エストン山脈(森林) |
アフルの声が聞こえたので、クロスとジェリーはその場で待つことしばらく………
森の奥の方から二人がいる場所に向かって、茂みを掻き分けながら近づいて来る音が聞こえてきた。
茂みを掻き分ける音だけではなく、話し声も同じく聞こえる。
■クロス To:みんな |
おーい! …あれ? バーンたちじゃない…? |
現れたもの達は、バーンではなかった。もちろん、パーティーの仲間でもなかった。
煌びやかな服の青年が一人といかにも冒険者風な男が4人。そのうちの真ん中にたっていた煌びやかな服の青年は二人を見ると前に出てきた。
■煌びやかな服の青年 |
なんだね、君達は? |
■クロス To:煌びやかな服の青年 |
…見たとおり、冒険者ですよ。そういうあなたは? |
言いながら青年の出で立ちと、付き従ってる冒険者の様子を観察する。
腕につけている盾に紋章が描かれている。その紋章は先ほど見た剣に刻まれていた紋章………ゴート家のものであった。青年自身には一目して大したそれほど腕があるとは思えない。
逆に後の冒険者達は一目して熟達されたものだと分かった。武器、鎧ともにかなり使い込まれており、身のこなし、眼光と共に隙がない。
■青年 To:クロス |
私も見ての通りの冒険者だ。 ところでここら辺にグリフィンが住む崖があるのだが、知らないのかね? |
そのときジェリーがクロスの脇に来た。
■ジェリー TO:クロス |
ゴート家の紋章っすねぇ‥‥‥。 |
■クロス To:ジェリー |
そのようだね。 …教えて上げちゃっても、いいのかい? |
■ジェリー To:クロス |
いいんじゃないすか、別に。 あたしゃ剣に興味なんざないっすし。 |
■クロス To:ジェリー |
剣? いや、崖の事なんだけど…まあいいや。 |
青年の方へ向き直る。
■クロス To:青年 |
その崖なら知ってる。でも、悪いね、僕らが先にお邪魔させてもらったよ。 あ、でも手を付けてない巣もまだ有るかも知れないね。 |
■青年 To:クロス |
ふむ。………で、その巣なのだが。 そこに私の剣があったと思うのだが、見なかったかな? この盾に書かれているものとおなじ紋章がある。 |
ちょうどそうやって話し合いをしてるところに、バーンの先導の元、残ったものがやってきた。
その先頭に立っていたバーンを見て、青年の表情に困惑と驚愕の表情が浮かんだ。
■青年 To;バーン |
バ、ババンババンバン………バーン!? なにゆえ、君がここにいるのだ!? |
なにはともあれ、森の中で出くわしたこの衣装の派手派手な青年はバーンの最も苦手とする人間、ライナスであった。(詳しくは#53参照)
一行は矢継ぎ早に質問を浴びせかける。
■メルディス To:ライナス |
おやおや。 珍しいところで珍しい人に会いますね。 |
■バーン To:ライナス |
(クロスとジェリーを視線の先に認めつつ) ライナス!? ご無沙汰してますね。壮健でしたか? |
■ソフィティア To:ライナス |
あら、ライナス君じゃないの、奇遇ねーこんなところで会うなんて。 |
装飾品を、これでもかというほど身に纏ったソフィティアも追いついてきた。
■アフル To:ライナス |
どうしてこんな所にいるんですか?(^^;;あ、また誰か気になる人でもできたとか?(笑) |
ライナスが返答しようとする前に、クロスが先にみんなに質問をした。
■クロス To:バーン、みんな |
なんだ、知り合いだったのかい? |
再会の喜びの表明はとりあえず後にして、素朴な疑問をただすことにした。
■バーン To:クロス |
…ええ。 (様々な場面が走馬灯のように思い出され一瞬渋面を作る) 「鍛錬を怠らずに長じれば、ひとかどの剣士になれる」と俺が思う人物です。ついでに言えば賢君ライエル・ゴート男爵のご子息でもあります。 |
