Sword World PBM #25

「天使のつるぎ」



エピローグ




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エピローグ

 イェルクを預かってくれるというラストール導師は、多少変わり者だが悪人には見えない人物だった。ちょっと2メートルを超えるムキムキの巨漢だったり、話し言葉が女言葉だったりする程度だ………。ちょっと怖かったが慣れるとまあ大丈夫。
 導師がイェルクに与えた部屋は、元は精霊に関する実験を行うために作られたという全面鉄板張りの部屋だった。分厚い鉄板が精霊力を遮断する作りになっているが、どちらかというと鉄の牢屋である。最初にその部屋を見せられた時は誰もが不安を禁じ得なかったが、導師とその弟子が余った家具などを持ち寄ってくれたおかげで、今ではやや殺風景なもののごく普通の部屋としての体裁は整っている。
 導師も弟子達も、イェルクのことはすぐに気に入ったようだった。素直で可愛い女の子というのが男ばかりの弟子達の興味を引かないはずもない。ぶっきらぼうな言葉遣いすら、誰も気にしないどころかますます興味を集める要因にしかならなかった。まあそれはそれで、イェルクが孤独な思いをせずに済むということでもあるのだが。

 イェルクは結局のところ、事実上の幽閉状態になった。外部のものが面会するだけでもかなり面倒な手続きを踏まされるし、イェルク自身が外に出ることは許されなかった。三角塔から出るのはもとより、部屋から出ることすら1日1回程度だ。イェルクに会いに行くと、いつも孤独そうではないがとにかく退屈そうだった。

 導師は自分に任せるように言っていたが、イェルクを元に戻すというのはいかにも多難そうだった。その方法が見つかるまでは、イェルクはずっと幽閉状態のままということになる。
 彼女が助かるのか、それとも魔神に意識を食い尽くされてしまうのか、今はまだ分からない。

 分からないということだけが分かっている。


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ゆな<juna@juna.net>