朝市が開かれている広場と商店街を通り抜け、東の詰め所へとやってきました。中央詰め所より幾分狭い部屋の中、1人の男がデスクに向かっています。
■ジェニファー To:男 |
失礼します。こちらにイーリス様はいらっしゃいますでしょうか? |
■カーガッド To:男 |
我々は領主代行の依頼を受けて調査を行っている冒険者です。 イーリス様に色々お話を聞きたく、伺った次第です。 依頼を受けている証拠はこちらです。 |
そう言うと、カーガッドは懐から調査依頼書を取り出して、デスクに座っている男に見せた。
■男=イーリス To:ジェニファー、カーガッド |
あ、僕がイーリスです。調査依頼書?ちょっと失礼...ふむ、なるほど。 調査ということは資料ですね。いつ頃の、どんな事件のものですか? |
■ジェニファー To:イーリス |
1週間ほど前に起きたという殺人事件についてが1つ。 あと、最近鉱山で死者や行方不明者がでていないかを確認したいのですが。 |
■イーリス To:ジェニファー |
ちょっと待ってくださいね、一週間ほど前だと...えーと... |
少し離れたところにある4つの空席を見て、そのうちのひとつのトレイに載っていた羊皮紙の束を手に取ります。
■イーリス To:ジェニファー |
殺害事件:8日前深夜/場所:商店街はずれ/被害者:2名(男,女)。 男のスラム街住人、身元の詳細不明。 女はナタリエ・ゼルバートン、商店街の雑貨店で住み込み。 双方死亡で、男は喉に、女は背中に刺傷。凶器も同じダガー。 痴情の縺れということで処理されていますね。 鉱山の事件や事故は...とくに報告には上がってないですけど。 |
イーリスの差し出した羊皮紙には、女が背中から刺されていること、男がダガーの鞘に当たるものを持っていたこと、男の喉にダガーが突き刺さっていたこと、現場があまり人目に付かない場所であることから、痴情の縺れと判断すると所見が書いてあり、担当官の署名が書いてあります。
■ウォルフ To:イーリス |
痴情の縺れ、ですか‥‥。 二人に面識があったことはご確認済みなのでしょうか? |
■イーリス To:ウォルフ |
えーと...事件の少し前、ナタリエがそれっぽい男と話しているのを付近の人間が目撃している、とあります。面識はあったみたいです。 |
■キャス To:イーリス |
えっと、ひとついいかな。 さっき、この事件の原因は痴情のもつれって言ってたけど、ということは、男が女を刺して、その後に自分の喉を突いて自殺したってことだよね。 面識があるぐらいの関係で、こんな事件を起こすものかな。 どちらかがずっとつきまとってたとか、一時期付き合ってたとかそんなことはなかったのかい。 |
■イーリス To:キャス |
一目惚れで断られて思い余ってざっくり、なんてこともありますからね。 んー...とりあえず書類には、面識があったとしか書かれていませんね。 |
■キャス To:イーリス |
書かれてませんねって、他人事みたいに・・・。深夜に一目ぼれって、あんたはおかしいとは思わなかったのかい。 |
■イーリス To:キャス |
こんな事言うと不謹慎ですけど...自分の担当ではありませんし、それこそ他人事ですから。こういった事件に心を傾けすぎると、10も担当すれば神経を病んでしまいますよ。 それに、もっとおかしい事件は山ほどありますからね。可能性としては0より大きいですよ。 |
■キャス To:イーリス |
ふーん。そうなんだ。<br>可能性が0か100かになるまで調べるのがあんたらの仕事だと思っていたけど・・・。 |
全く納得していないようである。
■アズラ・ラ・ライト To:独り言 |
うーん、やっぱり何となく不自然な感じがしますでしねぇ。 もうちょっと詳しく知りたいでし。 |
■カーガッド To:イーリス |
出来れば後で担当の方に会わせて頂けませんでしょうか? 実際の現場のお話とかも伺いたいですので。 |
■イーリス To:カーガット |
ええ、わかりました。多分、もうすぐ戻ると思います。 |
■ランバート To:イーリス |
鉱山に限らなくてもいいんですが、その2人の事件以降で死者とか行方不明って報告ありますか? |
■イーリス To:ランバート |
いえ、そういう届け出はでていませんね。 |
■ランバート To:ALL |
うーん、そうなるとやっぱりその2人事件をもうちょっと詳しく調べたくなりますよねぇ。 |
不意に戸外が騒がしくなり、官憲の制服を着た4人の男が入ってきました。2人の男は小さな鞄を掴むと「巡回行きまーす」と出て行きました。イーリスは残った2人うち、大きな髭面の男を呼んでパーティを紹介しました。
■イーリス To:ダイク |
というわけでダイクさん、事件についての調査に協力してあげてください。 |
■ダイク To:イーリス&ALL |