よくよく聞けば当たり前の人物評を、さも大仰に聞こえるよう脚色するバーン。
■ソフィティア To:クロス |
ひょいなことから、彼とパーティーを組んだこともあるのよ。 |
■ライナス To:ALL |
まぁ、そのようなことはどうでもよい。 それより私の剣を見なかったかどうか聞いておるのだが、どうだったのかね。 |
■ソフィティア To:ALL |
剣って、やっぱりあれのことかな? |
トーイの方をすこし振り返りながら仲間に問い掛ける。
■ソフィティア To:ライナス |
いまさっきグリフィンとやりあってた時に剣一本拾ってきたけど……。 |
■ライナス To:ソフィティア |
おぉ、ありがたい。 つい先日グリフィンに襲われてな。不覚にも剣を奪われてしまったのだよ。 というわけで、返してもらえると嬉しいのだが……… |
どうもこいつには人の下手に出ることが出来ないようである(笑)
■バーン To:ライナス |
持ち主に返すのは吝かではありませんが、我々もグリフォンと戦い、死線を潜り抜けてこれを獲得したのです。 報酬の代価となるものをいただけないとお渡し出来かねます。 |
■ライナス To:バーン |
何を言うのかね。 君が今言ったとおり、正式な持ち主は私なのだよ。 それに私の家の紋章が入っているのは見ての通りだ。売ろうと思っても売れまいよ。 それに見ての通り、ここに護衛はちゃんといる。グリフィンの一体や二体楽に倒せる程の実力の持ち主だ。君たちが回収しなくても、私達で回収できたのだよ。 |
■メルディス To:ALL |
確かに持ち主に返すのが当然でしょうね。 まぁこういう時、たいていの場合は「ささやかな礼」が帰ってくるんですが。 |
■ライナス To:バーン、メルディス |
ふむ、なるほど。 それでそのささやかな額とはいくら欲しいのかね。 |
■バーン To:ライナス |
あなたがそちらにいる腕利きの方々に払おうとしている成功報酬の同額で結構ですよ。 おいくらですか? |
しばらく渋そうな表情で口をつぐんでいたライナスは、その表情を変えずに口を開いた。
■ライナス To:バーン |
………グリフィンの巣で見つかった分を全部渡すことになっていたのだが………。 |
見ると後にいる4人は苦笑いを浮かべつつ様子を見ている。
■バーン To:ライナス、ジェリー |
(微かな憐憫の表情を浮かべながら) 全て引き上げた訳ではありませんが、財宝は約2万程度の価値はあると思いますよ。 そうですよね、ジェリーさん? |
■ジェリー To:バーン |
え〜………まぁ、そんなもんっすかねぇ……… |
■クロス To:バーン・ジェリー |
僕らがとってきた分については、ゴート家の若様から情報をもらったわけでも何でもないから、それとは別に払ってもらわないとだね? |
クロスに同意を求められたジェリーはしばらく視線を泳がせていた。が、ライナスを見て、それから後にいる4人を見てから苦しそうに答えた。
■ジェリー To:クロス |
え、うえぇ………あたしゃ〜、返しても構わないっすけど……… |
■ライナス To:クロス、バーン |
まぁ、いずれにしても君たちがとってしまった以上は、払おうにも払えまい。 ないも同然。実質的に「0ガメル」だ。 というわけで、素直に返してもらいたい。 それとも、その2万ガメルを全部払えというのかな? |
■クロス To:バーン・それとなくライナス |
僕らは別に、高利貸しなわけじゃないしね、メルディスが言ったように、ささやかな…いわゆる“気持ち”程度で良いと思うよ。 無くして困っているのなら、それを助けるのは本来やぶさかじゃないしね。 やんごとなきお方の手助けが出来たとすれば栄えある冒険だし、僕としては、受けたお礼も歌にして、オランの酒場で歌おうかな♪ |
