集結

(1998/04/20 更新)


クロスとマーズが盗賊ギルドを出たのは、暗くなる少し前のことだった。盗賊ギルドから近かったこともあり、本来予定にはなかったが「銀の網亭」へ寄って預けた全員分の装備を回収する手はずのセリス&シーアン組と合流することにした。
ところが銀の網亭に着いてみると、セリスとシーアンはまだ来ていないという。どうやら、まだキルティングの家でてこずっているらしい。

■銀の網亭
☆From:クロス  To:マーズ
(おやじにセリスとシーアンがまだ来てないと言うことを聞いて)
どうでしょう、ここは僕たちがみんなの装備を持って、キルティングの家へ向か うというのは。セリスとシーアンはキルティングの家から銀の網亭へ来るはずですから、こっちへ向かっていれば途中で出逢うはずですよ。
それに、どっちみちキルティングの家は僕たちがラーベナルトの家へ行く道の途中にありますから。

■銀の網亭
☆From:マーズ  To:クロス
そうですねぇ。
そのほうが効率的ですから、とどけてあげましょう。

だが、預けた装備は全員分で槍2本、弓2本、ハンマーに鎧2着。2人で全部運ぶのはちょっと骨が折れそうだ。
クロスとマーズがなんとか全員の装備を持って行こうとがんばっているまさにその時にセリスとシーアンがようやく銀の網亭に到着した。心なしかちょっと疲れているようにも見える。

■銀の網亭
☆From:シーアン  To:セリス
 けっこう遅くなっちまったな。
クロス達も来たんだろうか・・・。
(と言いながら、ドアを開けてあげる)
(セリスの頭越しに)
おい、あれクロス達じゃないか?
おーい、おまっとさん!

かくして、クロス、マーズ、セリス、シーアンの4人は無事再会を果たした。
しかし無事を喜び合う暇もなく、宿を飛び出して目指すはラーベナルト邸。道すがら、クロスが銀の網亭に行きがてらマーズに説明した事を、セリスとシーアンに話した。

■ラーベナルト邸への道すがら
☆From:クロス  To:シーアン・セリス
急ぎましょう。実は結構まずいことになってるんですよ。
(と言いながら、クロスはギルドでもらってきた手配書を二人に見せる)
これ、アンナさんの似顔絵です。
今回のシャレゼール家がらみのごたごた、もう裏ルートには知れ渡ってるみたいなんですよ。
彼女には1000ガメルの賞金がかかってます。

■ラーベナルト邸への道すがら
☆From:シーアン  To:クロス
 賞金?!
そりゃヤバいな。実は、キルティングの家にも怪しげな男達がうろついていたらしい。
もしかして賞金をかけた奴と同じ奴等か?
それとも、その手配書を見て、話に乗った奴等か・・・。

■ラーベナルト邸への道すがら
☆From:クロス  To:シーアン。及びセリスとマーズにも。
おそらくそう思って間違いないでしょう。僕たちもうかうかしていられません。
ラーベナルトの家にも、もう手が回ってると考えたほうがいいです。
……下手すれば、ちょっと荒事になるかも知れませんね。

■ラーベナルトへの道
☆From:マーズ  To:誰か
そういえば僕、なんか変なパフェを食べたんですよぉ。
そのパフェにはお酒がかけてあってですねぇ、食べたら男の人がまたお酒をくれたんですよぉ。
それで、なんかパフェ食べただけなのに、誉められたりとかしてですねぇ・・・・。

あいかわらず緊張感の無い某プリーストは、チョコレートパフェの味を思い出したように細い目をより細めた。

4人が「銀の網亭」を出た1時間程前。
カナルとアフルは、「ルーブル」から帰宅するラーベナルトを尾行(護衛とも言う?)してラーベナルトの自宅前へ来ていた。他の4人の姿は見えない。どうやら一番乗りだったようだ。
2人はラーベナルトが無事に自宅へ入るのを見届けた。

■ラーベナルト自宅前
☆From:アフル  To:カナル
さっきのは絶対に見つかってたよな。
でも、何も言わないって事は、俺達が本当にローンドファルに頼まれたって分かったんだろうな。
一応俺は裏の方に回っておくから、セリスたちが来たら呼んでくれよ。

■ラーベナルト邸前
☆From:カナル  To:アフル
だろうな。 今日はなぜか調子が悪いな。気を入れ直すか……。
それにしても、他の奴らは遅いな。まあ、クロスとマーズは心配ないだろうが、セリ スとシーアンは大丈夫か?
騎士なら、自分が死んでもお姫様は守ってくれると思うが。
俺達も、わざわざ外で待たなくても、家の中で待たせて貰って良いんじゃないか?

