06a 漆黒の箱舟
水上都市ブレアの巡航ルートを手に入れた一行は、すぐにオウルの船でマルシェ村を出航した。
船内で食事と睡眠を済ませ、目的の場所に近づくと、新月の闇に不気味に浮かび上がる城街のシルエットを見上げることができた。
魔法の明かりで黒い水面を照らし出し、さらに近づくと、船の前方に黒い壁と柱のようなものが見えるようになる。
計算では、ブレアがこの場所に停泊する時間は、あと半刻もないはずだ。
■オウル To:ALL |
さあ、着いたぜ。 夜中のこいつはこんなに不気味だったのか・・・ 時間がない。さっさとはじめようぜ。 |
■シグナス To:ALL |
ん……あぁ、何だ。着いたのか……。 ふぁ……ぁ〜あ。ふう、道中見物出来ないのは惜しかったけど、まあ夜だしな。 |
明かりの魔法に精神を使い切っていた為、到着までずっと寝ていたシグナス。
掛けられた声に目を覚まし、身を起こしつつ周囲を見回していた。
■カラレナ To:オウル |
すごいですね……こんなに大きいものだったなんて。 黒々としていて、ちょっと怖いです(^^; |
やや及び腰になりながらも、遺跡を注意深く観察。
魔法の明かりが届く範囲には、縄梯子のようなものは見つからない。
黒い壁や柱の水面から出ている高さはおよそ10m。
それより上は角度的に見る事はできない。
■アビィ To:オウル |
オウル殿は調査隊が船を着けていた場所をご存じか? まず、彼らの乗っていた船が無事かどうかを確認したいのだが……。 もし船がなくとも、おそらくそこが一番登りやすい場所だろう。 |
そう尋ねている間も、闇を見通すドワーフの目は前方の壁と柱の辺りの勾配を注意深く計っていた。
壁はほとんど垂直で足がかりもなく、登攀は難しそうだ。
柱の方も足がかりはなさそうだが、かなり傾斜はある。
■オウル To:アビィ |
遺跡の進行方向から考えて、いつも船を着けている側の壁なのは確かだな。 ただ、暗闇だと正確な位置まではわからんな。 |
■シグナス To:ALL |
こりゃ、なんか。マジで水辺の砦に忍び込もうって感じだな……。 どうする、大凡の方向解るなら、そっちに明かり付けた矢でも撃ってみるか? ……まあ、外して湖に落ちたらアホ臭いけど。 最悪手掛り無しで上るってのは……難しそうだなこりゃ。 |
■マーキュリー To:ALL |
なんだか懐かしい気持ちがしてきたなぁ♪ もう少し当たりを付けてから明かりを撃ってみても良いと思います。 だいたいの場所が当たっているんですから、ロープ引っかけて登れそうな場所を探してみませんか? 縄梯子が見つかるかもしれないし。 |
■アビィ To:ALL>オウル |
わたしには、ここは闇ではない、みとおせる限りは見てみよう。 のろしも魔力も温存できるに越したことはないからな。 それではオウル殿、崩れた尖塔のある方向はおわかりかな。 わかるようならそちらに近づいてみたいのだが、船は問題なく進めるだろうか。 |
壁や柱が付きだしている地帯から先に目を凝らしながら尋ねるアビィ。
■オウル To:ALL、アビィ |
崩れた尖塔は船を着けていた場所の近くだよ。 まあ、このあたりなのは確かだから、ちょっと船を動かしてみるか・・・。 |
帆をたくみに操って、船を動かすオウル。壁沿いをしばらく進むと、壁に巨大な何かがぶつかったような、大きな引っかき傷を発見した。
ふと見上げると、途中で引きちぎれた縄梯子が柱にからまってぶら下がっているのが見える。
ちぎれた縄梯子までは5、6mはありそうだ。
■マーキュリー To:ALL |
あ、梯子。 でも、ちぎれてますね。 何がぶつかったんでしょうね?あの傷。 |
■カラレナ To:マーキュリー&ALL |
導師の乗っていた船、でしょうか……。 何か衝撃を受けて、遺跡にぶつかったとか? その反動で縄梯子がちぎれたんでしょうか。 |
ぶらさがる縄梯子を見上げて。
■カラレナ To:ALL |
何か工夫しないと……届かないですね(^^; |
■シグナス To:ALL |
えらく、半端な所で千切れてやがるな……。 船が離れて千切れた、って感じじゃないな。 …何にせよ、ここから昇るのが早そうじゃあるな。 |
■リールォン To:オウル |
壁に傷を付けるような巨大なモンスターがこの湖に生息しているって話があったりします? もしそんなのがいたら、ちょっと僕らの手には負えないと思いますケドね(^^; 後考えられる可能性としては、水上都市とは独立した別の遺跡があって、それと衝突したとかですかね。 |
■オウル To:リールォン |
そんな化け物がいたら、俺達漁師は漁なんかできないさ。 他に遺跡があるとも思えんしなあ。 |
■マーキュリー To:ALL、アビィ |
カラレナの言うとおり、調査船が衝突したってことも考えられますよね・・・ 何にしても優先したいのは入口に辿り着けるようすることですよね。 アビィ、お願いできますか? |
舳先に移り、壁に刻まれた傷を見ていたアビィは、その声に振り返った。
緑の瞳に、僅かに懸念の色が浮かんでいる。
■アビィ To:マーキュリー&ALL |