メルディスも何気なく後ろの4人組みを見てみる。
■メルディス To:ライナス、ALL |
んー、いくらなんでも2万を払えと言うのは横暴でしょう? 俺の「ささやかな礼」というのは、本当に言葉通りの意味で言ったんですが。 せいぜい、オランに戻った時にやる宴会費でも出してもらえれば、俺は文句ないですよ。 |
■ライナス TO:クロス |
………良かろう。その剣のおよそ一割だ。 400ガメルで引き取ろう。文句はあるまいな? |
クロスは、良いんじゃないのかな? という表情でバーンを見る。
■バーン To:クロス、ジェリー |
(憐憫から一転、あからさまに嫌そ〜な顔をしつつ) う〜ん、ウィンドレスクロスボウの投資の事もあるからお金はできるだけ欲しいんだけど、しょうがないかな… (そこでツツっとジェリーに近寄り耳打ちする) ところでジェリーさん、あの「腕利き」のパーティー達から情報を横取りして出し抜いたんなら、俺達の取り分をもう少し多めにもらえませんかね? あの方々はあなたのパーティーメンバーなんでしょ?口裏合わせてもいいですよ。 |
■ジェリー To:バーン |
イヤ、別にそういうわけじゃないんすけどね。 あのうちの一人があっしのいわば、上役なもんで………あんまりもめ事起こしたくなかったもんで(〜^; |
■バーン To:ジェリー |
なるほどね〜。(-_-) |
いつものポーズで考え込むバーン。ジェリーの発言の内容とライナスの現状を考慮し、揉め事を意図的に起こして状況をパーティーに有利な方向に導くよう模索しているようだ。数瞬の後、何かを思いついたように手を叩きライナスに向き直る。
■バーン To:ライナス |
ではこうしましょう。 我々の依頼は一応無事に済みましたので一旦オランへ戻り、分配金の精算を致します。 後刻、お父上との先般のお約束もありますし、不躾ながら久し振りにお目にかかりたいので御領地へご返却に伺わさせて頂きます。 紋章の剣はその時お父上にお渡ししますので、よろしくお伝えください。 |
ジェリーの上役が見ている前で分配金の発言をして言質を取り、併せて剣を奪われたライナスの失態をライエルに報告する形を見せてやんわりと「ささやかな謝礼」を導き出そうとするバーン。
■ライナス TO:バーン |
それは困る。 少しは腕を上げてから家に戻ることを約束した手前、家に戻るわけには行かないのだ。 (懐から金貨を取りだしながら) この通り、先ほど言った金はあるから早くかえしてくれ。 |
しかし、相変わらず人の手に頼ってばかりいるバカボンが帰れる日はいつ来るのか………(笑)
■メルディス To:バーン、ALL |
バーン、もうよいでしょう。 ライナス氏とは多少なりとも縁のあった間柄です。 その氏の弱みにこれ以上つけこむような真似は俺はしたくありません。 400ガメルで十分ではありませんか? それで足りないようなら、俺の分の分け前を減らしてください。 |
■バーン To:メルディス |
メルディスさんがそこまで言うなら… (ニッコリ笑い) それじゃあ剣は返してあげて下さい。 |
トーイに近づき、背中に括り付けてある件の剣を取り出す。
■メルディス To:ライナス |
この剣で間違いありませんね? |
■ライナス To:メルディス |
おぉ、これだ、間違いない。ありがたい。助かった。 礼を言う。これが引き替えの400ガメルだ。 |
いいつつ金貨袋をメルディスに手渡した。
しかし感謝してるときでも態度がでかいのは変わらないようである(笑)
報酬の引き渡しが終わったところで、ソフィティアは先ほどから抱いていた素朴な疑問をライナスにぶつけてみた。
■ソフィティア To:ライナス |
ところで、なんでグリフィンがライナス君の剣もってるわけ? |
