05a 賢者の学院、夕刻

ほとんど人が居なくなった学院の一階に、一行は訪れた。受付に座る眼鏡をかけた青年が、分厚い本から目を離さずに話しかけてくる。
■受付の人 To:ALL
ええっと、君達らで最後かな?
書庫を利用する?それとも相談かな?
そろそろ先生達も帰る頃だから、手短にね。

■スカンピン To:受付の人
おお、相談事もいいのじゃな?実は妙な病気みたいなものにかかっている者がおっての。それについて調べにきたのじゃが悪夢にうなされて、激しく髪の毛が抜けるという病気はあるのかのぉ?しかも短期間に。なにやらレプラコーンとかいうの精霊が異常発生してるとそこのリエラが言っておった。

■ミリィ To:受付の人
……そういうわけで、そういった特徴のある病気にどんなものがあるか、とか、さもなければ、どういった書物を当たるのがいいのか、とか……。相談に乗っていただきたいんですけど……。

ここだけの話、大所帯に住んでいる方が発症しているんです。罹患の心配がある病気だと、大変な事になりますし。お願いできますでしょうか?

■受付の人 To:ALL
レプラコーンがいたんなら精神に関係する病気じゃないかな?
書庫の利用なら、2階南端が病気関連の書物がまとまってるよ。
相談なら・・・ああ、精神病を専攻してるガーベラ導師が、こっちに出勤してるね。

■キルリック To:受付の人
ガーベラ導師と言う方は、いきなり行ってもお話を聞いて頂けるのですか?

■受付の人 To:ALL
たぶんもう帰られる頃だから、今すぐに相談依頼するなら間に合うと思うよ。相談料は50Gです。前払いでお願いしますね。

■リエラ To:受付の人&ALL
はい、わかりました。
とりあえず、私が払っておきますね。

お財布から50Gを出して、受付の人に渡す。
■スカンピン To:リエラ
後で清算するからの〜。

■受付の人 To:リエラ、ALL
では、2階南東の相談室1の部屋でお待っててください。
先生を呼んできますので

■オルフェ To:ALL
うーん、私はどうしようかな。
大勢で押し掛けてもなんだし、何人かは本を調べてみるのもいいと思うんだけど。

■受付の人 To:オルフェ、ALL
書庫の閉館もすぐなので、あまり詳しく調べられないかもしれませんよ?
私なんかは、ゆっくり、時間をかけて調べないと気がすまない性質でね(^^;

■スカンピン To:受付の人
時間も無いことじゃし、今回はそのガーベラ導師のところに行かせてもらおう。帰ってしまうと悲しいしのぉ。

■ミリスレスカ To:ALL
そうですね…。どうしてもわからないようだったら、今度は本を調べてみませんか?
少しでも予備知識があったほうが、調べやすいでしょうし。

■オルフェ To:ALL
ふむ、まあ専門家に聞いたほうが確実かな。
確固たる手がかりもないのに探しても、無駄足になりそうだしね。

2階相談室に移動した一行。
着いてすぐに導師衣の老婆も現れ、そそくさと席にすわる。
■スカンピン To:リエラ
わしは精神やら何やら難しいことは苦手じゃ、細かいことはリエラに任るからよろしく頼む。

■ガーベラ To:ALL
私がガーベラです。さ。さっそくはじめましょうか。
どんなご用件でしょうか。

■リエラ To:ガーベラ導師
私はリエラと申します。
先生は精神病にお詳しいとか。
精神の精霊レプラコーンが体内に異常発生する病気について、なにかご存知ありませんか?