■ラーベナルト自宅前
☆From:アフル  To:カナル
それもそうだな、それじゃあ中で待たせてもらおうか。

2人がラーベナルト家の扉を叩くと、下男が出て来た。通いでこの家で雑用をこなしている使用人のようだ。彼がカナルとアフルの意向をラーベナルトに伝えると、ラーベナルトからは応接間を使っていいが話は全員が揃ってからにしてくれという返事が返ってきた。
この間、ラーベナルト自身は2階の自室にこもって姿を見せなかった。

2人は、それならばラーベナルト家に入る前に他のメンバーと情報交換をしておいた方がいいだろうと判断し、やはり外で待つことにした。どっちにしろ目的はラーベナルトの護衛(見張り)なのだから、外にいて入り口を張れば問題ないだろう。

■ラーナベルト邸前 
☆From:カナル  To:アフル 
それじゃ、裏口は頼んだぞ。

■ラーベナルト自宅前
☆From:アフル  To:カナル
あと、店番がラーベナルトが朝からそわそわしていたって言ってたぞ。 多分アンナがいなくなった事を朝から知ってたんじゃないのか?

アフルは裏口に行きかけて思い出したように振り返り、そう付け加えた。アフルが裏口に回るときに2階の正面左側の窓に人影が見えた。そこが主人(ラーベナルト)の私室のようだ。
それから他の4人が来るまでの1時間程の間、特に異常は見られなかった。

4人はようやくラーベナルト邸が見えるところまでやってきた。
ラーベナルト邸はこぢんまりした2階建ての建物だった。1階は、正面の大きな玄関の両となりに小さな窓があり、裏口は正面玄関の反対側にある。2階は、正面と向かって左側に窓があるが、右側と裏には窓がない。左側の窓は開いていて明かりが点いているのが 見える。家の回りは花壇になっている。石畳の街オランでは珍しい。誰が手入れしているのか、何やら花が植えられている。

■ラーベナルト邸近くまで来て
☆From:クロス  To:シーアン・セリス・マーズ
ちょっとまって、みんな……
(クロスは短く声をかけてみんなを制すると、ラーベナルト邸の周囲に不審な者がいないか探す。この状況なら、必ずどこかにいるはず……どこに潜んでいるか押さえておいた方が後々有利だろう)

(シーフ技能 捜索判定(不審者が「いる」ことを前提にどこにいるか探すとのことなので +4 付き): クロス、2D の値は 9 で達成値 17、敵の潜伏の達成値は 2D が 11 で 16。判定成功) その結果、クロスはラーベナルト邸近くの物陰に一人のアヤシイ男を発見した。向こうもクロス達に気づいているようだが、今のところ動く様子はない。クロスたちの出方をうかがっているようだ。
男までの距離はクロスから 60 メートル離れている。
(2D×5m)

■ラーベナルト邸近く
☆From:シーアン
(心の声)  おお、なんだかクロスがかっこいいぜ。
俺も気合入れなきゃな。
(剣の柄に手をやる)

シーアンが腰のバスタードソードに手をやったのを見て、男はいつでも逃げられる体制を取った。セリスは荒事が嫌いなので状況を見守っている。シーアンのようすを見て男に気づいたマーズが男に声をかけた。

■ラーベナルト邸近く
☆From:マーズ  To:男
ん?
僕たちに何か御用ですかぁ?

マーズの呼びかけに、男はすっと身を引き、角を曲がって姿を消した。どうやらマーズたちに御用ではなかったらしい。

■ラーベナルト邸近く
☆From:シーアン  To:マーズ
(男が姿を消して)
あっ・・・
(マーズの方を向く)
(のほほんとしてる姿を見て)(^^; (心の声)ま、しゃーねーか。用があればまた出てくんだろ。


カナルとアフルがラーベナルト邸の護衛を始めてから、1時間半ほどが過ぎ去った。あたりは既に真っ暗になっている。少し前は帰宅を急ぐ人たちで人通りも多かったが、今はそれも落ち着いているようだ。カナルとアフルは裏と表に別れて張込んでいるが、異常の起こったようすはない。いいかげん肌寒くなってきた頃、ようやく他の4人が姿をあらわした。

■ラーナベルト邸前
☆From:カナル  To:遅刻者(^^;;
遅いぞ。
アフルが今裏口を見てる。ラーベナルトは俺たちが揃ってから会うそうだ。
家に入る前に、それぞれの情報を交換しといた方がいいだろうな。
クロス、アフルを呼んできてくれないか。

特に集合時間が決められていた訳ではないのだが、ルーブルでもじりじりと根気のいる張込みをし、さらに1時間半も待った後では文句のひとつも出てくるというものだ。
ようやく全員が合流したところで、セリスが皆の労をねぎらった。

■ラーベナルト邸前
☆From:セリス  To:ALL
皆さん、ご無事でしたか。よかったです。
(ううむ、役に立たない奴^^;)

■ラーベナルト邸前
☆From:カナル  To:セリス
ああ、別に何もなかったからな。
そっちは、何か分かったか?

パーティはすぐにラーベナルトの家に入らず、まずこれまでにお互いが得た情報を交換して少しでも現状を把握するように努めることにした。

まず、カナルとアフルのルーブル監視班からの報告だ。

■ラーベナルト邸前
☆From:カナル  To:全員
ルーブルの方では変わったことはなかった。
店番がシャレーゼル家に使いに行ったが、どうやら俺たちの裏を取りに行ったみたいだな。
(アフルに向かい)
他に何かあったか?

