未だ解けない呪い
オランの街 リトナル商会前 |
■ リファ To:アニエス |
アニエスぅ! あっそっぼ! |
暖かい日射しが降り注ぐ、静かなオランの下町。
元気な子供達の声が、通りに活気を与えていた。
リトナル商会 アニエスの部屋 |
■ アニエス To:ゴンタ |
は〜い! 今行くぅ! ゴンタ! 行くよ! |
■ ゴンタ To:アニエス |
わふっ! |
元気良く返事をして部屋を飛び出したアニエスを追って、床に寝転がっていたゴンタと呼ばれた犬も跳ね起きた。
■ アニエス To:ミーシア |
ママぁ、リファと遊んでくるね! |
■ ミーシア To:アニエス |
遅くならないうちに帰ってきなさいね。 |
階段を駆け下り、アニエスは外へと飛び出していった。
■ ミーシア |
ゴンタも、すっかりみんなの人気者ね。 あの人も、早く戻ってこないかしら……。 |
ふと、淋しげなため息をもらし、ミーシアは愛する夫を思った。
遠くの山 名も無き遺跡 |
■ バートン |
……う、うぁぁぁぁぁぁぁ! |
背後に迫る大岩から、バートンは必死の形相で逃げ続けていた。
■ バートン |
ミーシア、アニエス! パパは、必ず生きて戻るぞぉぉぉ! |
手にした全く表情というものに欠けた像を懐深くしまい込みながら、バートンは洞窟の中を駆け下りる。
岩は、徐々にバートンとの距離を狭めている。
■ バートン |
……はははは、こりゃ駄目かもな……。 |
バートンが諦めかけたその時、前方に明かりが見えた。懐かしい、太陽の光が!
■ バートン |
! 助かったぞ! ミーシア! アニエス! おみやげ持って帰るぞぉぉ! |
バートンは、その人が一人通れるほどの穴から飛び出した。
……虚空へと。
■ バートン |
な、なにぃぃぃ! |
落ちた拍子に懐からこぼれ落ちた像を空中で掴みながら、バートンは、いやらしい笑みを浮かべているその像と目があった。
にやり、と言う形容詞がピッタリとくる笑みを浮かべた……。
■ バートン |
! これは売れるぞ! |
こうしてまた、売れない怪しげな宝物が、リトナル商会に並ぶことになるのだ。
……バートンが、生きて帰れたら、の話だが。