雨の旧街道をひた走るハティノスとライラックは、半刻を待たずして
小高い丘ひとつ挟んだ「紅の谷」の入り口付近に到着した。
乗馬の疲れをものともせず丘を登り詰める。
ようやく谷の入り口を見下ろせる場所まで来たその時、谷から十数体の人影が踊り出て、一行とは反対の丘を目指して駆け上がっていくのが見えた。
■ハティノス To:ライラック |
ライラックさん、あれ! よく見えないけど、リシィアさん達が追われているのかも 追いかけましょう! |
■ライラック To:ハティノス |
は、はいっ (小声で)・・・・数が多い・・・・囲まれてないと良いけど(汗) |
人影を追って丘を下るも、その集団に追いつくことはできなかった。さすがに距離が詰まり、その姿を確かめることができた。夕べの骸骨たちだ。その中の数体が立ち止まり、武器を構えてこちらを見ていたが、すぐにきびすを返して反対の丘へ駆け上がっていく。その時だ。谷の奥の方から人間の話す声が、谷に反響して聞こえてきた。内容はわからないが、そう距離はなさそうだ。
■ハティノス To:ライラック |
これは・・・ こんなところにいるとしたらリシィアさん達か敵の親玉か・・・ 行って見ますか |
切立った崖の間を、少し急ぎながらも慎重に進むハティノスとライラック。
進むにつれて谷の幅は次第に狭くなり、ついには5,6m幅の岩壁が見える所まで来た。
そこには、先ほどの一団とは異なる骸骨達が、整然と並び待機している。その中央では、一際大きい骸骨が、手に持った棒切れを、まるで舞うように振り回している。
■男の声 |
の女…れてんのか!? 顔をひっぱたいてみろ、アズラ! |
男の怒鳴る声。今度は聞き取ることができた。
ふと見上げると、切立った崖の上に、1本のロープが渡されているのが見える。しばし様子を伺っていると、崖の両方から声が聞こえるのがわかる。どうやら谷をはさんで何かやりとりをしているようだ。
■ギャスパー |
合図をしたら、アンタも一緒にロープを引っ張ってくれよ! |
■ハティノス To:ライラック>ALL |
あの声、ギャスパーさんだ! みんなそこにいるんですか?!! |
■ライラック To:ハティノス |
もしかして向こうの崖に渡ろうとしてるんでしょうか? そしたら・・・・あの骸骨達と鉢合せしちゃうんじゃ?(汗) とにかく、みなさんのいる辺りまで登る方法を考えないとっ |
突然、ザザッ!と大きな音が聞こえる。
隊列を組んだ骸骨達が一斉に足を踏み下ろす音だ。
どうやらこちらに気づかれたらしい。
前列の5体が、槍を構えてこちらに突撃してくる!!