■クロス To:ライナス・ソフィティア |
たしかグリフィンに襲われた、ってさっき言ってましたけれど、何があったんですか…? |
クロスもちょっとその時の状況に興味がわいたようだ。
■ライナス To:ソフィティア |
ふむ、それがだな………。 家を出て修行を始めてからこの森でしばらく野営をしていたのだが、グリフィンの谷が近くにあるとは知らなくてな。 いつものように剣を降っていたらグリフィンが急に空から襲ってきたというわけだよ。 応戦したのだが、私では全く歯が立たなくてな、結局こういうことになったのだ。 |
■バーン To:ライナス |
応戦? (懐疑的なまなざしを残しつつ) …とにかく、お互い生命があっただけでも良し、と思わなくてはいけませんね。 それはそうとしてグリフォンと応戦できた位実力を付けているなら久し振りに仕合をしてみたいですね。 どうです、一緒に汗でも流しませんか? |
■ライナス To:バーン |
ふ………今度こそ負けはせぬ。 |
■バーン To:ライナス |
どうでしょうかね。教えた事の半分でも出来るようになっていれば良いんですが… |
勢い二人して腰の剣に手をかけた二人だが、そこへ冷静な突っ込みが入った。
■ソフィティア To:バーン |
バーン、そんなことよりジェリーのことが先でしょ。ライナス君と仕合たいのなら後回しにして。 |
■ジェリー To:ソフィティア |
え〜………なんか問題でも? |
■ソフィティア To:ジェリー |
「なんか問題でも?」じゃないでしょ〜、いきなりあんな事しておいて。 だいたいシーフがあんな落ち方するわけないじゃなの。 |
笑顔を保ち続けるソフィティア。でもこめかみに青筋がくっきり浮かんでいる。隻眼だとちょっと怖そう(笑
■バーン To:ジェリー |
欲に目が眩んだか、 それとも止むにやまれぬ事情があったか知らないけど、 金銭授受の契約を結んだにもかかわらず 財宝を持ち逃げしてとんずらしようとしたのはいただけませんね。 今なら事情は問いませんから、オランへ戻って分配しちゃいましょう。 |
■ジェリー TO:バーン |
へぇ、欲に目がくらんだんっす。 どうもすいませんっす……… |
■ソフィティア To:ジェリー |
まぁ、判らないではないけどね〜。 |
自分の身に付けているものをしみじみと見る。
■ソフィティア To:ジェリー |
でも、それはそれ、これはこれ。オランに着くまで財宝はこっちで預かるけど文句無いわよね? |
■ジェリー To:ソフィティア |
へぇ、文句ねぇっす………。 |
■バーン To:ソフィティア、ALL |
…決まりだね。 何とか無事に収まって良かったよ。 さあ、オランへ戻ろうか。 |
■メルディス To:ルード |
そっちはどうされるんです? 一応、依頼の剣は手に入りましたよ(笑) |
以前、別の件で4人の冒険者にあったことのあるメルディスは気さくに話しかけ始めた。
■ルード To:メルディス |
(苦笑しつつ) そうだなぁ………久しぶりの大もうけが見事にお流れだからなぁ………。 依頼条件も拘束される理由もなくなったし………前金をもらってるわけでもないから、このままとっとと帰るかな。 |
これを聞いたライナスは大慌てである。まだ一人で帰れるほどの自信も(ついでに実力も)あるわけではない。
■ライナス TO:ルード |
ちょっ、ちょちょっ、ちょっと待ってくれ給え。 今帰られたら困るのだ。 |
■ルード To:ライナス |
………護衛料はその剣の額ぐらいかな。 |
■ライナス |
そ、そんなぁぁぁぁぁ〜〜〜 |
■アップル(こころの声) |
なにか、複雑な(人間)事情があるみたいね・・^^; |
一悶着あった後に何とか帰路に就くことが出来ましたとさ。