……この傷は大型船がぶつかってできたものだ、あちこちに木片が食い込んでいるしな。 となるとやはり調査隊の船という可能性が高いだろう、漁師の船でこんな大きなものはなさそうだし、他の冒険者としてもこれだけの船を雇えば話題になりそうだ。 マーキュリー殿のおっしゃるとおり、とりあえず、縄ばしごのある柱に登ってみようと思う。 上から見れば、なにか手がかりがみつかるかもしれぬ。 ……マーキュリー殿、よろしければまたロープをお借りできないか。 問題がなければ、登攀補助に使わせていただきたいのだが。 |
■マーキュリー To:アビィ |
もちろん♪ 気を付けてくださいね(^^) |
■カラレナ To:アビィ |
アビィさん、おひとりで大丈夫ですか? |
遺跡の迫力に押されてか、心配そうに尋ねる。
■アビィ To:カラレナ |
……ある日、先行して遺跡を偵察してくると言ったわたしに、ギャルム殿がかけてくれた言葉は「ひとりで行くのか?……頑張れよ」だった。 だが、いまのカラレナ嬢とまったく同じ目つきをされていたぞ(^^) |
■カラレナ To:アビィ |
えっ、そうなんですか(^^; ……う〜、あんにゃろうと同じ反応……(ぶつぶつ) |
何やら口を尖らせていた(笑)
それをみて、目元をわずかにほころばせながら、アビィは肩をすくめる。
■アビィ To:カラレナ |
まあ、今の時点でこの上に、命を代償にしてカースをかけてくるような魔族や、魔剣持ちのミノタウロス以上の敵が待ちかまえているということもあるまい。 ……それに、このところのわたし自身の運を鑑みるに、直後に続いてもらうのは、あまり得策ではないかもしれないのでな(苦笑)。 |
■カラレナ To:アビィ |
かーす? みの?? ……えっと、それじゃ余計心配なんですけど……(^^; と、とにかく、気をつけてくださいね。 |
■マーキュリー To:アビィ |
ギャルムか♪確かに言葉だけは少しひねくれてたかもね♪(^^) でも、直後に続くのは万が一の時危ないけど、登り切ってからなら、もう一人登れる人がいたらその方が良いんじゃないかな。 力仕事が必要な場合も・・・前回はありましたよね(^^) |
■シグナス To:アビィ、ALL |
……あんまり良い癖じゃねえと思うけどな。 けどまあ確かに、ここ昇るのにずらずら並んでもしょうがねえか、気ぃ付けろよ。 にしても、調査船がぶつかったんなら良いとして、それなら船は何処に行ったんだろーな。 |
■アビィ To:マーキュリー、シグナス&ALL |
あの時足りなかったのは力だったが、今足りないのは時間ではないかな。 もしここから全員が登るなら、この遺跡が動かないでいる時間はあと4半刻ほどしかないはずだ。 まず縄ばしごを、それから上を確認してくる、安全なら手を振るので、順に登り始めたほうがいいだろう。 水都が動き出してもそばにあれば、この船もあそこに同じような傷をつけることになりかねん……その場合、行き先がこうなったとしてもおかしくはないな。 |
そう語りつつ、指先で下の方向を示してみせるアビィである。
■カラレナ To:アビィ&ALL |
……い、急ぎましょうっ(^^; |
意識して水面を見ないようにしながら(笑)
■アビィ To:オウル |
オウル殿、ご存じかもしれないが、この柱は可動式だ。 全部動き出したら、この船はひとたまりもないだろうな。 都市が動き出す兆候がみえたら、その時点ですぐにここから離れられるようお願いしたい。 |
一瞬、考え込んだアビィだがすぐに言葉を続けた。
■アビィ To:オウル |
調査船がどうなったかはわからないが、ここにないことだけは確かだ。 お疲れのところ申し訳ないが、我々が探査している間に、調査隊全員が乗れるだけの船を呼んできてはいただけないだろうか。 もちろん、オウル殿や船乗りの方々の休息はとってくださった上でだ。 その場合、どのくらいの時間でこの場所に戻ってこられることが可能かな? その時点での遺跡の場所は、研究所の方に尋ねていただければ計算してくださるだろう。 |
■オウル To:アビィ |
そうだな。じゃあ俺は一旦村に戻ったほうがいいか。 みんなも心配しているだろうし。 こんなことになるなら研究所のやつも連れてくればよかったな・・・ |
■アビィ To:オウル&ALL |
とはいえ、登攀直後に緊急を要する事態が発生する可能性もある。 全員が登ったら、その時点ですぐに岸壁から距離をとっていただきたいが、そのまま半時ほど併走し、こちらが送る光の合図を待ってほしいのだ。 光がぐるぐるまわったら、20人乗りの船の手配をしに戻る。 点滅を繰り返したら、大至急なんとか接岸できる方法を探す。 上下に振られたら、このまま併走して待機する。 左右に激しく振られたらとにかく大急ぎでここから離れる。 合図が見えたら、その印として船の明かりで同じ光を送っていただきたい。 もし、半時経っても合図がなかったら判断はおまかせする。 ……こんな形でいかがだろうか。 |
■オウル To:アビィ&ALL |
うーむ。なにやら難しそうだが・・・仕方ない、やってみよう。 |