよ。 |
■ギュネイ To:シグナス、ALL |
うむ。君たちは命の恩人だし、できる限り便宜を図りたいと思うよ。 遺跡で入手した品物を我々が買い取るということでいいのかい? 君たちがそれでいいならそれで構わないよ。 ただ、遺跡も沈んでしまって今後の研究予算も大幅に削られることを考えると、大判振る舞いというわけにもいかなくてね。 魔晶石はともかく、鎧の方は適正な価格では買い取れないと思う。 売値の八掛け(60000×80%=48000G)くらいでどうだろうか? |
■シグナス To:ALL、ギュネイ |
うぅん……モノがモノだけに結構……。 つっても、金額的には充分、と俺は思うけど、皆は? 俺は、文句無いです。 ただ……代わり、て訳じゃ無いんですけど、手の空けられる魔法の発動体とか無いですかね? それか、知り合いに作れる人とか……どっちも別で費用は払いますんで。 |
■ギュネイ To:シグナス |
私の師匠なら作れるとは思いますが、なかなか厳しい方でして・・・。 以前も同じように発動体作製術(Lv6)の依頼に来た魔術師に 「せめて研究室で実現できるレベル(目標よりLv2低いレベル)になるまで研鑽を積むことだ」 と長々説教されていました(^^; でも、オランの研究室にある調査済みの魔法のアイテムなら、通常の取引価格でおゆずりしてもいいですよ。 確か魔力が賦与(+1)された武具が結構あったはずですから。 例によって、あまり良い趣味のデザインではないのですが(^^; |
■シグナス To:ギュネイ |
たはは……そう言われると、何も言えませんね。まだまだ未熟なのは、自覚してますし。 それじゃあ、何時か腕を上げた時に紹介して貰いに行きますよ。 ……アノデザインセンスでですか。武具って言うと、魔剣ですか? 何か、他に種類があったりするんですかね? |
シグナスはすっかり感性が感化されたようだ。
■カラレナ To:シグナス |
……楽しそうですね(^^; |
とりあえず、成り行きを見守る。