最後の依頼を終えたその足でギルドに向かい、「足抜け」の為の代償を払ってオランを去ると告げたギャルム。
ギルド員に「どこへ行くんだ？」と問われ、彼は苦笑を浮かべながら右手で符丁を刻んだ──手慣れた符丁が示していたのは、テン・チルドレンのひとつ、悪名高い街の名前。
旅の途中の安宿で、慣れない手紙をしたためたあと、西を旅しているという行商人をつかまえてそれを託した。愛用の短剣を添えて。
「…で、その村の…カラレナってハーフエルフに渡してくれ。俺とは全然似てないから参考にするなよ」
心残りは水都のことだけ、そしてもうひとつ…
「…案外、気が合ったりしてな…あのふたり…」
でこぼこなシルエットを思い浮かべ、こみ上げてくる微笑を堪えながらまた、西へと向かう。