■キルリック To:ガーベラ導師
それから、すごい勢いで髪が抜けているようなのですか。

■スカンピン To:ガーベラ
あの分じゃと、すぐつるっぱげになるのも時間の問題というほどじゃった。

■ガーベラ To:ALL
レプラコーンの異常発生に毛髪が抜ける症状・・・。
もしかして、患者は最近まで悪夢にうなされてませんでしたか?
そうであれば「朱頭病」という病である可能性が高いですね。
強い恐怖に襲われると、発病すると言われています。
病状の進んだ患者は、狂暴化して手当たり次第に周囲の者を襲うようになります。
猫背で手が長く、全体的に赤みを帯び、毛髪が抜け落ちたその姿から、特にその状態の患者を「レッドキャップ」と呼んで警戒を促しているのです。

■リエラ To:ガーベラ導師
「朱頭病」ですか…。
初めて聞く病気なのですが、その病気は伝染性はあるのですか?
あと症状の進行速度はどのくらいなのでしょうか?
私達の心配している方は、今日になって初めて髪が抜けていることに気が着いたのですが…。
それと、その病気を治す方法はあるのでしょうか?
また、狂暴化するそうですが、その場合は肉体的な攻撃をするようになるのですか?
例えばですが、魔法的な手段を用いる可能性はあるのでしょうか?

■ガーベラ To:ALL
ええ。めずらしい病気ですからね。
伝染性はあります。とても強いですよ。
患者の「視線」によって感染する非常に珍しい伝染性を持っています。
彼らと目を合わせずに対応するのは至難の業でしょうね。
症状の進行速度はそれほど早くありませんが、最初は表面的な変化がないので、症状が進みきってから気づく場合がほどんどです。
その場合は、突然「レッドキャップ」になったように感じるでしょう。
狂暴化による攻撃は素手によって行われます。
ただし、先ほども言いましたように彼らの「視線」には気を付けねばなりません。

ガーベラは語りながら抱えていた鞄から、ボロボロで分厚いノートを引っ張り出し、あたりをつけてばっと開く。
指先で文章をなぞりながら、ごもごもと読み上げている。
■ガーベラ To:ALL
治療・・・これだわ。「モーナルヴェサリウス」
一般には「でこぼこトマト」の名で知られている薬草の一種で、レプラコーンの大好物と言われているの。
良く熟れた「でこぼこトマト」の絞り汁を「朱頭病」の患者の身体に塗ると、狂暴性を沈静化させ、症状を和らげる効果があるわ。
あと、絞り汁を身体や身に付ける物にあらかじめ塗っておけば、レッドキャップの「視線」による感染にある程度の耐性ができるらしいわね

■リエラ To:ガーベラ導師
えっと、その「でこぼこトマト」というのは、どこで入手することができるのでしょうか?

■ガーベラ To:リエラ、ALL
ちょっと珍しいけど、野菜の1種には変わりないから、運がよければ街の食材市場でも手に入るかもしれないわね。人間にとっては、形の悪いトマトでしかないから、値段も相応の安さでしょうし

■キルリック To:ALL、ガーベラ
今から市場に言ってあるかどうか・・・、銀の網亭とか、酒場も回った方が良さそうですね。
ちなみに、学院には無いのですか?
薬草と言う以上、もしかしたらどなたかが栽培しているとか?

■ガーベラ To:リエラ、ALL
「モーナルヴェサリウス」は山間部で取れる野生種の野菜で、栽培が難しいのよ。
それに、野菜だからそれなりの期間しか保存できないわ。
熟れる前に採取しても、2週間程度かしら

■キルリック To:ガーベラ
そうですか・・・値段は安くとも、やっぱり貴重品みたいですね。

■リエラ To:ガーベラ導師
そういえば、「でこぼこトマト」って簡単に普通のトマトと見分けられますか?
っというか、お店の人に聞けば分かるぐらい有名なのでしょうか?
今の時間から市場に行くとしても、お店の閉まるぐらいの時間でしょうし、できるだけ効率的に探したいのです。
それか、こちらのギルドにいくつかあれば、分けてもらいたいのですが。
先ほども言いましたように、感染の疑われる方がいるので、感染の拡大を早急に防ぐ必要があると思うのです。

■ガーベラ To:リエラ、ALL
素人でも見分けはつくはずよ。店の人も知っているでしょうね。
でも、この学院でも栽培はおこなっていないわ。
残念だけど、手に入れるなら市場を回ってみるしかないんじゃないかしら・・・

■リエラ To:ガーベラ導師
あと、その、一応確認しておきたいのですが、症状が出る前の時にも感染性は高いと考えても良いのでしょうか?
また、今、髪が抜けているとなると、何日ぐらい前から感染していたと考えられますか?