あー?そこの書類に全部書いたはずだぞ。それに事件は解決済みのはずだろ?俺は忙しいんだ、すぐにでもレイモンドさんとこに戻らにゃならん。 まぁ、命令とあれば服従いたしますがね、イーリス所長様。 で、なんだって?手短に頼むぜ。 |
■キャス To:ダイク |
レイモンドさんって、銀の坑道を持っている人だよね。 官憲さんともあろう人が、そんな人のところにそんなに急いで何しにいくんだい。 |
■ダイク To:キャス |
そんなこと、お前らにゃ関係ないだろ。 野次馬なら他をあたれ。俺様は忙しいっていってんだ。わからねえ奴だな。 |
■アズラ・ラ・ライト To:ダイク |
関係……無いとは限らないでしよ? それに、野次馬でも無いでし。 今調べてる事に関係あるかも知れないから聞いてるんでし。 |
■ダイク To:アズラ |
ふん...しかたねぇな、イーリス所長様の顔を立てて話してやる。 レイモンドさんが賊だか暗殺者だかに狙われてるってんだ。 そこで普段からお世話になってる俺様達は、自らすすんで護衛をしてさしあげることにしたのさ。商人の安全を守るのは官憲の役目だからな。 |
そのダイクの話を聞いて、彼が担当者なのは分かっているはずなのだが、何を勘違いしたかカーガッドはイーリス所長に質問した。
■カーガッド To:イーリス |
とりあえずですね、あなたが現場を見たときの話を聞きたいのです。 遺体に何か不審な点が無かったとか、何か気付いたことは無かったですか? その男女の組み合わせはあまりにも不自然な様に思うのですが……。 |
■イーリス To:カーガッド |
いえ、僕は現場には行ってないんですよ。この事件はダイクさんと、そこのボーグさんが担当したんです。 |
■ボーグ To:イーリス>ダイク |
え、あ、いや、おいらはその...(おろおろと困った顔でダイクを見る) |
■ダイク To:カーガッド |
ふん、なんだい、俺様の捜査にいちゃもんつけようたぁいい度胸だな。だいたいどこが不自然なんだ? 現場は人目を忍ぶにゃいい路地裏だ。金を取られた形跡もねえ。夜の夜中に呼び出して、思いを告げたはいいが断られ、思いあまってぶっさして、事の重大さに気付いた哀れな男は自分の喉にダガーを突き立てたんだろ。まあよくある話だろうぜ。 |
ダイクはボーグを捕まえて「ぶっさして」の素振りを披露します。背中から小突かれて膝を突いたボーグの背中に、逆手に持ったダガーをイメージした拳を振り下ろしました。...ボーグは咳き込みます。
■ランバート To:ALL |
それほど面識のないスラム街の住人から、夜の夜中に呼び出されてそんな場所に女性一人で行きますかねぇ? 女性の方も好意を持っていて逢いたいなら出かけるかもしれませんが、だとすれば背中から刺される様な事態にはならないでしょうし・・・ |
■ダイク To:ランバート |
だぁかぁらぁ、呼び出されてのこのこ出て行くくらいなんだから、それなりの関係だったんだろ? 最後の別れ話でもするつもりだったんじゃないか? |
■アズラ・ラ・ライト To:ダイク |
別にいちゃもん付けたくて付けてる訳じゃ無いでしよ? ちょっとした事でも何か別の事に関わる手掛かりがあるかも知れないじゃ無いでしか。 それに、こんな疑問が残る捜査結果じゃ捜査じゃなくてただの推理みたいでしよ。 そういう結果を想定したのなら、もちっと確実な証拠とか、二人の詳しい人間関係とかからの裏付けとか欲しいでし〜。 |
■ダイク To:アズラ&ALL |
別の何かってなんだよ。 じゃあ、お前らがその「確実な証拠」とやらを持ってきてみろよ。名前もない、住居も不定なくっせぇスラムの人間を1人1人絞り上げて吐かせるか?だいたい、そいつが嘘を言ってねぇ保証もないぜ。 女にしたって、世間様に隠れて男と逢い引きしてるんだ、人目にゃ期待できないぜ。 それに、現場の状況から他に納得のいく説明ができるってのか? ....そんなに疑うならお前らが当たってみろよ。俺様の考えをひっくり返せるようなもんを見つけてみやがれってんだ。 |
■カーガッド To:ダイク>PT ALL |
……分かりました。 そう言うことでしたら、こちらでも調べてみることにしますよ。 これでも事件の状況は少し分かりましたので、何とかなるでしょう。 |
■ウォルフ To:独り言 |
‥‥もう一度ギルドに行くべきかも知れんな‥‥。 それともスラム街を探るべきか‥‥。 |
厄介な官憲という輩はどこにでもいるものだな、などと心の中で思いつつ、冷ややかな眼差しでダイクを眺めやるウォルフ。
一方ダイクは、カーガッドの「調べてみる」の言に一瞬狼狽した表情を浮かべます。
■ダイク To:カーガッド&ALL |
ぐ...ふ、ふん。せいぜい頑張りな。 それじゃあもう行かせてもらうぜ。おら、ボーグ!のろのろすんな! |
どかどかと出て行くダイクを、大小の荷物を抱えたボーグがよたよたと追いかけていきました。