12a 失われた世界

波打つ鏡の面を通り抜け、鏡の中へ降り立った一行。
ライトの明かりが照らし出す世界は、暗いことを除けば、拍子抜けするほど今までいた世界と同じだ。
しかし、そこには大鎧の残骸も仲間達の遺体も存在しない。
今通ってきた光の円面だけが、不気味に浮かび上がっている。
■カラレナ To:ALL
何も…無い…ですね。

■シグナス To:カラレナ、ALL
……つーかまあ、何かあっても良い事とは限らねえのが辛いとこなんだが。

■カラレナ To:シグナス
…ぅ…そうですよね……。

■周囲から聞こえる声 To:
(上位古代語で以下のような意味合いの発音)予備魔力源充填完了。

■カラレナ To:声?
な、何?

■ヘキサ To:カラレナ
古代語……みたいだけど、下位古代語じゃないね。
となると……

唐突に光が満ち溢れる大広間。
まるで一瞬にして元の世界に戻ったような錯覚に陥ってしまう。
しかし、振り返った一行の前には、先ほど倒したはずの大鎧が侵入者を威圧するように聳え立っている。
■ヘキサ To:大鎧
――くッ!

■アビィ To:カラレナ&ALL
……呪文か?罠か?

油断無く周囲に目を配る。
■大鎧 To:
(下位古代語で)許可認証を提示せよ。

■カラレナ To:ALL
ま、また…
何て言ってるんですか??

仲間たちの方へ身を寄せるようにしながら。
■アビィ To:カラレナ&ALL
さて……?
これまでの経験から察するに、おそらくは「合い言葉をどうぞ」くらいの意味ではないか?

そう応えるアビィの指先は、さりげなく重鎚の柄にかかっている。
■ヘキサ To:アビィ
……うん。
許可認証がどうのって。何かを証明して見せろって言ってる。

■シグナス To:ALL
それで合ってると思う。最初の多分上位の古代語なんだが……言い直す辺り意外と親切だなオイ。

■マーキュリー To:ALL
合い言葉かぁ…
合い鍵になりそうなものなら僕が持ってますよ?
それともやっぱり戦わないとダメかな?…

そう言って荷物からボーンコレクターの頭蓋骨を取り出し大鎧に向かってかざして見せる。
■リールォン To:マーキュリー&ALL
……うーん、さっきの戦闘の疲れがまだ完全にはとれてない状態ですから、できれば戦闘は避けたいところですね。

■大鎧 To:ALL
(下位古代語で)13号は情報閲覧権限を有していない。
速やかに退出せよ。

突然背後でゴトリと物音がすると、元いた世界で一行が入ってきた骨の扉が音を立てて開いていった。
扉の向こうには、はやり同じような回廊が続いているのが見える。
■アビィ To:ヘキサ&ALL
認証されたのか?
いや、先に頭蓋骨で扉を開いて入ろうとした時には反応がなかったな……
もしや、出ていけとでも言っているのか。

■ヘキサ To:アビィ
ええと……13番目の人は情報を見てはいけない、ことになってる。とっととでてけ……かな?

■カラレナ To:ヘキサ&ALL
……情報……?
出て行かないと、また殴り掛かってくるんでしょうか。

気が気じゃない様子で大鎧を見ている。
■アビィ To:ギュネイ
初めてこの部屋を調査されたときのことだが……ご存じかな
あの扉は開いていたのだろうか、それとも閉じていたろうか?

■ギュネイ To:アビィ
扉は閉じていたが、ナナイのボーンコレクターで開いたよ。
広間の中央には大鎧があったが、今みたいに反応はなかったな。

■アビィ To:ギュネイ
ふうむ、このような応答はなかったのか…あるいは、平時と緊急時の……。
いや失礼、あとひとつだけ。
その時鏡は室内にあったのか、それとも別の場所で発見されたのだろうか?

■ギュネイ To:アビィ
私が初めて見たのはこの広間でだったが実際にはべつの場所で発見して、広間に持ってきたそうだ。
やはりナナイのボーンコレクターでないと入れない所だったらしいね。

■マーキュリー To:ALL
とりあえず部屋を出ませんか?
出てけって言われてるみたいですし、また大鎧が動き出しそうですし。

■カラレナ To:マーキュリー&ALL
そ、そうですよね……またさっきみたいな戦いになったら……
早く行きましょう。

■リールォン To:カラレナ&ALL
そうですね、「現在」では死んでいた機能があって、この「過去世界」では正常に動いている機能とかがあるかもしれませんし。

■シグナス To:ALL
……ナナイの方のが上位だったってのかね。
こっち側でソレ探せばあるんじゃねえか?まあ、どの道下がるのは賛成だな。

■アビィ To:シグナス&ALL
ここで将来起こることを考えると、ナナイ殿と彼女の操るコレクターも石版に関する「情報を見てはいけない」のは同じなのかもしれないが……。
それでも、ナナイ殿のボーンコレクターを探すなら、尖塔に向かうことになるな。
確か彼女はそこで発見されたはずだ。
そしてその先の頭頂部が今の時代に残っているのならば、そこに未知の石版があるかもしれない。
ただし、現在の彼女と出くわすことで、未来を悪い方向に変えないように気をつけないとならないが……。

そう言いながら、外に向かって歩き出す。
■カラレナ To:アビィ&ALL>心の中
そ、そうですね……行きましょう。
(自分が生まれてない世界…何だか嫌な感じ……)

アビィに離れないようについて行く。