■ラーベナルト自宅前
☆From:アフル  To:ALL
あ、あと、店番に聞いたんだが、ラーベナルトが朝からそわそわしていたらしい。
多分アンナがいなくなった事を朝から知ってたんじゃないのか?

続いて、クロスから盗賊ギルド班の成果が報告された。

■ラーベナルト邸付近路上
☆From:クロス  To:みんな
じゃあ、シーフギルド筋の情報を整理しますね。
まずシャレゼール家にごたごたが起きていることについては、裏ルートにはすでに知れ渡ってます。そしてまずいことに、アンナには賞金がかかってます。1000ガメル。僕たちの報奨金と同額ですね、皮肉にも。僕と同業の者が、アンナの身柄確保に動いています。さっきの男もおそらくその関係かと。

■ラーベナルト邸付近
☆From:カナル  To:クロス
誰が報奨金なんか掛けたんだ?
それにさっきの男? 来る途中に何かあったのか?

カナルとアフルは、クロスがラーベナルト邸付近で発見した怪しい男の件を知らない。クロスは話を続けた。

■ラーベナルト邸付近路上
☆From:クロス  To:みんな
シャレゼール家の当主エルクスはもう相当な高齢です。で、そろそろ跡目相続の問題が有るわけなんですが、それがスムーズに進んでないようなんです。順当に行けば、跡継ぎは二人いる息子のうち、長兄エヴァンスになるはずですが、弟オルダスの派閥がそれを素直に認めたくないようです。

■ラーベナルト邸付近
☆From:カナル  To:クロス
なるほど。跡継ぎに決まってる奴が今騒ぎを起こすはずはないな。
道理で、あのローンドファルの態度なわけだ。身内の恥を晒したくはないか。

■ラーベナルト邸付近路上
☆From:クロス  To:カナル
はい。つまりはそういうことです。

最後に、セリスからキルティング家家庭訪問班からの報告がなされた。

■路上
☆From:セリス  To:All
ええと、こちらはあまり芳しい事は聞けませんでした。
キルティングさんとアンナさんが恋仲であった事、
キルティングさんはローンドファル氏ではなくシャルゼール家のオルダス氏に仕えている騎士に仕えている事・・・
一応キルティングさんが実家へ顔を出したら宿屋に連絡が来る様になっていますので
私は宿屋に待機していようかと思うのですが・・・
こちらはこんな感じです。

■路上
☆From:シーアン  To:All
 ああ、あとやっぱり怪しいやつらがうろつきまわってたらしい。
今さっきそこであった男と同じかもな。

■ラーベナルト邸前
☆From:カナル  To:セリス
それじゃ、キルティングは家には戻ってないんだな?
それなら、宿屋に帰るよりもラーベナルトに会った方が早いんじゃないか。
(クロスの方を見る)
ラーベナルトは、今晩俺達の前に花と剣を用意してくれるという話だからな。

全員でラーベナルト邸に入る事に、みな異存はないようだ。
カナルは最後にこれまで得られた情報を整理した。

■ラーベナルト邸前
☆From:カナル  To:全員
情報を整理しよう。
(事実)まずは、シャレーゼル家は、現在跡継ぎ問題で揉めている。
(事実)弟が跡継ぎと目されている兄貴を追い落とそうとしている。
(推論)アンナが握っている秘密というのは、兄貴を失脚させるための内容であろう。

(事実)キルティングは、弟に使える騎士であり、アンナとは恋仲である。
(推論)そのために、アンナの危機を知り二人で逃げたものと思われる。

(事実)現在アンナには懸賞金がかけられている。それ目当てに動いている奴らが居る。
(推論)弟がアンナ捕獲のために懸賞金を掛けたと考えられる。

こんなところか?

これらの情報から、パーティは今回の事件の状況の推理を試みた。

アンナとキルティングの失踪については、エルクス・シャレゼール(兄)に不利な情報を持っているアンナをエルクスの失脚を狙うオルダス(弟)側の人間が狙っていて、それに気づいたキルティングが、恋人であるアンナを守るために二人して姿をくらました、という所だろうということで見解が一致した。

ただ、問題は依頼主であるローンドファルがいったいどちら側の人間なのかということだ。盗賊ギルドに手配を出したのは弟側だと思えるので、ローンドファルも弟側だということはないということではパーティの全員が一致した。しかし、兄側なのか、はたまた兄弟の老父に仕え兄弟の争いに心を痛める忠臣なのかで意見が別れた。

考えているだけでは埒が明かない。夜も更けてきたことだ。そろそろラーベナルト邸に入ろう。
セリスがラーベナルト邸のドアを叩いた。

■ラーナベルト邸
☆From:セリス  To:ラーナベルト邸の人
すみません、こちらのご主人様と約束してあるセリスと言う者ですが・・・
お取り次ぎ願えるでしょうか?



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