■ガーベラ To:リエラ、ALL
感染しないとは言い切れないわね。視線の感染は「恐怖」の感染。
視線を合わせた人間が「怖い」と感じれば、感染する可能性はあるわ。
髪が抜けるほど進行しているのなら、発病してから最低でも1週間は経っているでしょうね。

■ミリスレスカ To:ガーベラ導師
あ、あの……、質問、よろしいでしょうか?

視線を媒介に感染する、と言われましたが……感染の『射程距離』は、どのくらいなんでしょうか?
たとえば、その……。
「ステージ上の罹患者が、観客席にいる人間に対して影響を与えられる」、
なんてコトは……?

■ガーベラ To:ミリスレスカ、ALL
そうね、視線が合ってしまった人の視力にもよるんじゃないかしら。
レッドキャップの目が見える距離ならば感染する可能性はあるわね。
ステージと観客席がどのくらい離れてるか知らないけど、レッドキャップの目を見て「恐怖」を感じた者ならば、感染ているかもしれないわ。

■キルリック To:ALL
目星が付いたのは良いですが、その感染力や症状を聞いてしまった以上、少なからず、『恐怖』の感情が芽生えますね(苦笑)

■リエラ To:キルリック&ALL
そうですね、ちょっと『死なない男』さんのそばに行くのが怖くなりました。

■スカンピン To:ALL&ガーベラ
とっとと目隠ししてしまうべきじゃのう。少々荒っぽい気もするが、治療中はこんな感じでよいじゃろうか?

■オルフェ To:ALL
でこぼこトマトが用意できたら、私達もすぐに予防をしておかないとね。
あと、サーカス団の団員の皆にも。
……最悪、状況がはっきりするまでは公演も中止にしてもらったほうが、いいのかもしれない。

■キルリック To:ALL&ガーベラ
『でこぼこトマト』が大好物・・・、いたずらの犯人がこの『朱頭病』で凶暴化しているとして、『でこぼこトマト』でその犯人をおびき出せる可能性ってありますか?
あと、発病した人が暴れだすのが夜だけとか、時間帯による発病の差異ってありますか?

■ガーベラ To:キルリック、ALL
いたずらの犯人って何?
発病する時間帯は・・・夜じゃないかしら。
人が恐怖を感じやすい時間帯は夜だし。
患者の狂暴化は特に決まった時間帯で起るわけではないわね。

■リエラ To:ガーベラ導師
あ、実は、その患者と思われる人の宿泊している場所の近くで、最近いたずら、というか嫌がらせが夜中に起きているんです。
物が壊されたり、光の精霊らしきものが目撃されたり、といったようなことなんですが…。
犯人らしい人影を見た人もいるのですが、裸の子どものようだったという話でした。
ただ、ほんの瞬間見えただけらしいので、詳しくは分からなかったみたいなのです…。

■ガーベラ To:リエラ、ALL
こども・・・裸の?それって人間の子供なの?
狂った精霊は、ちょっと霊感の強い人間なら目に見えるというわ。
その子供って、レプラコーンの姿を見間違えたんじゃないかしら?

■オルフェ To:ガーベラ
実際に朱頭病の患者がいる以上、その子供がレプラコーンだった可能性は高いでしょうね。

■リエラ To:ガーベラ導師
…というと、狂ったレプラコーンによって、物が壊されたり、光の精霊が召喚されたりした、と考えられるってことでしょうか?
でも、『朱頭病』と狂ったレプラコーンってどんな関係があるんでしょう?

■ガーベラ To:オルフェ、リエラ、ALL
そう・・・それは少し危険な状況かもしれないわね。
朱頭病の進行で、周囲の自然なレプラコーンも狂いはじめているのでしょう。
でも、いくら狂っているといっても、物を壊したり、他の精霊を召喚するなんて聞いたことないわ。