イグレッタは振り返って、唇に指をあてるとみんなを手招きした。

きょろきょろと周りを見渡す。入り口を探してるらしい・・

勝手口を示すとすたすたと向かった。

勝手口の戸を叩いて、開いた。

はっとして振り返り、イグレッタの姿を見るとパッと薬瓶を手に取り、後ろ手に隠す。

即答（笑）

イグレッタはずかずかと入っていく。

ソニアの目の前に立つ。

思わず大声が出る。

薬を手にとってつぶやく。

ソニアの瞳に危険な光が宿る。

ソニアは首を横に振り、一気に薬を鍋に放り込もうとする―――。
しかし、右手は鍋の上でピタリと止まった。
顔には恐怖の色が浮かんでいる。

イグレッタがその視線の先を見ると―――
そこには一人の男が立っていた。それが、ソニアの夫　ヌルだった。
ソニアの大声を聞き、キッチンへ様子を伺いに来て、話を聞いてしまったらしい。顔は怒りで紅潮している。

側にあったナイフを掴み、男がソニアに切りかかった！！

イグレッタとソニアのやり取りを黙ってみていたランスだったが、
ヌルが凶行に走った瞬間を見逃さなかった。ヌルの手首をがっちりと
掴み、ねじ上げていく。

限界までねじられ、その手からポトリとナイフが落ちる。

ナイフを落としたのを見計らい、ヌルの鳩尾に拳を一発喰らわす。
ヌルは体をくの字に曲げて、その場に倒れた。

イグレッタが襟首を掴み上げて、ヌルを起こすと物騒に笑った。

思いっきり殴り飛ばした

返事は無い。気を失っているようだ。

コロンコロンコロン・・・

ソニアも腰を抜かし、手に持っていた瓶が床に転がる。

謎の歌を歌いながら器用にヌルを縛り上げる。

ランスはちらばった薬を丁寧に集めてから、ソニアに話しかける。

放心状態から立ち直ると、ソニアは観念し　ぽつりぽつりと話し始めた。

聞けば、結婚直後から暴力は始まり、離婚を申し出たが断られ、逃げれば実家にまで追いかけて行き、家に火つけて　お前の両親ごと焼き殺すと脅されていたと言う。

ヌルを睨み付ける

いつしか、いっそ夫がが死んでくれれば良いのに・・・と思うようになったと言う。そんな時、掃除の最中に偶然ドランブイらしき薬を見つけ、これを夫に盛ろうと、盗んだのである。

おかしな事だが、ほっとしたような安堵の表情を浮かべているように見える。

立ち上がって、奥の部屋へ行き、１通の手紙を持って戻ってきた。

目に涙を浮かべお礼を言うと、着の身着のままでソニアは出て行った―――。